介護で抱えやすい悩みは?大変なことや悩みの解消法・相談先も解説

公開日:2024.07.08 更新日:2025.12.22
介護で抱えやすい悩みは?大変なことや悩みの解消法・相談先も解説

介護は多くの方にとって避けられない課題であり、介護によって精神的、身体的、経済的な負担が発生することもあります。介護の際に発生する悩みを解消するためには、相談できる場所をあらかじめ知っておくことが大切です。

当記事では、介護における一般的な悩みと、悩みの相談先について詳しく解説します。介護について悩みを抱えている方は、ぜひ当記事を参考にしてください。

1. 介護をしているときに抱えやすい悩みは?

介護をしている期間はさまざまなことに悩み、不安や辛さを感じる場面も多いでしょう。以下では、介護をしている方の多くが直面する悩み・不安・辛さについて詳細に解説します。

1-1. 精神的な悩み

介護をしているときには、家族や職場の方に事情を説明した上で協力や配慮を依頼する必要があります。周囲の方との関係調整をスムーズに行えないと精神的に辛くなり、心身の不調を抱えかねません。

認知症の介護をしている方の場合は円滑なコミュニケーションが難しく、献身的なサポートを行っているものの、罵声を浴びたり暴力を振るわれたりする可能性もあります。介護を受けている方の自分本位な言動が目立つとやりきれない想いが募り、ストレスを感じることもあるでしょう。

(出典:厚生労働省こころの耳「介護ストレス」
/ https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1524/

(出典:J-STAGE「在宅介護者の心理的負担感と心理的支援ニーズ ─高次脳機能障害と認知症との比較─」
/ https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/42/3/42_374/_pdf

1-2. 身体的な悩み

入浴介助や食事介助は介護経験のない方が想像する以上の重労働で、全身に大きな負荷がかかります。介護をしている方は慢性的な身体の痛みに悩まされ、体力面の限界を感じることがあるでしょう。

排泄介助が必要な方の介護では、繰り返し夜中に起こされるケースもあります。ご自身が働いている方は、十分な睡眠時間を確保できず体力面の限界を感じることも珍しくはありません。認知症の介護をしている場合は夜中の徘徊に対応するため、生活習慣が不規則になるケースもあります。

介護をしている方の体力的な負担を軽減するためには、一定の休養が必要です。介護をサポートしてくれる方が身近にいないと、体力面の負担が積み重なり、介護うつを招くリスクもあります。

1-3. 経済的な悩み

介護費の負担は、家計を大きく圧迫することもあります。公益財団法人生命文化センターの調査によると、2024年時点における平均的な介護費は、月額9.0万円です。施設に入居させる場合は特に介護費の負担がかさみやすく、平均で月額12.2万円もかかっています。介護を理由に休職や離職する場合には収入も減少し、より不安を感じかねません。

在宅介護をする場合には、高齢者が安心して生活できる環境を整備するために住宅改修したりベッドを用意したりする際、一時的な出費が発生します。介護にかかる一時的な介護費の平均は47.2万円と、決して軽くはありません。

(出典:公益財団法人生命文化センター「リスクに備えるための生活設計」
/ https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html

(出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「介護休業制度の利用拡大に向けて-「介護休業制度の利用状況等に関する研究」報告書-」
/ https://www.jil.go.jp/institute/reports/2006/documents/073_06.pdf

さらに、高齢になるほど、怪我や病気のリスクは高まります。介護費の負担に医療費が上乗せされると、将来への不安や焦りを感じるケースがあるでしょう。

介護を受ける方の年金で必要費用をまかなえない場合には、介護をしている方の貯金を切り崩さなければならない可能性もあります。長期の介護によって貯金が減少していき、焦りや不安を感じる方もいます。

2. 介護で大変なことは?

介護の現場では、日々さまざまな負担や課題に直面します。要介護者の身体的・精神的なサポートはもちろん、排泄や食事の介助、認知症への対応、家族とのコミュニケーション、さらには育児や仕事との両立といった要素も絡み合い、多くの方が疲弊しやすい状況にあります。

ここでは、介護に携わる方々が直面しやすい「大変なこと」について、具体的な場面ごとに整理して解説します。

2-1. 排泄の介助

排泄の介助は、介護者が大変さを感じやすい業務の1つです。要介護者の状態によって、紙おむつや尿取りパッドの交換、ポータブルトイレの利用補助などが必要になり、身体的な負担だけでなく精神的な負担も伴います。特ににおいや汚物処理に対する不快感は、多くの介護者にとって大きなストレス要因となります。

排泄介助を少しでも負担なく行うためには、介護用品を活用しましょう。たとえば、防臭袋や防水シーツ、消臭スプレーなどを活用すると、衛生面やにおいへの対策になります。要介護者の自尊心を傷つけないよう、声かけや配慮を大切にしながら、快適な排泄環境の整備をする必要があります。

2-2. 要介護者とのコミュニケーション

介護におけるコミュニケーションは、日常の支援を円滑に行うための重要な要素です。しかし、要介護者との関係性や認知機能の変化により、会話がスムーズにいかないことがあります。特に認知症の症状がある場合、性格の変化や言動の理解困難が生じやすく、介護者のストレスや不安が大きくなる要因となります。

また、義理の両親を介護しているケースなどでは、遠慮や気遣いから本音での会話がしづらくなることもあります。こうした関係性の複雑さが、コミュニケーションの難しさを増しています。

コミュニケーションを円滑に保つためには、要介護者の立場に立ったゆっくりとした説明や、非言語的な表現(表情・ジェスチャー)の活用が効果的です。家族内でも課題を共有し、必要に応じて専門家の助言を受けることが望まれます。

2-3. 仕事や育児との両立

介護を担う方の多くは、働き盛りや子育て世代に該当し、仕事・育児との両立に大きな負担を抱えています。要介護者の状態が重い場合には、見守りや介助のために多くの時間を必要とし、仕事や家庭生活に充てる時間が削られてしまいます。

また、介護の負担は夜間にも及び、睡眠不足による体調不良や精神的な疲労も起こりがちです。育児や家事との並行対応により、介護者のストレスは慢性化しやすく、介護離職につながるケースもあります。

両立のためには、介護保険サービスや介護休業制度などを積極的に活用し、職場や家族の理解と協力を得ることが不可欠です。

2-4. 認知症への対応

認知症のある要介護者への対応は、一般的な介護よりも難しさが増します。認知症の進行により、徘徊・暴言・暴力・妄想などの周辺症状が現れ、介護者の負担が精神面・身体面の両方で重くなる傾向があります。

認知症の方は、自分の置かれた状況が分からなくなることが多く、不安や恐怖から攻撃的な態度をとる場合もあります。そのため、介護者は根気強く寄り添い、相手を否定せず、安心できる環境を整える必要があります。

認知症の方の介護をするときは、専門職によるアドバイスや家族会の活用、地域の相談窓口と連携しましょう。1人で抱え込まず、多様な支援を活用しながら、認知症と向き合う姿勢が大切です。

2-5. 食事の介助

食事の介助は、要介護者の健康維持に直結する重要な業務ですが、負担が大きく感じられることも少なくありません。特に嚥下機能が低下している方の場合は、誤嚥のリスクを避けるために、食材を刻んだりペースト状にしたりする必要があります。認知症の影響で食事そのものを認識できない、あるいは食べ方を忘れてしまうこともあります。

そのような場合には、香りを利用したり、一緒に食事を取って動作を見せたりするなどの工夫をしましょう。また、介護用スプーンや滑り止めマットなど自助具の活用や、市販の介護食の利用も、介護者の負担軽減につながります。

3. 介護の悩みを解消する方法

介護に悩みはつきものですが、問題を1人で抱え続けることは避けましょう。精神的・身体的な疲労が積み重なれば、介護うつや体調不良につながるおそれがあります。

介護の悩みを解消するには、早めに相談したり、気分転換を図ったりして、自身の負担を軽減する取り組みが大切です。公的・民間を問わず利用できる支援策を知り、無理のない介護生活を目指しましょう。ここでは、介護の悩みを解消するための手段を紹介します。

3-1. レスパイトケアを受ける

介護を長期間にわたって担い続けると、心身の疲労が蓄積し、介護うつや体調不良を招く可能性があります。このような事態を防ぐために注目されているのが「レスパイトケア」です。

レスパイトケアとは、介護者が一時的に介護から離れて休息するための支援であり、要介護者への支援と同等に、介護者自身のケアを重視する考え方です。具体的には、ショートステイやデイサービス、訪問介護、訪問入浴などのサービスを通じて、プロの支援を受けながら介護者が自分の時間を持ちます。

たとえば、ショートステイを利用すれば、要介護者は介護施設に宿泊し、介護者は数日間の休息を確保できます。また、デイサービスは日中のみの利用で、介護者が仕事や私事を済ませる時間を確保できます。

介護者が心身をリフレッシュすれば介護の質も向上するため、罪悪感を抱かず積極的に利用しましょう。

3-2. 自分の時間を確保する

介護に追われる日々の中で、自分の時間を持てないことは大きなストレス要因となります。特に在宅介護の場合、食事・排泄・入浴といった日常的な支援を行う必要があるので、時間的拘束は長時間に及びます。こうした状況が続けば、介護者の心身への負担は避けられません。

自分の時間を確保するためには、まず「休むことは悪ではない」という意識改革が必要です。趣味や運動、映画鑑賞、読書など、自分にとってリラックスできる時間を意識的に作りましょう。また、訪問介護やデイサービスを利用して介護の一部を委ねれば、その時間を自分のために充てられます。

介護者が健康であることは、結果的に要介護者にとっても良い影響を与えます。周囲の支援を受けながら、自分自身の生活を大切にしましょう。

3-3. 介護保険外のサービスを利用する

介護保険外のサービスの中には、介護者の負担を軽減する便利なサービスも多く存在します。

たとえば、同居家族への調理や洗濯、庭の手入れ、墓参りや旅行の付き添いといったサービスは保険適用外であり、民間や地域の介護保険外サービスを活用することになります。介護保険外のサービスは有料ですが、内容が柔軟であるため、介護者のニーズに細かく対応できる点が特徴です。

ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談すれば、信頼できる業者の紹介を受けられることもあります。負担の軽減と安全な利用を両立するためにも、情報収集と比較検討を丁寧に行いましょう。

4. 介護の悩みの相談先

介護の悩みは1人で抱えず、身近な方に相談することが理想です。ただし、身近な方への相談を躊躇する場合でも公的な窓口を利用し、サポートを受けられます。

介護の悩みを相談できる公的な窓口の代表例は、以下の通りです。

4-1. 地域包括支援センター

地域包括支援センターは、地域の高齢者の総合相談窓口を担当する機関です。地域包括支援センターでは保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーがチームを組み、高齢者本人や介護をしているご家族の支援にあたります。

地域包括支援センターが提供する主な支援は、以下の通りです。

介護予防ケアマネジメント 要支援1もしくは要支援2と認定された方が要介護状態になることを防止するためのケアプランを検討、作成する支援
総合相談支援 高齢者本人、ご家族、近隣住民などの相談を受け、必要に応じて活用できる制度を紹介する支援
権利擁護 高齢者本人の財産や社会的権利を擁護する支援
包括的・継続的マネジメント支援 高齢者が住み慣れた地域で極力長く生活できる環境を整備する支援

(出典:厚生労働省「地域包括支援センターの業務」
/ https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/dl/link2.pdf

地域包括支援センターは全国5,451か所にあるものの、センターごとに管轄エリアが区分されているため、適切な窓口への相談が必要です。別居している親の介護について相談する場合には、介護を受ける方の居住地域にある窓口を活用しましょう。

(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」
/ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/index.html

4-2. 自治体の相談窓口

多くの市役所や区役所には、介護の悩みを受け付ける窓口が設置されています。市役所や区役所の窓口では、介護認定の申請や介護保険の利用手続きも行うことが可能です。

一部の自治体では、介護の悩みの相談窓口が複数設置されています。状況に適した相談先が分からない場合は市役所や区役所の代表番号に電話すると、最適な窓口の案内を受けられるでしょう。

また、介護職の方が悩みや不安を相談できる窓口が設置されている自治体もあります。仕事内容や職場の人間関係に悩んだ際には、自治体の窓口を利用しましょう。

(出典:東京都福祉局「福祉・介護職員等の悩み相談」
/ https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kiban/fukushijinzai/teichakuikusei/soudan.html

4-3. ケアマネジャー

公的な介護サービスを利用するためには、ケアマネジャーに相談してケアプランを作成してもらう必要があります。ケアマネジャーはケアプランの作成以外に、介護サービス事業者との連絡・調整や介護給付費の計算・請求などを代行する専門家です。

ご自身の状況に応じたサポートを受けるためには、ケアマネジャーに相談する際、介護生活における大変なことや辛いことを具体的に伝えましょう。相談を受けたケアマネジャーは内容を考慮し、悩みや不安の解消につながるケアプランを提案してくれます。

(出典:WAM NET「介護支援専門員(ケアマネジャー)の役割」
/ https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/caremanager/caremanagerworkguide/caremanagerworkguide_n001.html

4-4. 地域連携相談室

一部の病院には、介護施設やリハビリセンターとの仲介役を担当する「地域連携室」があります。介護を必要とする方の入院中や退院時には、地域連携室で以下の悩みの相談が可能です。

・介護保険制度の利用
・医療費や生活費の不安
・在宅療養するための環境づくり
・退院後の療養場所の確保

高齢者が入院すると退院後、従来通りの在宅生活を送れなくなるケースもあるでしょう。地域相談室に相談すると、健康面に不安を抱える状態で入居できる施設を紹介してもらえる可能性があります。在宅療養する場合は訪問診察医や訪問看護師への連絡・調整を担当者に依頼し、必要な治療を継続的に受けられる環境づくりのサポートを受けることが可能です。

4-5. 社会福祉協議会

社会福祉協議会は地域福祉の維持・向上を目指すため、介護相談対応や子育て支援を行っている機関です。社会福祉協議会では介護に関する以下の相談を受け付け、必要なサポートを提供します。

・介護保険制度の概要
・介護サービスの利用手続き
・介護生活中の不安や悩み
・高齢者の金銭管理

社会福祉協議会をより詳細に分類すると、「全国社会福祉協議会」「都道府県・指定都市社会福祉協議会」「市町村社会福祉協議会」の3種類があります。地域密着型の介護サポートを受けたい場合は、市町村社会福祉協議会へ相談しましょう。

都道府県・指定都市社会福祉協議会は、介護サービスを利用中の困りごとや苦情も相談できる窓口です。「介護サービスの料金が不明瞭」「介護施設のスタッフの対応が悪い」などの悩みがある場合には、都道府県・指定都市社会福祉協議会が頼りになります。

(出典:社会福祉法人 全国社会福祉協議会地域福祉部「社会福祉協議会の組織・事業・活動について」
/ https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000768521.pdf

(出典:社会福祉法人 全国社会福祉協議会「全社協について 主な事業内容」
/ https://www.shakyo.or.jp/tsuite/jigyo/index.html

まとめ

介護は家族や本人に多大な影響を与えるだけでなく、負担は精神的、身体的、経済的な側面にわたります。公的な支援について知っておき、地域社会や専門家からの協力も得ながら、介護に関わるすべての方が少しでも負担を軽減できる環境を整えることが重要です。

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