ショートステイで働く看護師の仕事内容|給与や働くメリットも解説

地域包括ケアシステムが推進される中で、在宅介護を受けている方向けの介護サービスであるショートステイの重要度は増しています。一般型ショートステイ・医療型ショートステイのどちらも看護職員の配置基準が定められているため、看護師の方はショートステイで需要が高いと言えるでしょう。
この記事ではショートステイの人員配置基準や看護師の仕事内容、給与や働くメリットを紹介します。ショートステイで働きたいと思っている看護師の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
目次
1. ショートステイとは
ショートステイとは、在宅介護中の高齢者さんが、心身の状態に合わせて短期間施設に入所し、日常生活全般の介護や機能訓練を受けることができる介護サービスです。
在宅介護は、自宅など住み慣れた環境で必要な介護を受けられる一方、介護をする方の予定や状況によっては一時的に介護が難しい場合があります。冠婚葬祭や急な仕事、レスパイトケアなどの理由で、たとえ1日であっても在宅介護ができないときに利用できる居宅サービスがショートステイです。
ショートステイには、「短期入所生活介護」と「短期入所療養介護」の2種類があり、厚生労働省では両者の概要や特徴について以下のように定義しています。
「短期入所生活介護」の事業とは、利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、利用者(要介護者等)が老人短期入所施設、特別養護老人ホーム等に短期間入所し、当該施設において入浴、排泄、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものである。
(引用:厚生労働省「短期入所生活介護及び短期入所療養介護」
/
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000168704.pdf引用日2023/7/6)
短期入所生活介護は一般型ショートステイとも呼ばれ、要介護認定を受けた方であれば利用が可能です。老人短期入所施設や特別養護老人ホームなどに一時的に入所し、入浴や排泄、食事など日常的な生活支援や機能訓練などを受けることができます。
一方で、短期入所療養介護についての定義は以下の通りです。
短期入所療養介護の事業は、要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことにより、療養生活の質の向上及び利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない。
(引用:厚生労働省「短期入所生活介護及び短期入所療養介護」
/
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000168704.pdf引用日2023/7/6)
短期入所療養介護は短期入所生活介護とは異なり、日常生活上の介護や支援だけでなく医学的な管理を受けることができます。 医療型ショートステイとも呼ばれており、投薬やリハビリなどの医療的なケアが必要な利用者さんが対象です。
1-1. ショートステイの人員配置基準
人員配置基準とは、入居者さまの人数に対し介護施設で必要だと定められた、看護職員や介護職員などのスタッフの配置人数のことです。一般形ショートステイと医療型ショートステイでは、提供されるサービス内容が違うため、人員配置基準も異なります。
一般型ショートステイの場合の人員配置基準は以下の通りです。
【一般型ショートステイの人員配置基準】
医師 | 1以上 |
生活相談員 | 利用者100人につき1人以上(常勤換算) ※うち1人は常勤(利用定員が20人未満の併設事業所を除く) |
介護職員又は看護師 若しくは准看護師 |
利用者3人につき1人以上(常勤換算) ※うち1人は常勤(利用定員が20人未満の併設事業所を除く) |
栄養士 | 1人以上 ※利用定員が40人以下の事業所は、一定の場合は、栄養士を置かないことができる |
機能訓練指導員 | 1以上 |
調理員その他の従業者 | 実情に応じた適当数 |
(引用:厚生労働省「短期入所生活介護」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000650020.pdf引用日2023/7/6)
一般型ショートステイは主に特別養護老人ホームや有料老人ホーム、ショートステイ専門施設などで提供されます。ショートステイの人員配置基準は上記のように定められていますが、施設の規模や種類などによっても実際の人員配置は異なる点に注意しましょう。
医療型ショートステイの場合は専門的な医療ケアが必要になるため、サービスを提供できる施設が以下のように定められています。いずれの施設も医師や看護師、リハビリ専門員が常駐している点が特徴です。
短期入所療養介護を行うことのできる施設は次のとおりであり、必要な人員・設備等は、原則として
それぞれの施設として満たすべき基準による。
○ 介護老人保健施設
○ 療養病床を有する病院若しくは診療所
○ 診療所
(引用:厚生労働省「短期入所生活介護及び短期入所療養介護」
/
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000168704.pdf引用日2023/7/6)
施設基準に伴い、医療型ショートステイの人員配置については以下の通り定められています。
【医療型ショートステイの人員配置基準】
施設類型 | 介護老人 保健施設 |
介護療養型医療施設 | 介護療養型医療施設以外 | ||||
病院 | 診療所 | ||||||
病院 | 診療所 | 医療 療養病床 |
一般病床 | 医療 療養病床 |
一般病床 | ||
看護・介護 職員 |
看護・介護 3:1 (うち、看護2/7標準) |
看護 6:1 介護 6:1 |
看護 6:1 介護 6:1 |
看護 6:1 介護 6:1 |
- | 看護 6:1 介護 6:1 |
看護・介護 3:1 |
(引用:厚生労働省「短期入所生活介護及び短期入所療養介護」
/
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000168704.pdf引用日2023/7/6)
一般型ショートステイにくらべて、より多くの看護職員を配置する必要があるため、医療型ショートステイでは看護職の方の役割が特に重要と言えるでしょう。
2. ショートステイで働く看護師の仕事内容
一般型と医療型、どちらのショートステイで働くかによって看護師の仕事は変わりますが、主な看護業務の内容は以下の通りです。
・バイタルチェックや利用者さんの健康観察
・服薬管理
・インスリン注射などの医療的な処置
・一般的な介護業務
ほかにも、医療型ショートステイでは、褥瘡(床ずれ)の処置や喀痰吸入、一時的な導尿や在宅酸素療法などの医療処置を行う場合があります。
ただし、介護保険サービスであるショートステイでは、以下のように原則として一部の医療行為が制限されているため注意が必要です。
(1) 介護保険適用病床に入院している要介護被保険者である患者が、急性増悪等により密度の高い医療行為が必要となった場合については、当該患者を医療保険適用病床に転床させて療養を行うことが原則である
(引用:厚生労働省「「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について」
/
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc4924&dataType=1&pageNo=1引用日2023/7/6)
また、24時間持続点滴や気管切開下人工呼吸、胃ろう等のチューブ交換など高度な医療行為には医師の指示が必要なため、一般型ショートステイで行えません。
したがって、一般型ショートステイの場合は服薬管理や健康管理、利用者さまの見守りなどが主な仕事となります。一般型と医療型、どちらのタイプのショートステイで働くかによって、看護師に求められる仕事内容は大きく異なると言えるでしょう。
2-1. ショートステイで働く看護師の1日
ショートステイで働く看護師さんの1日の流れには、以下のような例があります。
朝8:00 | 出勤、夜勤スタッフからの申し送りを受けて1日の業務や新規入所者の確認をする |
---|---|
午前中 | 利用者のバイタルチェックや薬の準備、昼前の服薬管理などを行う |
昼12:00 | 食後の口腔ケアや健康状態チェック、服薬指導などを行う |
午後 | レクリエーションや機能訓練を行う |
17:00~18:00 | 退所者の準備や手伝い、夜勤スタッフへの申し送り、看護記録の記入をして退勤する |
ショートステイの場合、夜間勤務は介護士など介護職の方が行うため、看護師の方が夜間に勤務することはほとんどありません。しかし、まれに緊急時にオンコールの当番などがある施設もあります。
3. ショートステイで働く看護師の給与
ショートステイで働く看護師の方の給与のみを個別に調べた統計資料はありません。しかし、ショートステイを提供している施設を含む、介護施設全般で働く看護師の平均給与は373,750円です。
(出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/22/dl/r04gaiyou.pdf)
一方、看護師の平均的な給与が351,600円のため、介護施設で働く看護師の方の給与は平均よりも高い傾向にあると言えます。
(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
/
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040029185)
以下は、マイナビ介護職に掲載されたショートステイの介護職求人の例です。
月給(初任給) | |
---|---|
ショートステイの求人A | 約23万~27万円 |
ショートステイの求人B | 約21万~26万円 |
ショートステイの求人C | 約19万~23万円 |
「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」では、看護職の平均月給は、介護職より56,210円高額です。看護師としてショートステイで働く場合は、さらに高収入に期待できます。また、記載されている給与は初任給であり、これまでの経験や保有している資格次第でさらに伸びる可能性があります。
4. 看護師がショートステイで働くメリット
ショートステイは施設やサービスの特性上、一般的な病院や診療所とは違う看護師業務を行う場合が多いため、職場でさまざまな経験を積めます。
たとえば、長期入所型の施設などとは異なり、利用者さまの入れ替わりが早いため、日々多くの利用者さまと関わることが可能です。限られた時間の中で利用者さまの個性や病状をとらえて適切なケアをするという経験を重ねれば、看護のスキル向上にもつながります。
また、地域包括ケアシステムの推進により需要が増すであろう、在宅医療や在宅介護についての経験を積める点もショートステイで働くメリットです。医療従事者だけでなく、介護職の方や相談員の方など複数の職種の方と関わることで、介護現場の多角的な視点を得られます。
さらに、ショートステイは日勤がメインで比較的残業が少ないため、決まった時間だけ働きたい方や子育て中の方などにもおすすめです。
まとめ
ショートステイには一般型と医療型の2種類が存在し、どちらも看護職員の人員配置が義務付けられています。特に医療型ショートステイは一般型と比較して看護職員をより多く配置する必要があるため、看護師資格を持つ方の需要が高いと言えるでしょう。また、一般型ショートステイと医療型ショートステイでは提供される医療サービスの内容も異なっており、一般型ショートステイでは高度な医療サービスは提供されません。
ショートステイを含む介護施設で働く看護師の平均給与は看護師全体の平均給与を上回っており、よりよい待遇に期待できます。ショートステイで働きたい方は、ぜひマイナビ介護職をご利用ください。非公開求人を含む多数の求人を、介護業界に精通したキャリアアドバイザーが紹介します。
※当記事は2023年7月時点の情報をもとに作成しています
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