60歳を過ぎた人でも介護職として働ける?メリットや注意点も解説
人生100年時代と言われる中で、高年齢者雇用安定法が改正されるなど働き続けられる年齢は上がっており、60歳を過ぎても働くのが一般的になっています。特に人手不足と言われる介護業界では、以前より積極的にシニア世代の雇用が行われており、定年後異業種からセカンドキャリアとして転職する方も多数存在します。今後社会が高齢化していくにつれて、シニア世代の方が活躍できる施設も増加していくでしょう。
この記事では60歳を過ぎた方が介護職として働くメリットや、働くときの注意点、転職活動に成功するためのポイントについて解説します。
目次
1. 介護職として働けるのは何歳まで?
介護職は60歳以上でも働くことが可能で、多くのシニア世代の方が活躍しています。一般的に定年は65歳ですが、再雇用制度などにより65歳を過ぎた方も介護職として働き続けられます。
令和3年度の「介護労働実態調査」によると、65歳以上の労働者がいると回答した介護事業所は68.0%、いないと回答したのが30.6%でした。職種でいうと、介護職員が最も多く45.2%、続いて訪問介護員が34.1%と続きます。
(出典:介護労働安定センター「令和3年度介護労働実態調査」
/
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2022r01_chousa_cw_kekka.pdf)
介護職として働く方の年齢別の割合は以下の通りです。
【介護職の年齢】
20歳未満 | 0.1% |
---|---|
20歳以上25歳未満 | 1.6% |
25歳以上30歳未満 | 4.3% |
30歳以上35歳未満 | 7.0% |
35歳以上40歳未満 | 9.9% |
40歳以上45歳未満 | 13.4% |
45歳以上50歳未満 | 13.8% |
50歳以上55歳未満 | 13.1% |
55歳以上60歳未満 | 11.0% |
60歳以上65歳未満 | 8.6% |
65歳以上70歳未満 | 4.6% |
70歳以上 | 2.7% |
※無回答者を含むため、合計は100%になりません
(出典:介護労働安定センター「令和3年度介護労働実態調査」
/
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2022r01_chousa_cw_kekka.pdf)
介護労働安定センターのデータからは、介護職の方は年齢を問わず幅広い年代が働かれているのが分かります。介護職として働いている方で一番多い年齢層は40代〜50代の方ですが、60歳以上の方も多く、15.9%の方が勤務されています。
福祉業界は慢性的な人材不足のため、シニア層の活躍の場も多くなっています。介護・福祉分野と全職業の有効求人倍率の差は、2023年3月時点で以下の通りです。
【有効求人倍率の差】
職業分類 | 有効求人倍率 |
---|---|
介護サービスの職業 | 3.44 |
社会福祉の専門的職業 | 3.02 |
全職業 | 1.22 |
(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001089527.pdf)
全職業の有効求人倍率の1.22倍に対し、介護サービスの職業や介護支援専門員などが該当する社会福祉の専門的職業の有効求人倍率はいずれも3倍を超えます。
日本の高齢化率はどんどん上昇し、介護職の人手不足はますます深刻です。2025年には243万人の介護士が必要になり、約32万の介護人材が不足すると試算されています。年齢に関係なく人材確保が急務なため、今後もシニアの方が雇用されるチャンスは多いでしょう。
(出典:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/000804129.pdf)
1-1. セカンドキャリアとして介護職を目指す方も多い
60歳以上の方が、介護職として雇用される入職経路は以下のようなルートです。
・現在の職場で定年延長して介護職として働き続ける「定年延長型」
・介護職として定年まで働いた後に転職する「介護転職型」
・異業種から転職する「セカンドキャリア型」
経験者が定年退職後も介護職として働き続けるのはもちろん、異業種から転職する「セカンドキャリア型」の方も増えています。特に、男性がセカンドキャリアとして介護職を目指す割合がほかの経路に比べて高くなっています。
勤務する介護事業所の主なサービスは、男性では運転免許を生かして送迎ドライバーなどの業務ができる施設系(通所)事業所で勤務される方が多い傾向です。女性は、訪問介護のヘルパーなど家事の経験が活かせる訪問系の事業所で勤務される方が最も多くなっています。
(出典:公益財団法人介護労働安定センター「多様な人材が活躍できる介護事業所づくり
/
https://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2020r02_t_chousa_keihatsu_20210113.pdf)
2. 60歳を過ぎた方が介護職として働くメリット
60歳以降の方が介護職として働く場合、若い世代と違った強みを活かして勤務ができます。仕事を通してご自身にも学びがあり、実生活でも活かせる点もメリットです。
働くメリットの内容を詳しく見ていきましょう。
2-1. 利用者との世代の近さを生かしてコミュニケーションできる
利用者さんとの世代が近いため、話題が合わせやすくコミュニケーションが取りやすいのは、60歳を過ぎた方が介護職として勤務する上で大きな強みになります。
利用者さんの世代で流行っていた歌・テレビ・映画・昔の出来事などについて、共通の話題を持っていれば、楽しい会話ができます。若い世代とはできない懐かしい話ができると親近感が湧き、ご高齢者の方々に喜ばれるでしょう。
ご自身も仕事や子育て、親の介護など、利用者さんがたどってきた苦楽を同じように経験している場合も多いため、人生の背景を汲み取りながら寄り添った介護ができます。また、利用者さんのご家族とも年代が近いので、ご家族の思いも理解できやすくなります。
介護をするときには信頼関係が欠かせません。60歳以上の方が、これまでの社会経験で培った対応力は介護をする上で大きな武器になります。利用者さんの反応を見てニーズを察することで安心感を与え、相手に共感したサービスが実現します。
2-2. 介護の知識や技能を身に着けられる
60歳を過ぎた方が介護職として働くメリットの2つ目は、介護の基本知識や技能が自然に身につくことです。
日常の身体介護や知識などが介護に役立つのはもちろん、介護保険制度や介護現場の現状も理解できます。実際に介護が必要になったときに、どのような制度やサービスが利用できるかなど、現場で働いているからこその知識が身につきます。
60歳を過ぎた年代の方の中には、すでに家族の介護を経験されている方や、これから必要になる方もいるでしょう。また、配偶者やご自身の老後についても気になってくる年代です。介護職に従事していれば、周囲の方から相談されたときにも非常に役立ちます。
介護職で培った経験が自分や周囲を助け、プライベートでも存分に活かすことが可能です。
3. 60歳を過ぎて介護職として働くときの注意点
60歳を過ぎて介護職として再雇用された場合、現役時代と同じような考え方で働くのではなく、若い世代と体力面や経験面で異なる点に注意して働く必要があります。シニア世代が介護職として活躍するために気を付けたい点を解説します。
3-1. けがや体の不調に注意する
介護職はどうしても介護者への身体的負担がかかる職種で、年齢を重ね体力や筋力が低下してくると、身体的負担がさらに大きくなりやすい点に注意しましょう。
厚生労働省の「令和4年労働災害発生状況の分析等」によると、社会福祉施設で発生している労災の原因は「動作の反動・無理な動作」が最も多く、全体の35.0%です。次いで「転倒」が34.3%と続いており、介助などで力を入れたときや、急いで移動したときに事故が起きやすいと言えます。
(出典:厚生労働省「令和4年労働災害発生状況の分析等」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001099504.pdf)
また、労災事故は高年齢になるほど事故発生率が上昇します。特に、中高年齢の女性の方は転倒事故が20代の15倍、動作の反動・無理な動作による事故も2倍以上という結果が出ているため、注意が必要です。
(出典:厚生労働省「令和4年高年齢労働者の労働災害発生状況」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001099505.pdf)
身体介護はもちろん、生活援助でも掃除などで長時間無理な体勢の業務が続くと体力的にきつくなります。また、夜勤や早出など不規則な勤務形態も身体的に負担です。職種や仕事内容、勤務形態などの要件をよく確認し、無理なく介護業務ができるかを検討する必要があります。
3-2. 年功序列を意識せず働く
60歳を過ぎて介護職として再雇用されたら、一緒に働くスタッフや上司は自分よりも年下の可能性が高くなります。年功序列の意識を捨て、謙虚な気持ちで働くことが大切です。 現役時代と同じ姿勢で臨むとトラブルになりかねないため注意が必要です。
ときには、年下のスタッフから注意や指示を受けるときもありますが、それで苛立ってしまったり、自分のやり方や意見を押し通したりすることは避けなければなりません。
知識やスキルなど、人生経験が豊富な自分のほうが知っている場合もたくさんあるでしょう。しかし、人生としては先輩でも介護業界では後輩です。年齢や経歴は忘れ、気持ちを新たに再スタートを切るつもりで仕事に臨みましょう。
3-3. パソコンやスマホの操作スキルを身に着ける
最近では介護業界でもIT化が進められています。パソコン・スマートフォン・タブレットなどが導入されている介護施設や事業所が増えているため、苦手な方でもスキルを身につけなければなりません。
IT化は、職員の介護記録にかかる時間を短縮させ、介護サービスの提供に集中できるようにするために国をあげて推進されています。苦手なのを理由に諦めてしまい、ずっと覚えようとしないのはNGです。時間をかけてでも徐々にスキルを身につけ、適応していく努力が必要になります。
4. 60歳を過ぎても転職活動に成功するためのポイント
60歳を過ぎても介護職への転職活動に成功するためには、培ってきたスキルやノウハウをアピールすることが重要です。
介護経験がない方は特に、年齢が高いことが体力面などでデメリットになる場面もあるでしょう。しかし、介護職の経験がなくとも、これまでの人生経験・スキル・知識は大きな武器になり得ます。
面接では、やる気と責任感を見せるのも大切です。介護職を志した理由や、介護職として働く上での目標などを語ると熱意が伝わります。
資格取得などの意欲を示すのも1つの手段です。「介護職員初任者研修」や「介護福祉士実務者研修」は誰でも受講できます。介護職として実務経験3年以上経過すれば、国家資格である「介護福祉士」の取得も可能です。
とはいえ、職場で若いスタッフたちとよい関係性を築きながら、柔軟性を持って仕事をすることが何より大切です。謙虚な気持ちも忘れず面接に臨むようにしましょう。
まとめ
介護業界は60歳を過ぎても働ける業界です。65歳以上の労働者がいると回答した介護事業所は68.0%であり、定年後のセカンドキャリアとして介護職を選ぶ方も多くいます。利用者さんと世代が近いことで話が合いやすいだけでなく、将来的に自分や家族に介護が必要になったときでも介護技術を生かせる点もメリットです。ただし、高齢になると無理な動きによる反動や転倒による事故を起こしやすい点などに注意して働きましょう。
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※当記事は2023年11月時点の情報をもとに作成しています
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