主任ケアマネジャーの資格取得・更新要件は?最短でなる方法も解説

主任ケアマネジャーは2006年の介護保険法改正により生まれた、ケアマネジメントにおけるリーダーとなる職種です。関係者との連絡調整、他のケアマネジャーへの指導や助言、地域包括ケアシステムの構築など、スーパーバイザーとしての役割を求められます。主任ケアマネジャーになるには、主任ケアマネジャー資格(主任介護支援専門員資格)の取得が必要です。
この記事では主任ケアマネジャーの受験資格や、取得・更新に必要な研修のカリキュラム、最短で主任ケアマネジャーになるのにかかる期間を解説します。
目次
1. そもそも主任ケアマネジャーとは
主任ケアマネジャーとは、他のケアマネジャーに助言・指導を行ったり、マネジメント業務を担当したりする役割を持つ職種のことです。ケアマネジメントに関する経験や深い知識の習得、課題に合わせた適切な意思決定など、ケアマネジャーとして高度な業務が求められます。
主任ケアマネジャーの仕事内容は、ケアプランの作成や実施だけではありません。職場内では、他のケアマネジャーやスタッフへの助言・指導を行い、リーダーの役割を務めます。また、利用者さんや家族、他の介護サービス機関・医療機関との連絡調整や、地域包括ケアシステムの構築に向けた地域づくりも担います。
利用者さんとの直接的なやりとりだけでなく、幅広い業務に携わることで自身のスキルアップにつながるのが主任ケアマネジャーとして働くメリットです。ケアマネジャーとして活躍の場が広がる大きなメリットも感じられるでしょう。
2. 主任ケアマネジャーになる方法
主任ケアマネジャーになるには、「主任介護支援専門員研修(主任研修)」を受講し、主任介護支援専門員資格を取得する必要があります。主任研修の受講要件は、下記の要件のうち1つ以上を満たすことです。
① 専任の介護支援専門員として従事した期間が通算して5年(60ヶ月)以上である者(ただし、管理者との兼務は期間として算定できるものとする。)
② 「ケアマネジメントリーダー活動等支援事業の実施及び推進について」(平成 14 年 4月 24 日老発第 0424003 号厚生労働省老健局長通知)に基づくケアマネジメントリーダー養成研修を修了した者又は日本ケアマネジメント学会等が認定する認定ケアマネジャーであって、専任の介護支援専門員として従事した期間が通算して 3 年(36 ヶ月)以上である者(ただし、管理者との兼務は期間として算定できるものとする。)
③ 施行規則第 140 条の 66 第 1 号イ(3)に規定する主任介護支援専門員に準ずる者として、現に地域包括支援センターに配置されている者
④ その他、介護支援専門員の業務に関し十分な知識と経験を有する者であり、都道府県が適当と認める者
また、受講対象者の選定に当たっては、特に質の高い研修を実施する観点から、上記の要件以外に、都道府県において実情に応じた受講要件を設定することは差し支えないものとする。
(引用:厚生労働省「介護支援専門員資質向上事業 令和5年4月版 介護支援専門員資質向上事業ガイドライン」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/001089250.pdf/引用日2023/5/29)
基本的には上記要件を満たす必要があるものの、各自治体が異なった要件を設定する場合もあります。既に主任ケアマネジャーとなった先輩・上司に聞いたり、居住する自治体に問い合わせたりして、受講前に詳細を確認しましょう。
2-1. 主任ケアマネジャーの研修カリキュラム
主任研修の全70時間の講義および演習カリキュラムを修了すれば、主任ケアマネジャーになれます。カリキュラムの内容とそれぞれの時間数については、下表の通りとなります。
【主任研修の内容】
講義・講習内容 | 講義・講習時間 |
---|---|
主任介護支援専門員の役割と視点 | 5時間 |
ケアマネジメントの実践における倫理的な課題に対する支援 | 2時間 |
終末期ケア(EOL(エンドオブライフ)ケア)を含めた生活の継続を支える基本的なケアマネジメント及び疾患別ケアマネジメントの理解 | 3時間 |
人材育成及び業務管理 | 3時間 |
運営管理におけるリスクマネジメント | 3時間 |
地域援助技術(コミュニティソーシャルワーク) | 6時間 |
地域における生活の継続を支える医療との連携及び多職種協働の実現 | 6時間 |
対人援助者監督指導(スーパービジョン) | 18時間 |
個別事例を通じた介護支援専門員に対する指導・支援の展開 | 24時間 |
合計 | 70時間 |
(出典:厚生労働省「介護支援専門員資質向上事業 令和5年4月版 主任介護支援専門員研修ガイドライン」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/001089254.pdf)
疾患に応じたケアマネジメントの技術講習や、人材育成・業務管理と言ったマネジメント能力の養成など、カリキュラムは幅広い内容を網羅しています。座学の講義だけでなく、ロールプレイング演習やグループワークなどの実践的なカリキュラムも含まれます。そのほか、研修記録シートを利用した自己評価や、筆記試験・小論文提出などがあるのも特徴です。
【主任研修の評価事項】
評価事項 | 評価される内容 |
---|---|
1) 主任介護支援専門員に特に期待される役割に関する理解度の評価 | ・「研修記録シート」を活用した自己評価の写し ・記述式の筆記試験 など |
2) 人材育成に関わる基本的な知識及び技術の理解度・習熟度の評価 | ・「研修記録シート」を活用した自己評価の写し ・「対人援助者監督指導(スーパービジョン)」及び「個別事例を通じた指導・支援の展開」の両科目において実施する演習の成果に基づく講師による評価とフィードバック など |
3) 地域づくりに関わる基本的な知識の理解度の評価 | ・「研修記録シート」を活用した自己評価の写し ・択一方式あるいは記述式の筆記試験 など |
他、実施が望ましいこと | ・科目修了ごとに簡易な筆記試験(地域づくりに関する理解度の評価においては小論文の作成・提出) ・講師やファシリテーターによる「ファシリテーターや講師としての適性」評価 |
(出典:厚生労働省「介護支援専門員資質向上事業 令和5年4月版 介護支援専門員資質向上事業ガイドライン」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/001089250.pdf)
主任研修の目的は、主任ケアマネジャーとしての役割を認識し、人材育成及び地域づくりのスーパーバイザーとなる知識や能力を養成することです。自身がどこまで知識を習得できたか、どのカリキュラムの理解が不足しているかなど、自分自身を客観的に評価しながら研修を進めるのが大切です。
3. 主任ケアマネジャーの更新研修要件
主任ケアマネジャーの登録を続けるためには、5年ごとに資格更新の研修を受講する必要があります。主任ケアマネジャーの更新研修となる「主任介護支援専門員更新研修」の要件は下記の通りです。
研修対象者は、次の①から④までのいずれかに該当するものであって、主任介護支援専門員研修終了証明書の有効期間がおおむね 2 年以内に満了する者とする。
なお、特に質の高い研修を実施する観点から、上記の要件以外に、都道府県において実情に応じた受講要件を設定することは差し支えないものとする。
① 介護支援専門員に係る研修の企画、講師やファシリテーターの経験がある者
② 地域包括支援センターや職能団体等が開催する法定外の研修等に年 4 回以上参加した者
③ 日本ケアマネジメント学会等が開催する研究大会等において、演題発表等の経験がある者
④ 日本ケアマネジメント学会等が認定する認定ケアマネジャー
⑤ 主任介護支援専門員の業務に十分な知識と経験を有する者であり、都道府県が適当と認める者
(引用:厚生労働省「介護支援専門員資質向上事業 令和5年4月版 介護支援専門員資質向上事業ガイドライン」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/001089250.pdf/引用日2023/5/29)
※「次の①から④まで」は原文ママ
主任介護支援専門員更新研修受講にあたっては、資格の有無だけではなく、主任ケアマネジャーとしての具体的な実績などを求められます。自治体によっては、主任ケアマネジャー業務の経験や知識に応じて個別に要件を設定する場合もあるため、早めの確認がおすすめです。
3-1. 更新研修のカリキュラム
主任ケアマネジャーの更新研修は、合計47時間の講義および演習がカリキュラムです。脳血管疾患や認知症など特定の疾患によるケアマネジメントや、家族への支援・関係機関との連携など、資格取得時の研修より深く掘り下げた研修内容となります。また、介護保険制度や地域包括ケアシステムについて、最新の動向に触れることができるのも特徴です。
カリキュラムの内容とそれぞれの時間数については、下表の通りとなります。
【更新研修の内容】
講義・講習内容 | 講義・講習時間 |
---|---|
介護保険制度及び地域包括ケアシステムの動向 | 3時間 |
ケアマネジメントの実践における倫理的な課題に対する支援 | 2時間 |
リハビリテーション及び福祉用具等の活用に関する理解 | 2時間 |
生活の継続及び家族等を支える基本的なケアマネジメント | 4時間 |
脳血管疾患のある方のケアマネジメント | 5時間 |
認知症のある方及び家族等を支えるケアマネジメント | 6時間 |
大腿骨頸部骨折のある方のケアマネジメント | 5時間 |
心疾患のある方のケアマネジメント | 5時間 |
誤嚥性肺炎の予防のケアマネジメント | 5時間 |
看取り等における看護サービスの活用に関する事例 | 4時間 |
家族への支援の視点や社会資源の活用に向けた関係機関との連携が必要な事例のケアマネジメント | 6時間 |
合計 | 47時間 |
(出典:厚生労働省「主任介護支援専門員更新研修各科目のガイドライン」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/001089255.pdf)
また、主任ケアマネジャーの更新研修の評価事項は下表の通りとなります。
【更新研修の評価事項】
評価事項 | 評価される内容 |
---|---|
1) 介護保険制度及び地域包括ケアシステムの最新の動向の理解の評価 | ・「研修記録シート」を活用した自己評価の写し ・択一方式あるいは記述式の筆記試験 など |
2) 人材育成や地域づくりに積極的に貢献しようとする姿勢の評価 | ・「研修記録シート」を活用した自己評価の写し ・主任支援専門員としての活動実績を考慮した上での研修における演習での発表内容 など |
3) 個別支援事例から一般化して考察する姿勢や考え方の評価 | ・「主任介護支援専門員としての実践の振り返りと指導・支援の実践」のいずれかの1科目における演習成果に基づいたレポートの作成 |
他、実施が望ましいこと | ・「主任介護支援専門員としての実践の振り返りと指導・支援」の全科目の演習成果 |
(出典:厚生労働省「介護支援専門員資質向上事業 令和5年4月版 介護支援専門員資質向上事業ガイドライン」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/001089250.pdf)
主任研修のように研修記録シートによる自己評価や筆記試験などが行われるほか、カリキュラムによっては演習での発表やレポートなどが求められることもあります。
4. 主任ケアマネジャーに最短でなるのにかかる期間
主任ケアマネジャーになるのにかかる期間は所持している資格により変わり、最短で3年で取得できます。主任ケアマネジャー資格の取得に必要な要件は以下です。
前提となる資格 | 前提となる資格取得に必要な最短期間 | 主任ケアマネジャー資格取得に必要な最短期間 | 無資格から主任ケアマネジャーになる最短期間 |
---|---|---|---|
ケアマネジャー | 5年の実務経験 | ケアマネジャーとして5年の実務経験 | 10年 |
認定ケアマネジャー | ケアマネジャーとして3年の実務経験 | ケアマネジャーとして3年の実務経験 | 8年 |
ケアマネジメントリーダー養成研修(2006年に廃止) | 自治体による | ケアマネジャーとして3年の実務経験 | - |
(出典:厚生労働省「介護支援専門員資質向上事業 令和5年4月版 介護支援専門員資質向上事業ガイドライン」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/001089250.pdf)
(出典:日本ケアマネジメント学会「認定ケアマネジャーとは」
/
http://www.jscm.jp/shikaku/)
ケアマネジャーの有資格者の場合、主任介護支援専門員研修を受講するには、ケアマネジャーとして5年以上の実務経験が必要です。 資格取得者であっても、実務経験がない場合は研修受講までに5年以上経験を積む必要があります。
認定ケアマネジャーは、ケアマネジャーとして3年以上の実務経験を積み、資格試験に合格することで取得可能な資格です。認定ケアマネジャー資格を取得すれば、自動的に主任ケアマネジャー資格の取得に必要な実務経験を満たせ、最短3年で主任ケアマネジャーになれます。 ただし、認定ケアマネジャー資格・主任ケアマネジャー資格はどちらも5年ごとの更新が必要です。
また、ケアマネジメントリーダー研修を受講しているケアマネジャーも最短3年で主任ケアマネジャーになれます。しかし、2006年に主任ケアマネジャー資格が生まれ、入れ替わる形でケアマネジメントリーダー養成研修は廃止されました。そのため、現在ケアマネジメントリーダー研修を受講するのは困難です。
(出典:広島市「介護支援専門員資質向上事業の実施について」
/
https://www.hcma.or.jp/shared/file/1_jigyou.pdf)
ケアマネジャーの資格を持っていない場合、保健医療福祉分野で5年以上の実務経験を積み、その上で介護支援専門員実務研修受講試験に合格することが条件です。 その後、主任介護支援専門員研修の受講にさらに5年以上の実務経験が必要なため、最低でも10年の期間を要する点を頭に入れておきましょう。
まとめ
主任ケアマネジャーになるには、「主任介護支援専門員研修(主任研修)」を受講し、主任ケアマネジャー資格を取得する必要があります。
主任研修では、ケアマネジメントの技術講習や、人材育成・業務管理と言ったマネジメント能力の養成を含むカリキュラムを受講します。受講後には自己評価や筆記試験・小論文提出などを行い、合格すれば研修は完了です。また、主任ケアマネジャーになった後も、5年ごとに更新研修を受講する必要があります。
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※当記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しています
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