精神保健福祉士は公務員になれる?活躍できる場所と転職方法も解説
精神保健福祉士は、心に病を抱えている方に寄り添い、専門医療の受診や社会復帰をサポートする仕事です。専門知識や技術が求められつつも、患者さんが自分らしく生きる道を見つけて社会復帰していく姿を見守れる、やりがいや魅力にあふれた仕事でもあります。
精神保健福祉士の転職先は多岐にわたり、公務員も人気が高い選択肢の1つです。当記事では、精神保健福祉士が活躍できる主な場所と転職方法、公務員を目指す上で注意すべき点を紹介します。
目次
1. 精神保健福祉士は公務員として働ける?働く場所は?
精神保健福祉士は、民間の医療機関や社会福祉法人などの他に、公務員として働く選択肢もあります。公務員は、福利厚生が充実していたり収入が安定していたりとメリットが多く、長く働きたい方にとって魅力的な転職先です。
事実、厚生労働省の調査によると、精神保健福祉士の16.6%は地方自治体で働いていることが分かっています。
(出典:厚生労働省「介護福祉士等現況把握調査の結果について」
/
https://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/haaku_chosa/dl/01.pdf)
精神保健福祉士が公務員として働く場合、どのような職場で、どのような仕事を任されるのか解説します。
1-1. 保健所
保健所では、精神保健福祉相談員として精神障害者の方や家族の支援を行います。電話や面接で健康相談を行う他、相談者さんの状況に応じて医療機関へ同行したり嘱託医への相談をアドバイスしたりと、仕事はさまざまです。場合によっては、訪問することもあります。
ときには、 精神障害福祉に対する正しい認識を広めるための広報活動や教育事業も行います。具体的な取り組みは、地域包括ケアをテーマとした研修会や市民向け講演会、病院での実地指導、保健所での展示などです。
1-2. 病院・障害福祉施設
公立の病院や障害福祉施設で、患者さんの相談対応を行います。他の医療機関や介護施設で任される福祉サービスと、仕事内容に大きな差はありません。
たとえば患者さんの入院時は、本人や家族の方から相談を受けたり、日程などを調整したりします。他の医療機関や介護施設から転院する方の相談対応や退院支援もあり、院内外で関係者との連携が求められます。
医師や看護師はもちろん、薬剤師や介護職員、リハビリ技師など、仕事をする上でさまざまな職種の方と関われることが特徴です。 チーム医療の一員として、患者さんを受診や入院から退院、療養までサポートします。
1-3. 役所
各役所の 保健福祉課または類似する福祉系の課で、精神障害福祉に関する相談窓口を担当します。主な仕事は、役所を訪れた本人や家族の方の健康相談の対応、必要に応じた支援の申請手続きなどです。
窓口での相談業務に加えて、家庭訪問や啓発活動を行うために役所の外で働くこともあります。 相談内容によっては医療機関の紹介を行ったり、精神障害者の家族の方を対象とした教室を開いたりすることも精神保健福祉士の仕事です。
1-4 保護観察所
精神保健福祉士は、各地の保護観察所で「社会復帰調整官」として働く選択肢もあります。 社会復帰調整官とは、犯罪を行った精神障害者の社会復帰を支援する仕事です。
主に精神障害者本人の生活環境を調査して適切に調整したり、通院や服薬の継続など社会復帰に必要な助言や指導を行ったりします。必要な支援を確保するために、地域の医療機関やその他関係機関とも連携してサポートにあたることもあります。
社会復帰調整官は国家公務員であり、専門性が求められることから、一般職試験や総合職試験に合格しても採用されません。 社会復帰調整官の採用試験を受け、合格した方のみ就職・転職できます。
2. 精神保健福祉士が公務員として働くには?
精神保健福祉士の資格を活用して公務員を目指す場合、民間の病院やクリニックなどへ転職するときの方法と異なります。公務員として採用されるためには、いくつかの要件を満たした上で特定の試験合格が必要です。
精神保健福祉士が公務員を目指すときの流れを、「受験資格を確認する」「公務員試験を受ける」の2ステップに分けて解説します。
2-1. 受験資格を確認する
まず受験資格があるか、募集要項を確認しましょう。たとえば精神保健福祉士の資格の他、年齢制限や社会人経験などが受験資格にあげられます。
福祉職公務員の年齢制限は、他職種に比べると幅広く、30代前半まで受験できる場合があります。ただし 自治体によって条件は異なるため、必ず勤務を希望する機関が提示する募集要項を確認することが重要です。
一部の自治体では、社会人経験者枠が設けられている場合もあります。東京都の例をあげると、2023年度採用枠の受験資格は下記の通りです。
【受験資格】
昭和62年4月2日から平成15年4月1日までに生まれており、下記のいずれかに該当する方
・社会福祉士、精神保健福祉士、保育士、児童指導員、児童生活支援員、児童自立支援専門員のいずれかの資格を有する方(取得見込の方含む)
・短大を卒業しており、社会福祉関連事業の経験が2年以上の方
(出典:東京都福祉保健局「福祉(2類)の募集について(令和5年4月1日付採用)」
/
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/joho/soshiki/soumu/syokuin/syokuin_joukin/bosyu_ichiran/fukushiboshu.html)
東京都の場合、2023年度4月1日付で採用される人材の年齢制限は、19歳から35歳までです。学歴は短大卒業が条件となっており、さらに社会福祉関連事業の経験を2年以上積んでいる必要がある一方で、資格取得のみでも受験できるようになっています。
専門学校の卒業や他職種からの転職を機に国家試験を受験する予定の方も、「取得見込あり」として応募できます。
2-2. 公務員試験を受ける
受験資格がある場合は、 「地方上級福祉職(福祉区分)」の公務員試験を受けます。試験は一次試験と二次試験で構成されており、それぞれ下記の内容です。
一次試験 | 一般教養試験、専門試験、論文などの筆記 |
---|---|
二次試験 | 面接 |
ただし、上記はあくまで一般的な試験内容です。受験先によってはグループディスカッションなどが含まれていることもあるため、事前に詳細を確認しておきましょう。
一般教養試験も、自治体ごとに全問必答となっていたり選択式となっていたりと、試験内容は異なります。二次試験で論文を課されるところもあるため、一次試験で課せられなかったときも注意が必要です。
精神保健福祉士の公務員採用の倍率は2~3倍のところが多く、令和3年のデータによると、東京都で2.4倍でした。
(出典:東京都福祉保健局「東京都職員2類(福祉)採用選考 実施状況及び試験問題」
/
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/joho/soshiki/soumu/syokuin/syokuin_joukin/senkou_past/fukushi2rui.html)
公務員試験は、専門性の高さが求められる一方で、一般教養も重視されていることが特徴です。試験の準備は、専門分野に加えて公務員試験に特化した一般教養などの勉強も含めて計画を立てましょう。
3. 精神保健福祉士として公務員を目指すときの注意点3つ
公務員として働くことは、福利厚生の充実や仕事・給与の安定性をはじめ、多くのメリットがあります。一方で、公的機関で働くために求められる条件の厳しさや倍率の高さなど、注意点もあげられます。
公務員の仕事で精神保健福祉士の資格を生かしたいと考えている方は、次のことに注意しつつ受験の準備を進めましょう。
3-1. 求人数が限られている
安定性のある公務員には、定年まで退職しない人が多いことが特徴の1つです。 退職する人数がわずかである分、新たに人材を補充する機会も少ない傾向にあります。そのため民間の医療機関や福祉施設と比べると公務員の求人は少なく、地域によっては見つかりにくくなります。
各機関で必要とされる精神保健福祉士の人数は限られており、多くはありません。年度の変わり目のみ採用を行っているところもあるため、就職・転職を希望する自治体のホームページや広報誌をこまめに確認するなどの対策が必要です。
3-2. 経験者が優遇されやすい
精神保健福祉士の仕事は窓口で相談対応することが多く、 適切なサポートができる知識や経験、判断能力が求められます。募集情報には、資格取得見込の方や未経験の方でも応募できると書かれていても、必ずしも採用されるとは限りません。専門職ゆえに、経験者が優遇されやすい傾向です。
自治体によっては、受験資格に具体的な経験年数が書かれていることもあります。同じ県内でも、市区町村や機関で応募要件は異なる点に注意してください。
3-3. 仕事がハードな可能性がある
近年は、国や自治体が中心となって働き方改革を進めています。しかし、必ずしも仕事そのものが楽になるとは限りません。 福利厚生が充実している一方で、行政の職員として確実な仕事が求められます。
窓口を訪れる方は、自分自身や家族を救うために行政を頼って来ています。情報元を確認せず古い情報を提供したり、間違った対応をしたりすると、クレームやトラブルにつながりかねません。
仕事内容や大変さは、他の団体で活躍する精神保健福祉士と同等です。責任感を持って仕事にあたる必要があります。
まとめ
公的機関をはじめ、精神保健福祉士として身につけてきた知識や技術を生かせる場は、複数あげられます。ただし希望する自治体によっては募集数が限られており、自力で求人情報を探すこと自体が困難な場合もあります。自分に合った転職先を効率良く探したい方は、ぜひ「マイナビ介護職」をご利用ください。
マイナビ介護職はキャリアアドバイザーが転職先に求める環境や待遇、生かしたい能力を伺った上で、ご希望に沿った求人情報を紹介します。豊富な非公開求人の紹介に加えて、書類作成や面接など、実践的な転職サポートも行っております。
※当記事は2022年8月時点の情報をもとに作成しています
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