介護職が人手不足に陥りやすい理由は?働きやすい施設の特徴も解説

日本の介護現場は、高齢化の進展と生産年齢人口の縮小が重なり、慢性的な人手不足に直面しています。厚生労働省の推計でも介護職員の必要数は今後増えていくと予想されているので、現場では限られた人員でさまざまなニーズに応える体制づくりを行う必要があります。
当記事では、人手不足の背景とともに、長く安心して働ける職場を見極めるポイントや国が行っている施策について解説します。介護職についてより理解を深めたい方はぜひ参考にしてください。
目次
- 2. 介護職が人手不足に陥ってしまう理由
- 2-1. 給料水準が低い
- 2-2. 人間関係のトラブルが多い
- 2-3. 身体的な負担が大きい
- 2-4. 精神的な負担が大きい
- 2-5. 評価制度がうまく機能しない
- 2-6. 採用が難しい
1. 介護職の人手不足の現状は?
介護職は、日本の少子高齢化により需要が急速に高まっている一方で、深刻な人手不足が続いています。現場では、限られた職員が多くの利用者さんを支える状況が続き、労働負担や離職率の高さが課題です。ここでは、人手不足の背景にある少子高齢化や介護労働者不足の実態を詳しく見ていきます。
1-1. 少子高齢化
日本の少子高齢化は、介護職の人手不足を深刻化させる最大の要因です。厚生労働省によると、2040年には65歳以上が人口の約35%を占め、2070年には総人口が9,000万人を下回る見込みです。医療や生活環境の向上により平均寿命・健康寿命は世界でも高い水準にありますが、その分、介護を必要とする高齢者も増えています。
厚生労働省の「介護保険事業状況報告(年報)」によれば、2023年度末時点の要介護・要支援認定者は約708万人で、2000年度(約256万人)から約2.8倍に増加しました。一方で、少子化によって生産年齢人口が減少し、支える側の人手が足りなくなっています。若年層が減る中、高齢者を支える介護人材の確保が急務となっており、構造的な人材不足が進行している状況です。
(出典:厚生労働省「我が国の人口について」
/
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21481.html)
(出典:公益財団法人 生命保険文化センター「介護や支援が必要な人はどれくらい?」
/
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1119.html)
1-2. 介護労働者不足
介護分野では、働き手の不足が長年の課題となっています。厚生労働省の推計によると、2022年度に約215万人だった介護職員は、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人が必要になるとされています。にもかかわらず、実際の従事者は不足しており、介護福祉士の登録者のうち介護現場で働く人は約半数にとどまる状況です。
賃金水準も低く、社会保険・社会福祉・介護事業の常勤者の平均月給は約23.8万円で、全産業平均の約32.4万円を大きく下回ります。また、身体的・精神的な負担とともにシフト勤務や夜勤などの負担もあるため、離職率の高さが問題となっています。
こうした背景により、介護職は「増えているのに足りない」状態が続いています。安定的に人材を確保するためには、待遇の改善や働きやすい環境整備、キャリア形成支援の強化が不可欠と言えます。
(出典:厚生労働省「介護人材の確保について」
/
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000047617.pdf)
(出典:厚生労働省「介護人材確保に向けた取組」
/
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02977.html)
2. 介護職が人手不足に陥ってしまう理由
介護現場の人手不足は、1つの要因ではなく、複数の問題が重なって発生しています。賃金水準の低さや評価制度の不透明さ、心身への負担など、ここでは介護職が人手不足に陥る主な要因を解説します。
2-1. 給料水準が低い
介護職の平均賃金や初任給は、他の業種と比べると低い傾向にあります。夜勤やシフト勤務など、勤務内容の負担が大きいにもかかわらず、十分な報酬が得られないと感じる人も少なくありません。近年は処遇改善加算などの制度によって賃上げが進められていますが、施設の規模や地域によって差があり、十分に実感できない場合もあります。
その結果、介護職を志しても他業種へ流れてしまうケースも多く、人材の定着につながっていません。基本給の引き上げや資格・夜勤手当の明確化、スキルに応じた昇給制度など、努力が正当に報われる仕組みを整えることが大切です。将来のキャリアパスを見える化することが、定着率向上の鍵となります。
2-2. 人間関係のトラブルが多い
介護の現場では、職員同士だけでなく、看護師・ケアマネジャー・利用者さんやその家族など、多くの人と関わります。そのため、意見のすれ違いや価値観の違いがトラブルの原因となりやすく、教育体制が整っていない職場では人間関係の悪化につながります。人員が固定化されることで関係性が悪化し、離職につながるケースもあります。
こうした問題を防ぐには、ケア手順や業務分担を明確にし、情報共有を徹底することが大切です。定期的なミーティングや1on1面談を実施して早期に問題を把握し、メンター制度やハラスメント防止研修などのサポート体制を整えることで、安心して働ける職場づくりが実現します。
2-3. 身体的な負担が大きい
介護職は、入浴介助や移乗、排泄介助など身体的な負担が大きい業務が多く、腰痛や関節痛を理由に離職する人も少なくありません。人手不足の職場では本来2人で行う作業を1人で行うケースもあり、ケガのリスクが高まります。また、夜勤や不規則な勤務による生活リズムの乱れも体への負担を増加させます。
改善策としては、業務の分担を見直し、休憩や休日を確保できる体制づくりを進めることが求められます。安全で長く働ける環境を整備することが、人材定着の第一歩です。
2-4. 精神的な負担が大きい
介護の現場では、認知症ケアや看取りなど精神的に負担の大きい場面が多くあります。利用者さんやご家族の感情に寄り添う仕事であるため、感情労働が続くとストレスが蓄積し、燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥る人もいます。人手不足で業務が集中すると、さらに心理的負担が重くなります。
精神的な負担を和らげるには、スーパービジョン(指導助言)や事例検討会を設けて、職員が悩みを共有できる環境をつくることが効果的です。感情を整理できる場と支え合う文化の構築が、離職防止に直結します。
2-5. 評価制度がうまく機能しない
評価制度が整っていない施設では、職員の努力が給与や昇格に反映されにくく、不公平感が生じやすくなります。年功序列が中心の職場では、若手職員の意欲が下がり、優秀な人材が流出する原因にもなります。評価の基準が不明確なままでは、成果を出しても報われないと感じる人が増え、人手不足を悪化させてしまいます。
公平な評価を行うには、職種ごとのスキルや業務内容を明確にし、成果指標を設定することが必要です。定期的な面談で目標を確認し、努力や成果を見える形で評価に反映させましょう。頑張りが正当に認められる仕組みを整えることで、職員の定着率を高められます。
2-6. 採用が難しい
少子化の影響で働き手が減る中、介護職は有効求人倍率が高く、採用が非常に難しい職種の1つです。求人が多い分、人材の取り合いが起こり、条件の良い施設に応募者が集中する傾向があります。その結果、中小規模の事業所では採用が追い付かず、慢性的な人手不足が続いています。
採用のハードルを下げるためには、未経験者でも働きやすい研修制度や柔軟なシフト体制を整えることが大切です。また、短時間正社員制度や副業可の仕組みを導入するなど、多様な働き方を選べる環境を整えることも効果的です。採用後の定着まで見据えたサポート体制が、介護現場の安定につながります。
3. 人手不足の職場の特徴
離職率が高い職場には、いくつか共通した特徴があります。事前に人手不足の職場の特徴を知っておくことで、入職後のミスマッチを防ぎ、長く安心して働ける環境を選びやすくなるでしょう。
ここでは、人手不足の施設の特徴を詳しく解説します。
3-1. 求人がずっと出ている
同じ施設の求人が長期間掲載されている場合、職員の定着率が低く、慢性的に人手不足に陥っている可能性があります。面接が短時間で終わったり、経験や志望動機についてほとんど聞かれなかったりする場合も注意が必要です。採用を急ぐあまり、適性や教育体制の確認が不十分なまま入職させるケースでは、入職後のフォローが行き届かず、再び離職者を生むことがあります。
ただし、施設の新設や拡大などによる増員募集のケースもあるため、求人の背景を確認することが大切です。採用人数の理由や教育体制、具体的な業務内容を面接時に確認することで、一時的な募集なのか、恒常的な人手不足なのかを見極められます。
3-2. 施設が不衛生
人手不足の施設では、清掃や消毒などの衛生管理にまで手が回らず、清潔さが保たれないことがあります。特にトイレや浴室、食堂などの共有スペースは汚れが目立ちやすく、においが気になる場合もあります。掃除が行き届いていない施設では、感染症のリスクが高まり、職員の負担も増加します。
施設見学の際には、床や手すりの汚れ、換気の状態、物品の整理整頓などを確認しましょう。衛生管理が行き届いていない職場は、スタッフの意識や管理体制にも問題があるケースもあります。施設の清潔さは、職場環境と管理意識を映す大切な指標です。
3-3. 休日数が少ない
人手が足りない職場では、休みが取りづらく、休日が少ない傾向があります。法定休日ギリギリのシフト体制や、突発的な欠勤対応によって休日出勤を余儀なくされることも少なくありません。希望休が通りにくい、夜勤明けに十分な休息が取れないといった状況は、疲労の蓄積と離職の大きな原因になります。
求人票では「年間休日数」だけでなく、「平均残業時間」や「有給休暇の取得率」にも注目しましょう。見学時には実際の勤務表を確認し、休暇の取りやすさを質問してみることがおすすめです。しっかり休める環境が整っているかどうかが、長く働けるかどうかの分かれ道です。
3-4. 職員たちの雰囲気がよくない
職員の表情が暗く、笑顔が少ない職場では、人間関係や労働環境に問題を抱えている可能性があります。人手不足が続くと業務量が増え、職員同士の余裕がなくなるため、職場全体がぎすぎすした雰囲気になりやすい傾向があります。こうした職場では、ミスが起きやすくなり、それがさらにストレスを増幅させる悪循環が生まれます。
施設見学の際は、職員同士の挨拶や声掛けの様子、利用者さんへの対応などを観察しましょう。新人職員へのフォローや申し送りの丁寧さも、職場の雰囲気を知る手がかりになります。信頼関係を大切にできる環境であるかを見極めることが、安心して働ける職場を選ぶポイントです。
4. 国が行っている介護職の人手不足への対策
介護職の人手不足を解消するため、国では「働きやすい職場づくり」「介護の魅力発信」「処遇の改善」を柱としたさまざまな支援策を展開しています。介護職員の定着と新規参入を促す施策について詳しく解説します。
4-1. 介護事業者の認証評価制度
「介護事業者の認証評価制度」は、職員の人材育成や職場環境の改善に積極的に取り組む介護事業者を、都道府県が一定の基準に基づいて評価・認証する制度です。
評価項目には、「労働環境・処遇の改善」「新規採用者の育成体制」「キャリアパスと人材育成」などの分野があります。具体的には、給与体系の明確化、休暇取得の促進、産休・育休中の代替職員の確保、ICT活用による業務効率化、OJT研修の実施、資格取得支援などが評価の対象です。
この制度により、働きやすい職場が「見える化」され、介護職員の離職防止や新規参入の促進が期待されています。職員のキャリア支援と職場環境の改善を両立させる仕組みとして、業界全体の質向上につながっています。
(出典:厚生労働省「人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度について」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000505893.pdf)
4-2. 介護の魅力を伝える活動
介護業界では、仕事の意義ややりがいを多くの人に知ってもらうために、「介護のしごと魅力発信等事業」などの広報活動が行われています。この取り組みは、イベントやテレビ、SNS、パンフレットなどを活用し、介護職の魅力や社会的役割を幅広く伝えることを目的としています。
また、11月11日は「介護の日」と定められており、「いい日、いい日、毎日あったか介護ありがとう」というスローガンのもと、全国で啓発イベントや講演会が実施されています。さらに、この日を含む2週間(11月4日~17日)は「福祉人材確保重点期間」として、地域や学校と連携し、若者への普及啓発活動も行われています。
特に近年は、小・中・高校生向けのリーフレット配布や、現場職員の声を紹介する動画配信なども進められています。介護職への理解を深めることで、将来の担い手を増やすことを狙いとした取り組みです。
(出典:厚生労働省「介護人材確保に向けた取組」
/
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02977.html)
4-3. 処遇改善加算
「処遇改善加算」とは、介護職員の給与を引き上げるために国が設けている制度で、介護サービス事業所が一定の条件を満たすことで加算を受けられる仕組みです。加算の種類には段階があり、職場環境の整備やキャリアパスの明確化、昇給制度の導入などを行っている事業所ほど高い加算が適用されます。
加算を受けた事業所は、その一部を介護職員の賃金改善に充てることが義務付けられており、月額の賃金上昇や賞与の支給などに活用されています。令和7年度からは要件が見直され、加算の取得がより容易になりました。
処遇改善加算は、介護職員の収入向上と働きがいの向上を同時に実現するための中心的な政策です。給与の底上げによって、離職率の低下と人材の安定確保が期待されています。
(出典:厚生労働省「介護職員の処遇改善:TOP・制度概要」
/
https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/)
5. 良い介護施設の見分け方
介護職として長く働くためには、職場環境の良し悪しを見極めることが大切です。求人情報だけでは実際の雰囲気や働きやすさを判断しにくいため、見学や面談を通じて確認しましょう。
5-1. 職場の雰囲気が明るいか
明るく穏やかな雰囲気の職場では、職員同士が自然に挨拶を交わし、利用者さんとも笑顔で接する姿が見られます。こうした環境ではチームワークが生まれやすく、仕事のストレスも軽減されます。一方で、職員の表情が暗く、会話が少ない職場は人間関係に問題を抱えている可能性があります。人間関係の不和は離職の大きな原因となるため注意が必要です。
職場見学をするときは、職員の声掛けや利用者さんへの対応をよく観察しましょう。また、スタッフルームなど利用者さんから見えない場所にも清潔感があるかを確認することも大切です。整理整頓が行き届いている職場は、仕事への意識が高く、職員同士の信頼関係も築かれている傾向があります。
5-2. 新人のサポート体制がしっかりしているか
新人職員へのサポート体制が整っているかどうかは、職場の働きやすさを判断する大きなポイントです。教育マニュアルや研修制度が整っている施設では、未経験者でも安心して業務に慣れていけます。
特に、先輩が丁寧に指導するOJT体制や、困ったときにすぐ相談できる仕組みがある職場は定着率が高い傾向にあります。質問しやすい雰囲気のある職場は、日常的なコミュニケーションが活発であり、チーム全体の協力体制が整っています。
施設見学や面接の際には、「研修期間はどれくらいですか」「教育担当はいますか」など、具体的に質問してみるとよいでしょう。教育体制が明確で、成長をサポートしてくれる職場は、働きながらスキルを磨ける理想的な環境です。
5-3. 施設の方針に共感できるか
介護施設にはそれぞれ理念や方針があり、「利用者さん主体のケアを重視する」「地域とのつながりを大切にする」などの特色があります。自分の考えと施設の方針が一致しているかは、働く上での満足度に大きく関わります。理念に共感できる職場では、日々の業務にもやりがいを感じやすく、長期的なキャリア形成にもつながります。
施設の理念はホームページやパンフレットで確認できますが、実際に見学した際には職員が理念を体現しているかを観察するのがポイントです。利用者さんへの声掛けが丁寧で、思いやりのある対応ができている職場は、理念がしっかりと浸透している証拠です。共感できる理念のもとで働くと、自分の仕事に誇りと目的を持つことができます。
5-4. 介護ロボットが導入されているか
介護ロボットやICT機器を導入している施設は、職員の身体的・精神的な負担を軽減するための取り組みを行っています。たとえば、移乗支援ロボットは腰への負担を軽くし、見守りセンサーや自動記録システムは夜勤時の負担を減らします。こうした設備が整っている施設では、業務効率が向上し、職員が余裕を持ってケアに集中できます。
導入に積極的な施設ほど、スタッフを大切にし、労働環境の改善に力を入れている証と言えるでしょう。見学の際には、どのような機器が使われているかを確認し、「導入の目的」や「職員の意見が反映されているか」を尋ねてみるのもおすすめです。
まとめ
介護職の人手不足は、賃金や労働負担だけでなく、評価制度や教育体制、採用・定着の設計など複合的な要因が絡み合う課題です。介護業界での転職を考えている方は、求人票に加え、現場の雰囲気や新人へのサポート、ICT・介護ロボットの導入状況を見学で確認するとミスマッチによる離職を防げます。
介護職の転職でお悩みの方は、ぜひ一度マイナビ介護職にご相談ください。多数の非公開求人の中から、希望の職場探しをサポートします。
※当記事は2025年11月時点の情報をもとに作成しています
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