特養(特別養護老人ホーム)の仕事はきつい?働き方の実情を解説
介護施設とひとくちにいっても、ケア・サービスの提供内容や対象者の要介護度によってさまざまな種類に分けられます。数ある介護施設の種類のなかでも、要介護度3以上の認定を受けた高齢者が「終のすみか」としても利用できる介護施設が「特養(特別養護老人ホーム)」です。
特養は「介護老人福祉施設」という別名でも知られており、特養で働く職員は利用者の日々の介護ケアはもちろん、看取りといったあらゆるケアを行います。身体的負担が多いことから、「特養の仕事はきつい」と感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、特養の仕事内容や特養の仕事がきついと言われる理由を説明します。最後に、特養で働くメリットも説明しているため、就職先・転職先選びにぜひお役立てください。
目次
1. 特養(特別養護老人ホーム)とは?
特養とは、要介護度3以上の認定を受けた65歳以上の高齢者が利用できる介護施設です。「介護老人福祉施設」とも呼ばれており、主に社会福祉法人や地方自治体によって運営されています。要介護度3以上の認定を受けた高齢者が主な利用対象者ですが、要介護3以上の特定疾患が認められた40~64歳の方や、要介護1.2の認定を受けた方でも、自治体の特例入所認定を受けることで特養を利用できるようになります。
特養の利用者さんは、高度な医療が必要とならない限り入居し続けることが可能です。加えて、看取りに対応する特養も多く、「終のすみか」としても利用されています。
また、特養には大きく「従来型」と「ユニット型」の2つがあり、近年新たに設立される特養のほとんどがユニット型となっています。従来型とユニット型では、介護職員の働き方が大きく異なる点も特徴です。
(出典:厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000663498.pdf)
2. 特養の仕事内容
特養で働く介護職員は、利用者さんの生活介助や身の回りのお世話が主な役割です。さらに、利用者さんやその家族が特養での暮らしを安心して楽しめるよう、あらゆるサポートを行うことも重要となっています。具体的な仕事内容は、下記の通りです。
【特養の仕事内容】
●利用者さんの健康管理
●身体介護(食事介助・入浴介助・排せつ介助・服薬介助・離床介助など)
●生活援助(居室の清掃・洗濯・買い物など)
●生活リハビリテーション
●レクリエーション活動やイベントの計画・実施
●利用者さんの家族への近状報告・情報共有
●看取り
また、特養は利用者さんが入居するタイプの介護施設であるため、特養職員は日勤だけでなく夜勤にあたる必要があります。夜勤や準夜勤・深夜勤の場合、日勤よりも身体介護や生活援助などの業務は少なくなる代わりに、ケアプランの作成や介護記録の記入作業などが増える傾向です。
3. 特養の仕事がきついと言われる理由
特養は一部の地域で「入居待ち」が発生するほど人気の介護施設であり、介護職員の需要も高まっています。そのため、特養で働く介護職員の給料は比較的よいことが特徴です。
しかし、その一方で「特養の仕事はきつい」と感じる方も多くいます。では、なぜ特養の仕事はきついと言われているのでしょうか。ここからは、その理由として考えられる内容をいくつか説明します。
3-1. 要介護度の高い入所者さんが多く介護職の負担が大きい
特養には、主に要介護度3以上の高齢者が入所します。高度な医療の必要はないものの、「在宅介護は家族の負担が大きい」といった背景があって利用する入所者さんは多く、ほかの介護施設に比べて特養で働く介護職の負担はやや大きいと言えるでしょう。
また、特養は介護福祉士資格といった介護資格がなくても働くことが可能です。豊富な介護経験がない方にとっては、要介護度の高い利用者さんのサポートにより大きな負担を感じるケースもあるでしょう。介護サービス提供者側の平均的なスキルと、実際の介護現場で求められるスキルの差は、「特養の仕事はきつい」というイメージをもたれる1つの要因でもあります。
身体的な負担においては、業務に慣れれば軽減される部分もあります。また、近年では介助する方・介助される方双方の負担を減らせる「ボディメカニクス」が普及しており、この手法を習得すればさらに身体的負担を軽減できるでしょう。
3-2. 幅広い職種との連携が求められる
多くの介護施設では、幅広い職種との連携が求められます。そのなかでも、特にユニット型特養においてはユニットごとにチームを決めて個別ケアを進めていくため、チーム内の各担当者(介護職・看護師・医師・機能訓練士など)とより強固な連携を図らなければなりません。
チームでの介護ケアの提供は、お互いに支え合える・助け合えるという魅力がある一方で、連携がうまくできていないことによってトラブルが生じる可能性もあります。そのため、チーム内での情報共有やすり合わせは日々の欠かせない業務と考えておきましょう。
3-3. 看取りによる精神的負担がある
特養で働く職員は、利用者さんの看取りに対応する場面もあります。これまで長きにわたって介護ケアを提供してきた利用者さんを看取ることは、少なからず精神的な負担や苦痛を感じるもの でしょう。
特にユニット型特養であれば、より一人ひとりの利用者さんと密に関わることとなるため、信頼関係を築き上げてきた1人の知人を亡くすような思いにもなります。加えて、悲しい気持ちをすぐに切り替えて通常業務を担当しなければならない点も、「特養の仕事がきつい」と言われる要因の1つでしょう。
4. 特養で働くメリット
特養の仕事には、大変さやデメリットだけではなく、魅力やメリットも当然多くあります。デメリットだけに目を向けず、特養で働くことのメリットにも着目し、「自分に合っている職場かどうか」を検討するとよいでしょう。
ここからは、特養で働くメリットを3つ、それぞれ詳しく紹介します。
4-1. 幅広い介護スキルを身につけられる
特養には要介護度3以上の利用者さんが多くいるため、ほかの介護施設に比べて高度な介護技術・スキルを効率的に学ぶことが可能です。実務経験の少ない方でも、1~2年程度の勤務で大きく成長できるでしょう。
また、特養には専門的な介護関連資格を保有して幅広い業務に携わる経験豊富な介護職員も多くいます。経験豊富な先輩の業務を間近で見ながら自身も業務にあたることで、より飛躍的な介護スキル向上が目指せる でしょう。
4-2. 比較的給与が高い
在宅介護を要する高齢者の増加によって、終のすみかとしても利用できる特養の需要は大きく高まっています。その一方で、介護業界は人材の不足傾向が問題視されており、多くの介護施設では需要に応じて職員の給与額を高めるなど、人材不足の解消に向けた施策を講じていることが実情です。
厚生労働省が発表した介護従事者の平均給与データによると、特養で働く介護スタッフ(常勤)の平均月給は「345,590円」でした。
(出典:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」
/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/21/dl/r03kekka.pdf)
また、特養で働くスタッフの平均月給は、ほかの介護施設と比較してもトップクラスで高いことが分かります。
介護施設 | 平均月給 |
---|---|
特別養護老人ホーム | 345,590円 |
介護老人保健施設 | 338,390円 |
特定施設入居者生活介護事業所 | 319,760円 |
(出典:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」
/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/21/dl/r03kekka.pdf)
あらゆる関連資格を取得して業務の幅を広げたり、積極的に夜勤をしたりすることで、平均以上の月給も見込めるでしょう。このように、基準となる給与額の高さや、努力に応じて給与アップが見込める点は、特養の大きなメリットと言えます。
4-3. キャリアアップを目指せる
特養で働く介護職員は、日々多くの業務内容を担当することとなります。きつさすらも感じる一方で、ほかの介護施設にはないような幅広い業務経験を積めるため、キャリアアップへの道も見えやすくなるでしょう。同じ施設で働き続け、着実にスキルアップを図ることで、管理職や施設長になれるケースもあります。
また、たとえ同じ施設で働き続けなくても、特養で働いて得た介護スキルや知識は転職先の選択肢が大きく広がる要素となるほか、転職先の職場においても十分に活かせるでしょう。
まとめ
特養で働く介護職員は、多くの業務を担当しなければならず、ときには長く関わってきた利用者さんの最期を見届けるケースがあることから、きつい仕事というイメージももたれています。しかし、高度な介護スキルを身につけられ、かつ給与が高いという点は大きな魅力にもなるでしょう。
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※当記事は2022年11月時点の情報をもとに作成しています
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