看護師が介護福祉士とのダブルライセンスを目指すメリットとは?

看護師と介護福祉士はどちらも国家資格であり、就職や転職にはライセンスを取得する必要があります。高齢社会の今日、看護・介護の現場では、双方の垣根を超えて看護師と介護福祉士の両方の知識を持つ人材のニーズが高まっています。特に介護業界で働く介護福祉士の方が転職やキャリアアップを考えた時、看護師のライセンス取得を希望する方が増えているのが現状です。
この記事では、看護師と介護福祉士のダブルライセンスを目指すメリットと、それぞれの資格・仕事内容の違い、展望と現在の問題について解説します。看護師と介護福祉士のダブルライセンスを検討中の方は、ぜひご一読ください。
目次
1.【看護師×介護福祉士】ダブルライセンスのメリット3つ
ダブルライセンスとは、2つ以上の資格を持つ労働者のことです。医療や介護の現場では、専門職のライセンスを取得していることが労働の条件となっているケースもあります。
看護師と介護福祉士のダブルライセンスを取得した方は、看護師または介護福祉士の一方のライセンスを取得している方と比べてさまざまなメリットが得られます。ここでは、看護師と介護福祉士のライセンスを持つ3つのメリットをご紹介します。
介護の知識が求められる現場で対応できるようになる
医療業界では、看護の知識だけでは対応が難しい業務が多数発生することがあります。看護に加えて介護の知識も持っていると、介護の知識が必要な現場でも対応することが可能です。
また、看護と介護の知識の両方を持っていると、さまざまな場面に対応できることから業務の幅も広がります。対応できる業務が増えると技術の経験値も高まり、施設では一目置かれる存在になれるでしょう。
就職・転職に役立つ
介護福祉士は看護師のように医療行為ができないため、転職を希望するケースは珍しくありません。介護福祉士が転職の際に看護師のライセンスを取得しておくと、医療行為も担当できるため仕事の幅が増え、就職先を探しやすくなります。逆もまた然りで、看護師が転職する際にも介護福祉士のライセンスを取得することで求人を見つけやすくなるでしょう。
また、看護師と介護福祉士の2つのライセンスを取得することで就職・転職の幅が広がれば、スムーズなキャリア形成にもつながります。老年看護では看護師の知識だけでは不十分なことも多く、介護福祉士の知識があるとさまざまな場面で柔軟な対応が可能です。
介護現場では介護職の人手が不足しています。高齢者施設においてダブルライセンスの介護スタッフは、介護士と看護師の業務が兼任できるため、施設に重宝されるでしょう。ダブルライセンスの方は、就職・転職に有利な条件の求人が散見されます。
昇進・昇給につながる
介護・看護業界では、ライセンスの取得数に応じて昇給するシステムを採用している職場も多く、ダブルライセンスになると昇給の可能性が高まります。
(出典:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」)
また、介護の現場では専門知識を持った人材の確保を目指しており、看護師と介護福祉士のダブルライセンスは特に求められている傾向です。知識が豊富な人材を確保するために好待遇を提示する求人情報も多く、好待遇の施設などで働くことができれば、キャリアアップも目指しやすいでしょう。
2.看護師と介護福祉士の違い
看護師と介護福祉士は、専門資格を取得して支援が必要な方をサポートするといった点では共通していますが、資格取得の流れや仕事内容などに違いがあります。ダブルライセンスを目指し、就職・転職の幅を広げたい場合、それぞれの違いについても理解しておきましょう。
ここでは、看護師と介護福祉士の資格と仕事内容について解説します。
資格の違い
看護師と介護士福祉士では、資格の条件や取得の流れに違いがあります。
看護師の資格を取得するには、3年制の看護学校や看護学科を有する短大、または4年制の看護大学を卒業後、看護師国家試験に合格すると資格を取得できます。准看護師として働きながら看護師国家試験を受験する方法もあり、自身の状況に応じた選択が可能です。
介護福祉士の場合は、養成施設や福祉系の高校を卒業、もしくは介護士として3年間の実務経験を積んだうえで実務者研修を修了すると、介護福祉士国家試験の受験資格を得ることができます。高齢者などをケアする介護現場では、介護福祉士の資格があると就職・転職に有利です。
(出典:福祉医療機構「看護師」)
(出典:福祉医療機構「介護福祉士」)
仕事内容の違い
看護師と介護福祉士では、主に医療行為を行えるかどうかに違いがあります。
看護師の仕事内容は、大きく分けて下記の3つです。
・医師が患者さまを診察する際のサポート
・障害を持つ人などが日常生活を送るためのサポート
・健康的な身体づくりに関する教育
看護師は対象者の年齢に関係なく、病気やケガをした患者さまの検温、血圧、脈拍の測定を行います。また、採血、注射、点滴、投薬などの医療行為を医師の代わりに行うことも可能です。
看護師は認定看護師と専門看護師の2種類に分けられます。認定看護師とは、特定の看護分野において専門知識や優れた技術を持つ看護師のことです。一方、専門看護師とは、専門看護分野で優れた看護能力を有する看護師を示します。
看護師が活躍できる職場は、下記の通りです。
・病院
・診療所、クリニック
・有料老人ホーム
・介護施設
・訪問看護事業所
・保健所
・学校 など
一方で、介護福祉士は、寝たきりの高齢者や障害を持つ人など、一人で日常生活を送ることが困難な人を対象に介護サポートをします。また、介護が必要な人の相談に対応することも介護福祉士の仕事です。
介護福祉士は利用者さんの食事、入浴、排泄などの身体介護から、状態の観察、服薬の介助、通院時の付き添い、救急時の対応までを支援します。また、介護福祉士は利用者さんの人権を尊重し、生命の安全を確保しながら、利用者さんができることをなるべく自分自身で行えるようにサポートします。
このように、介護福祉士の仕事内容は多岐にわたりますが、採血や注射などの医療行為をすることはできません。
介護福祉士の職場としては、下記が挙げられます。
・訪問介護事業所
・居宅介護支援事業所
・介護老人福祉施設
・介護老人保健施設
・通所介護事業所
・障害者施設 など
(出典:福祉医療機構「看護師」)
(出典:福祉医療機構「介護福祉士」)
3.今後ダブルライセンスが容易になる?「共通基礎課程制度」の議論
近年、厚生労働省では看護師と介護福祉士のダブルライセンスについて「共通基礎課程制度」の議論がなされています。「共通基礎課程制度」とは、看護師と介護福祉士の医療福祉系の教育課程を共通知識として受講を免除することで、双方のライセンス取得のための時間を大幅に短縮することが目的です。
看護師が介護福祉士のライセンスを取得するルートには、以下の4つがあります。
・養成施設ルート
【2016年度の卒業生】
介護福祉士養成施設に進学、または福祉系大学を卒業後、介護福祉士養成施設などに1年間進学し、卒業することで資格を取得できます。
【2017~2021年度の卒業生】
養成施設を卒業すると同時に、介護福祉士の資格を取得することが可能です。ただし、介護福祉士の登録を継続するためには、養成施設を卒業後5年以内に国家試験に合格、または5年間継続して介護事業所などで経験を積む必要があります。
【2022年度以降の卒業生】
養成施設を卒業後、介護福祉士国家試験に合格すると資格を取得できます。
・福祉系高校ルート
指定の福祉系高校で必要な知識と技能を習得した方、指定の教科目と単位数を修業した方、または基礎知識と技術を修得し、9か月以上実務を経験した方が、国家試験の対象者となります。国家試験に合格すると、介護福祉士のライセンスを取得することが可能です。
・実務経験ルート
介護などの実務経験が3年以上ある方で、児童福祉施設、障害者施設、高齢者施設で実務者研修を修了した方は、国家試験の受験対象者になります。
・経済連携協定(EPA)ルート
経済連携協定とは、貿易の自由化、投資、人の移動、知的財産の保護など、さまざまな分野で協力の要素を含む経済関係の強化を目的とする協定を指します。日本で雇用契約を締結した施設で、日本の介護福祉士国家試験の合格を目的とした研修を受けながら就労するインドネシア人、フィリピン人、ベトナム人が対象です。
(出典:福祉医療機構「介護福祉士」)
看護師として働いている方が介護福祉士を目指すルートとしては「養成施設ルート」「実務経験ルート」が現実的です。また、看護師の資格を持っていることで、介護福祉士の資格取得に要する時間・費用が特別軽減できるわけではありません。
現在、医療・福祉業界では深刻な人手不足が続いており、問題解決が急がれています。特に介護の現場では慢性的な人材不足により、雇用の確保が最大の課題です。高齢者のケアには介護と看護の両方の知識・技術が必要となるため、ダブルライセンスのハードルを下げることで人材不足の解決と雇用の拡大が見込まれるでしょう。
まとめ
看護師と介護福祉士のダブルライセンス取得者の求人は、今後も高い需要が予想されます。どちらのライセンスも現在の日本社会には不可欠であり、ダブルライセンスの方は好条件で就職・転職できる可能性が高いです。
看護師が介護福祉士のライセンスを取得することで、さらに専門的なケアを提供することが可能になります。看護の現場においても同様に、専門的な知識や技術を習得することで患者さまの状態を総合的に把握できるようになるため、適切なケアを行えるようになります。
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※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています
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