退職者続出、介護施設の新人介護職に聞いた人材育成と離職防止法

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退職者の多い介護施設は何が問題なのか。勤め始めて1カ月の新人介護職に聞きました。職場環境の悪さが既存スタッフの離職を招き、新人スタッフも育たず辞めていく……。これが、介護現場に見られる負のスパイラル。ベテランが退職し新人が育たないと介護業界全体が人材難に陥ってしまうのです。

今回は、介護現場の実態を解説し、負のスパイラルを断ち切るための解決策を探っていきます。

    新人が育たない!介護現場の教育事情

    介護業界にもほかの業界と同様、新人を育てるためのカリキュラムが存在します。しかし、人手不足の介護現場では、理想のカリキュラムとは程遠い現実があるようです。

    介護職の人材育成の現状

    新人介護士がシフトの頭数として入れられるには、最短でも3カ月かかるといわれています。これは、介護業界でのキャリア組みを対象とした期間であり、新卒のヘルパーになると、1年かけてじっくりと育てる企業も少なくありません。

    さらに、育成期間中は新人1名に対して教育係が1日1名、というシフトを組むのが一般的です。教育係は通常業務と新人教育を同時進行しなければならないため、一定以上のスキルが求められます。施設介護に限っては24時間シフトなので、教育係を固定することが難しく、輪番制で割り振るスタイルが主流です。

    新人教育の内容は、段階を踏まえたステップアップ方式を採用する企業や現場が多く、初日から身体介護に入ることはありません。はじめのうちは主に居室の掃除や片付け、入居者との会話、見守りレベルの誘導介助を任されます。そこから、立位の半介助や食事介助などを経て、オムツ交換、入浴介助、スタッフが手薄になる夜勤へとステップアップしていきます。

    ただ、こうした新人教育の一連の流れは、人手が足りてこそ実現できるものです。離職が後を絶たない負のスパイラルに陥っている環境では、せっかくのカリキュラムも絵に描いた餅で終わる、というケースが実際に多くあります。

    離職者が多い介護施設の新人の声(入社1カ月)

    先輩スタッフの離職が続く介護施設に入社したAさんは、現状をこう語ります。

    私は2ユニット制のグループホームで働いていますが、介助の基本を教えてもらったことがありません。

    初日こそユニット長から施設全体のレクリエーションを受けましたが、2日目からオムツ交換の入居者を介助してほしいと言われました。その日に出勤しているスタッフは、私を含めた3名で、入居者は9名(1ユニットあたり)。2人の先輩スタッフは、入浴や調理でバタバタしていました。

    私は戸惑いながら居室に入り、学校で習った通りのオムツ替えをしたのですが、学校のようにはいかず、すぐに調理中の先輩スタッフを呼びました。でも、その先輩スタッフからは、問題点を指摘されたり技術面のアドバイスもなく、"所要時間"だけを伝えられたのです。『ここのオムツ交換は5分が目安だから』と。

    最近わかったことですが、先輩スタッフたちの在籍期間は全員、半年前後。1カ月に1人が辞めるというペースで、常に求人募集しているとのことでした。

    現在、オムツ交換が必要な入居者は3名いますが、それぞれ麻痺や損傷部位、健側が違うので、"所要時間"通りにはできません。入浴や食事介助も同じです。食事に関していえば、車椅子と聞かされていた入居者が杖で大丈夫だったり、歩行介助したりと、スタッフによってバラつきがある食堂への誘導にも困っています。脱衣所に誘導する際の連携不足も不満です。先輩スタッフは入浴の順番を自分で把握しているらしく、これも人によってバラバラ。『だから順番が違うって言ったでしょ』と怒られるのがストレスです。

    まだ私より後に入ってきた新人はいませんが、今の状況では何をどう教えていいのか......。その前に私が続くかどうかが不安です。

    人手不足の負のスパイラルを断ち切るには

    Aさんの事例を元に、いま介護現場が抱える人材育成の問題点を挙げながら、離職の解決策を見つけていきましょう。

    人材育成の問題点

    1.現場が必要人員に達していない

    新人を教えるだけの人員を確保できていなければ、「教える」体制が整っているとはいえません。Aさんの現場でいえば、少なくともAさんの教育係を含めた4名のスタッフが必要人員であるといえます。

    2.新人をあてにする

    前述した1のケースから転じやすい問題です。新人スタッフは入居者のことはもちろん、施設内や先輩スタッフのことなど、右も左もわかりません。何もわからないスタッフを戦力として現場に入れることは危険が伴い、クレームが発生する原因にもなります。

    3.教育者を育てない土壌

    介護の目的を履き違える、あるいは見失うという環境や風潮では、せっかくの若い芽も摘み取られてしまいます。介助時間の配分も必要ですが、それよりも大切なことは入居者の気持ちと身体です。これが考えられなくなるくらい人手不足で追い詰められているのかもしれません。

    4.スタッフ間の連携不足

    スタッフ同士のコミュニケーションが取れない現場に入れられた新人が戸惑うのは、無理もありません。新人の戸惑いはやがて不満に変わり、離職にもつながりやすくなります。

    離職に歯止めをかける解決策は

    4つの問題点は、できればまず個別に解決しなければなりません。解決法としては、以下の通りです。

    1. 人員を2名、少なくとも1名増やす。

    2. ベテラン介護職をこの現場に異動させる。またはリーダーとして介護福祉士経験の長い社員を中途採用する。それによって現場に安心感が生まれる。

    3. 新人がひとり立ちできるようになるまでベテランの教育係をつける。マンツーマンが無理ならば、シフト制で教育担当が必ずいるようにする。

    4. 人員が増えた後なら、スタッフ同士の連携をルール化して共通の対応ができるようにする。

    また、取材した方は言及していませんが、マイナビ介護職のアンケートによると(2017年9月~2018年5月、マイナビ介護職登録後アンケート)介護職の離職理由は1位 給与・待遇となっています。介護職全体の給与が上昇している中、他の施設と同じように給与水準を上げていくことによって離職者が減るでしょう。

    状況をまとめる中で見えてきた離職を防ぐ基本、それは、「人を大切にする」ことです。上記の4つもその一部といえますが、どうしたら離職しないかではなく、どう相手を思いやるかから考え始めれば今まで見えなかったことが見えてきます。せっかく、介護という「人に優しくできる仕事」に就いているなら、一緒に働くスタッフにも優しくできそうな気がしませんか。
    とはいえ、優しさは気心や感情によるものなので人によって受け取り方が異なり、曖昧な部分もあります。そんなとき、現場のスタッフ間の優しさとは一線を画すのが、人事評価という名の優しさです。入居者さんにもスタッフにも優しくできている、という人への上長からの好評が、報酬や昇級として反映されれば、評価された職員のモチベーションにつながります。

    たくさんの「ありがとう」が評価につながる

    入居者さんから言われて一番嬉しいこと、励みになることは、日々の何気ない「ありがとう」ではないでしょうか。入居者さんだけでなく、同じ職場で働くスタッフからの「ありがとう」も増えればもっといいですね。職場での声かけが増えて交流が増えれば、人間関係が良くなって少しずつ過ごしやすい職場になって行くかもしれません。

    入居者さんや同僚への気遣いや優しさを上司が認め、人事評価としても反映されるといいですね。

    介護は評価ありきの仕事ではありませんが、目の前のスタッフを大切にすることにも目を向けてみることが、負のスパイラルを断ち切るためにすぐに実行できる有効策といえます。

    文:鹿賀大資 介護ライター。施設介護で10年のキャリアを持つ現役介護福祉士。

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