社会福祉法人とは?働くメリット・デメリットと重視するべきポイント
介護業界の求人を見ると、募集元の運営団体は社会法人や医療法人、株式会社などさまざまです。給料をはじめ待遇面のみならず、将来的なスキルアップやキャリアチェンジの可能性も考えると、転職先は法人格ごとの違いを理解した上で選ぶ必要があります。
この記事では、代表的な法人格の1つである「社会福祉法人」について詳しく紹介します。制度・事業の特徴や給料の違い、メリット・デメリットについて解説するため、転職を検討している介護職の方はぜひ参考にしてください。
目次
1. 社会福祉法人とは?
社会福祉法人とは、社会福祉事業を目的として設立された法人です。
(出典:厚生労働省「社会福祉法人の概要」/ https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-fukushi-houjin-seido/01.html)
社会福祉法人は、高齢者支援のみならず地域住民すべてを対象とした、さまざまな社会福祉施設の運営やサービスで人々の生活を支援しています。社会福祉法人は非営利組織に分類されるため、一般的な企業のように必ずしも収益性のみで事業の撤退、または継続が決定される団体ではありません。公益事業を主としており、地域貢献活動の継続性や安定性が求められるためです。
新たに社会福祉法人を設立する場合、所轄庁(主たる事業所が所在する都道府県庁)で知事または市長より認可を得る必要があります。
1-1. 医療法人や株式会社との違い
介護職が活躍する職場としては、社会福祉法人の他に医療法人や株式会社が挙げられます。社会福祉法人と医療法人や株式会社の違いは、「営利・非営利」と「事業目的」の2つです。
たとえば営利・非営利の違いに関して、医療法人と株式会社の違いは下記の通りです。
営利・非営利の違い |
---|
・医療法人は非営利組織(社会福祉法人と同じ)
・株式会社は営利組織 |
医療法人は医療の提供を行う施設であり、社会福祉法人と同じく非営利組織にあたります。一方、株式会社は継続的に利益を生み出すことを目的としているため、営利組織に分類されます。
また、医療法人と株式会社の事業目的を比べると、社会福祉法人との違いは下記の通りです。
事業目的の違い |
---|
・医療法人は医療目的 ・株式会社に事業の制限はない |
医療法人は医療サービスの提供を目的とする組織です。社会福祉法人と同じく介護福祉事業を行いつつも、医療行為を担当できる医師が常駐している点で異なります。
株式会社は、医療や福祉など事業目的に具体的な制限がなく、自由に決められることが特徴です。利益を継続的に生み出すために、設備投資やアイデアの採用を積極的に行います。
1-2. 社会福祉法人の事業
社会福祉法人の事業は「社会福祉を目的とする事業」「公益事業」「収益事業」の3つから構成されています。主とされる「社会福祉を目的とする事業」は、下記の通り第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業に分けられます。
社会福祉を目的とする事業 | |
---|---|
第一種社会福祉事業 | ・特別養護老人ホーム
・児童養護施設 ・障害者支援施設 ・救護施設 など |
第二種社会福祉事業 | ・保育所
・訪問介護 ・デイサービス ・ショートステイ など |
(出典:内閣府「社会福祉法人が行う事業について」/ https://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2012/togi/life/121128/item1.pdf)
第一種と第二種に分かれつつも、主な事業はどちらも福祉施設運営およびサービス提供です。また、上記2種類の社会福祉事業に加えて、公益事業や収益事業も許可されています。
公益事業 | 収益事業 |
---|---|
子育て支援事業 | 駐車場経営 |
介護予防事業 など | 貸しビル など |
公益事業は、子育て支援事業などなんらかの支援を求めている方へのサポートを行う他、介護予防事業があてはまります。介護保険法に基づいて、社会福祉と関係のある公益事業に限り許可されています。
収益事業は駐車場や貸しビルなど、法人が所有する不動産の活用です。ただし、社会福祉法人はあくまで非営利組織です。収益事業は、主目的とされる社会福祉事業や公益事業の財源に充てることを前提に許可されています。しかし、団体が社会的信用を損なわない内容でなくてはなりません。
1-3. 社会福祉法人の設立要件
社会福祉法人の設立を都道府県庁に認めてもらうためには、いくつかの要件を満たす必要があります。代表的な要件は下記の4つです。
・評議員会の設置
・理事の設置
・監事の設置
・会計監査人の設置
(出典:厚生労働省「社会福祉法人の設立について」/ https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-fukushi-houjin-seido/dl/01-02.pdf)
社会福祉法人の設立にあたり、規定の人数を満たした評議員会の設置が求められます。人数は理事が6名以上、監事が2名以上、評議員が7名以上です。評議員は厳密には理事の人数を超えることが条件とされているため、仮に理事が7名設置されている場合、少なくとも8名以上の設置が最低条件となります。いずれの役員も社会福祉事業に関する識見を有することなど、多くの条件のもと選任されます。
前年の決算内容によっては、会計監査人の設置も必要です。法人単位事業活動計算書の「サービス活動増減の部」で「サービス活動収益計」が30億円を超える場合は、会計監査人の設置が義務付けられています。あるいは、法人単位貸借対照表の「負債の部」の「負債の部合計」が60億円を超える際も、会計監査人を設置しなくてはなりません。
2. 介護職員が社会福祉法人で働くメリットとは?
介護職員が社会福祉法人で働くメリットとして、下記の3つが挙げられます。
・転勤の可能性が低い
・介護や福祉のスキルを伸ばせる
・規模の大きい法人は福利厚生が充実している
社会福祉法人は地域の公益性を充実させるために設立されるため、遠方への転勤を命じられる可能性が低い職場です。同じ施設で長く安定して働きたい方にとって、大きなメリットとなります。
施設によっては資格手当が支給されたり、試験日を特別休暇にされたりと、資格保有者や取得を目指す方へのサポートに力を入れている職場もあります。日々の業務で実践を重ねつつ、職場からのサポートで介護・福祉サービスのスキルを磨けるでしょう。
就職先の規模が大きいほど、資格取得支援以外の福利厚生が充実していることも嬉しいポイントです。
2-1. 介護職員が社会福祉法人で働くデメリット
社会福祉法人で介護職員が働くときは、下記のデメリットも把握しておきましょう。
・提案や新しいことへの挑戦が難しい場合もある
・キャリアチェンジが難しい
社会福祉法人は歴史が長く、すでに体制や運営方法が確立されている場合があります。新人や中途採用の立場でアイデアを出したり、新しい挑戦をしたりすることが難しいことも考えられるでしょう。
長期的に勤務しているベテランが多い影響もあり、職場でのキャリアチェンジも容易ではありません。特定の道でプロフェッショナルとなる教育・指導を受けるため、キャリアチェンジを希望する場合は転職も視野に入れたキャリア形成が必要です。
3. 社会福祉法人で働くときに重視するべき3つのポイント
自分に合った社会福祉法人で長く働くためには、いくつかのポイントを踏まえた上で求人を探すことが欠かせません。面接時に疑問点などを質問するだけでなく、求人や団体の公式ホームぺージから読み取れる情報も参考に、応募する社会福祉法人を絞り込みましょう。
ここでは、社会福祉法人で働くときに重視するべき3つのポイントを紹介します。
3-1. 教育体制が整っているか
まず重視したいポイントは教育体制です。医療や介護に関する知識・技術は常に進化し続けており、法改正の把握も含めると日々の勉強が求められます。組織全体が最新情報に敏感かつ積極的に取り入れようとする姿勢であれば、時代に合った支援事業を行えます。
教育体制を確認するときは臨時研修制度など、職員のスキルアップをはかる勉強会の有無を確認しましょう。教育制度が充実している職場への転職は、自分自身の成長にもつながります。
3-2. 理念に共感できるか
職場を選ぶときは、理念に共感して働けるかどうかも重要なポイントです。社会福祉法人にも株式会社のような経営理念が存在します。どのような点に注力しているのか、どのような点を解決するべき課題として掲げているかなど、待遇面の他に経営理念も確認しましょう。
経営理念は患者さまや利用者さまへの接し方はもちろん、職員の待遇面にも反映されるものです。共感できる理念が掲げられている社会福祉法人を選べば、長く安心して働けるでしょう。
3-3. ライフスタイルの変化に適応できるか
スキルアップを実現するためには、長く働ける制度や環境が欠かせません。たとえば結婚や出産、子育てや介護などライフスタイルの変化に適応できない職場の場合、キャリア形成の道が断たれる可能性があります。
女性の場合は産休復帰率が高い職場など、将来的に起こり得るライフスタイルの変化も視野に入れた職場選びが大切です。また、ライフスタイルが変化したときに、スキルを生かしつつ別の部署で働ける体勢が確立されている職場であれば、性別を問わず安心して働けます。
まとめ
地域密着型の施設が多い社会福祉法人は、地元で長く働きたい方におすすめです。一方でキャリアチェンジが難しいデメリットもあり、思い描く将来像によっては転職も視野に入れる必要があります。
現状よりもスキルアップしたい方や、自分に合った職場への転職を検討している方は「マイナビ介護職」をご利用ください。マイナビ介護職では求職者さまのご希望やキャリアプランに最適な転職ができるよう、キャリアアドバイザーによるサポートを行っております。
※当記事は2022年8月時点の情報をもとに作成しています。
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