在宅介護とは?利用できるサービスの種類や必要な費用を解説
みなさんの中には家族の将来を考えて、在宅介護について把握しておきたいという方もいるのではないでしょうか。在宅介護は、施設介護と比較して費用負担を抑えられる一方で、介護する家族の負担が大きくなりかねません。
在宅介護を検討するにあたって、事前に在宅介護がどのようなものなのか、どういったサービスがあるのかなどを把握しておくことが大切です。
当記事では、在宅介護の概要やサービスの種類とそれぞれの特徴にくわえて、在宅介護サービスを利用する方法・費用相場などを解説します。
目次
- 2. 在宅介護サービスの種類とそれぞれの特徴
- 2-1. 訪問型サービス
- 2-2. 通所型サービス
- 2-3. 一般介護予防事業
- 2-4. その他の生活支援サービス
- 2-5. 生活環境を整えるサービス
- 2-6. 介護保険制度の対象外のサービス
1. 在宅介護とは
在宅介護とは、自立した生活が困難な高齢者さんが、自宅で介護を受けることを指します。老人ホームといった施設に入居せずに家族と一緒に暮らしながら、生活の介護や訪問看護、介護施設への通所などの必要なサポートを受けられる点が特徴です。
慣れ親しんだ自宅や地域で過ごしながら介護を受けられるため、環境の変化が少なく利用者さんの精神的な負担を軽減しやすいでしょう。
ただし、介護期間は長期化する場合もあり、同居する家族の負担は心身ともに大きくなりやすい傾向にあります。介護離職や介護うつを防ぎながら長期的な介護を実現するには、さまざまな介護サービスを利用して介護環境を整えることが大切です。
2. 在宅介護サービスの種類とそれぞれの特徴
在宅介護サービスには多様な種類があります。ここからは、在宅介護サービスの種類を紹介するため、1つずつ特徴を見ていきましょう。
なお、紹介するサービスは、以下サイトの情報を参考に記載しています。
(出典:厚生労働省「公表されている介護サービスについて」
/
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/)
(出典:厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業のガイドラインについて」の一部改正について」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000957652.pdf)
2-1. 訪問型サービス
訪問型サービスは、利用者さんの自宅に訪問して支援を提供するサービスです。訪問型サービスの種類は以下の通りです。
・訪問介護
訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅を訪問し、身体介護や生活支援を提供するサービスです。利用者さんが自宅で自立した生活を送れるように、食事や排せつ、入浴などの介護、掃除や洗濯、買い物、食事の用意といった支援を中心に提供します。
・訪問入浴介護
看護職員と介護職員が利用者さんの自宅で入浴介護を行うサービスです。持参した浴槽で入浴をサポートし、利用者さんの生活機能の維持や回復を目指します。
・訪問看護
看護師が利用者さんの自宅を訪問し、主治医の指示のもと病状に応じたケアや診療の補助をしてくれるサービスです。病状の確認から排せつ、入浴の介助、リハビリテーション、自宅での看取りまで、さまざまなサービスを受けられます。
・訪問リハビリテーション
理学療法士が自宅を訪問し、リハビリテーションによって利用者さんの心身の機能維持や向上を目指します。
・居宅療養管理指導
医師や歯科医師、薬剤師、管理栄養士などが自宅を訪問し、利用者さんの心身の状況や環境に合わせて療養上の管理や指導を提供するサービスです。
具体的には、ケアプランの作成に必要な情報提供や、在宅介護に関する注意点、介護方法の指導などが挙げられます。
訪問型サービスは、身体的な介助や入浴などの生活援助が必要となる方を対象としたサービスです。
2-2. 通所型サービス
通所型サービスは、利用者さんが施設に通い支援を受ける形態のサービスです。通所型サービスには、以下の種類があります。
・通所介護(デイサービス)
デイサービスセンターなどの施設に通い、日常生活の支援や生活機能の訓練、口腔機能向上に向けたサービスを受けられるサービスです。
・通所リハビリテーション(デイケア)
老人保健施設や病院といった通所リハビリテーション施設に通い、日常生活のサポートや生活機能の訓練、口腔機能を向上させるサービスなどを受けられます。
介護予防においては、日常生活上の支援に加え、利用者さんの状況に応じた運動器の機能向上や栄養改善、口腔機能向上に関するサービスを受けることも可能です。
・ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)
食事や入浴といった日常生活の支援、機能訓練を提供する宿泊サービスです。短期間の入所が前提であり、30日以上の連続利用はできません。利用対象者や条件もあるため、確認の上で利用しましょう。
通所型サービスは、利用者さんの自立した生活の支援はもちろん、家族の介護負担軽減にも活用されています。
2-3. 一般介護予防事業
一般介護予防事業は、介護認定を受けていなくても利用でき、介護になる前の予防を重要視 しています。高齢者さんが生きがいを持って自立した生活を送れるよう、以下のサービス事業を実施しています。
・地域介護予防活動支援事業
住民が主体となって介護予防活動を行えるよう、住民運営の通いの場づくりや介護予防知識を持つボランティアの育成を支援しています。
・地域リハビリテーション活動支援事業
通所や訪問サービス、地域ケア会議、住民運営の通いの場などにおけるリハビリテーション専門職の関与を促進する事業です。地域における介護予防活動の強化を目的としています。
市町村ごとに地域に密着した支援を提供しているため、利用できるサービスの詳細についてはお住まいの市町村で確認してください。
2-4. その他の生活支援サービス
その他の生活支援サービスは、地域における自立した生活の支援を目的に実施されるサービスです。具体的なサービス例を以下にまとめました。
・配食サービス
地域によっては、外出や調理が困難な利用者さんを対象に、栄養改善を目的とした配食サービスを提供しています。対面で食事を渡すことで、定期的な安否確認や他者と交流する機会の増加にも役立ちます。
・見守りサービス
地域の住民ボランティアが協力して高齢者さんの自宅を訪問し、安否確認や緊急時の対応を行うサービスです。
・訪問型サービスや通所型サービスに準じる自立のための生活支援
訪問型サービスや通所型サービスと同等の生活支援を、市町村が主体となって提供している場合があります。提供サービスは市町村によって異なり、家事や外出支援、掃除などの生活全般にかかわる支援を提供しているところもあります。
そのほかの生活支援サービスは、要介護の状態になっても自分らしく生活できる環境を整える目的で提供 されています。サービスを活用し、住み慣れた地域で社会活動に参加しながら暮らすことが介護予防につながると考えられています。
2-5. 生活環境を整えるサービス
在宅介護に取り組む際は、生活する環境を整えるための以下サービスも活用できます。
・福祉用具貸与・販売
手すりやスロープ、歩行器、車いすなどの貸し出し、腰掛便座や入浴補助用具といった介護用品の購入費支援の享受が可能です。
・居宅介護住宅改修
手すりの取り付けや段差の解消、滑りにくい床材への取り換えなど、住宅改修に対する住宅改修費が支給されます。
どちらのサービスも上限額が設定されているものの、要介護認定を受けていれば自己負担割合に応じた金額でサービスを利用できます。 より安全に自宅で生活できるよう、生活環境の整備に活用してください。
2-6. 介護保険制度の対象外のサービス
介護保険制度の対象外ではあるものの、民間企業が提供している便利なサービスもあります。以下に、よくあるサービスの一例をまとめました。
・家事代行サービス
介護サービスでは依頼できない掃除、家族分を含む洗濯や食事準備などを依頼できます。犬の散歩や庭木の剪定をしてほしいときにも便利でしょう。
・外出支援・付き添いサービス
趣味や観光などで外出する際に、付き添いを依頼できます。介護タクシーの利用や看護師などの同伴を依頼することも可能です。
介護保険制度で利用できるサービスは、利用回数や内容に制限があります。そのため、より柔軟なサポートを依頼したい場合には、民間企業が提供しているサービスの利用を検討 してはいかがでしょうか。
3. 在宅介護サービスを利用する方法
在宅介護サービスの利用にあたって、基本的な流れを確認しましょう。
まずは、住んでいる市区町村の窓口で要介護認定を申請してください。申請すると、利用者さんにどのような介護が必要か確認するために訪問調査が行われ、調査結果と医師からの意見書をもとに介護認定審査が行われます。審査結果は、原則として申請後30日以内に通知 されます。
要介護度が決定したらケアプランを作成し、利用する介護サービスや頻度などを決めましょう。ケアプランの作成は、要支援の認定を受けた方は地域包括支援センターに、要介護の認定を受けた方は指定の居宅介護支援事業者のケアマネジャーに相談 します。作成したケアプランに基づき介護サービス事業者と契約し、利用を開始してください。
(出典:厚生労働省「サービス利用までの流れ」
/
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/flow.html)
4. 在宅介護に必要な費用の相場
家計経済研究所の調査によると、在宅介護に必要な費用相場は1か月平均5.0万円 です。要介護度が高くなると利用者さんの生活に必要なサポートも増えるため、在宅介護費用も高くなる傾向にあります。
以下のデータは、在宅介護サービスにかかる1か月あたりの平均費用を、要介護度別にまとめた表です。
【在宅介護サービスにかかる1か月あたりの平均費用(2016年調査)】
要介護度 | 介護サービス への支出 |
介護サービス以外 への支出 |
合計 |
---|---|---|---|
全体平均 | 1.6万円 | 3.4万円 | 5.0万円 |
要介護1 | 0.7万円 | 2.6万円 | 3.3万円 |
要介護2 | 1.4万円 | 3万円 | 4.4万円 |
要介護3 | 2.5万円 | 3.5万円 | 6.0万円 |
要介護4 | 1.7万円 | 4.2万円 | 5.9万円 |
要介護5 | 2.1万円 | 5.3万円 | 7.4万円 |
(出典:家計経済研究所「在宅介護にかかる費用」
/
https://kakeiken.jp/old_kakeiken/jp/research/kaigo2016/2016result1.html)
在宅介護にかかる平均費用は、要介護度や利用者さんの状況、希望するサポートなどで大きく変動します。介護の長期化を想定して、介護費用を考えることが重要です。
また、表を見ると要介護度にかかわらず、介護サービスよりも介護サービス以外への支出費用が高いことが分かります。医療費や介護おむつ代といった、介護サービス以外の支出にも備えておく必要がある でしょう。
まとめ
在宅介護とは、自立した生活が難しい高齢者さんに対して、自宅での介護サービスを提供することです。在宅介護と一言に言っても、訪問型サービスや通所型サービスなど、その種類は多岐にわたります。
家族の負担を軽減しながらも、しっかりと介護環境を整えるためには、在宅介護サービスの種類や特徴を把握することが大切です。家族だけでは分からない部分は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しながら決めるとよいでしょう。
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※当記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています
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