実務者研修は最短どのくらいの期間がかかる?受講のメリットも解説
介護職員としてのスキルアップを図るなら、介護業界で実務経験を積むだけでなく、介護福祉士国家資格をはじめとした介護資格の取得も重要となります。数ある介護資格の中でも、多くの介護職員から選ばれている資格が実務者研修(介護福祉士実務者研修)です。
実務者研修は、介護福祉士国家試験を受験するために必要な研修でもあり、「なるべく最短で実務者研修を修了させておきたい」と考える方も多くいるでしょう。
そこで今回は、実務者研修の最短受講期間から、受講するメリットや働きながら受講できるかどうかについて詳しく紹介します。実務者研修を1日でも早く修了させたいという方は、ぜひご覧ください。
目次
- 2. 実務者研修を受講するメリット
- 2-1. 介護福祉士の受験資格が得られる
- 2-2. サービス提供責任者になれる
- 2-3. たん吸引・経管栄養の知識を学べるようになる
- 2-4. 介護職員としてより活躍できる
1. 実務者研修の修了には最短でどのくらいかかる?
実務者研修とは、「介護福祉士実務者研修」の略称であり、介護現場で活かせるより質の高いサービスを提供するための実践的な知識・技術の習得を目的とした研修 です。初任者研修(介護職員初任者研修)の上位資格という位置づけにあり、実務経験ルートで介護福祉士国家試験受験を目指す場合に必要となります。受講資格に定めはなく、誰でも研修を受けられます。
Q1 介護福祉士実務者研修とは、どのような研修ですか。
A1 3年以上の実務の経験がある実務経験者が、介護福祉士国家試験(平成28年度国家試験から適用)を受験するために必要な研修です。期間は6ヶ月以上、授業は450時間以上で設定されており、様々な種類(昼間・夜間・通信(一部面接授業有り))で開講されています。
(引用:近畿厚生局「介護福祉士実務者研修に関するよくあるご質問Q&A」
/
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/kaigoinnyouseikennsyuu.pdf 引用日2023/5/10)
また、実務者研修のカリキュラムは基本的に450時間と定められています。しかし、保有するその他の介護系資格によっては受講時間が短縮される場合もあることを覚えておきましょう。
研修名称 | 原則 (実務者) |
介護職員 初任者 |
訪問介護員 1級 |
訪問介護員 2級 |
訪問介護員 3級 |
介護職員基礎 |
受講時間 | 450 | 320 | 95 | 320 | 420 | 50 |
(引用:厚生労働省「実務者研修の受講のための負担軽減策」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/000484841.pdf 引用日2023/5/10)
ここからは、ケースごとにおける実務者研修の最短修了期間を解説します。
1-1. 資格を持っていない場合
厚生労働省が公表する実務者研修の指定基準によると、実務者研修以外の介護系資格を保有していない無資格者の場合、実務者研修の教育期間は「6か月・450時間以上」と定められています。
したがって、無資格者における実務者研修の最短取得期間は6か月となります。しかし、定められたスケジュールで通学講座・通信講座を受けられなかったり、自宅学習の時間を取れなかったりした場合は、最短期間の6か月間で実務者研修を修了できなくなる可能性が高いことに注意しましょう。
(出典:厚生労働省「実務者研修の指定基準について」
/
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/care/dl/care_16.pdf)
1-2. 初任者研修を修了している場合
介護職のスタート資格であり、実務者研修の下位資格でもある初任者研修をすでに修了している場合は、実務者研修において履修済みの科目が免除されることから、受講時間も短縮されます。
初任者研修修了者のみ免除される実務者研修の科目数は合計9つで、130時間分が免除となります。免除後のカリキュラム(合計320時間)を受けることで、実務者研修を修了できます。最短の修了期間は、約4か月です。
(出典:厚生労働省「実務者研修における「他研修等の修了認定」の留意点について」
/
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/care/dl/care_11.pdf)
1-3. 他の介護系資格を持っている場合
実務者研修の科目や受講時間は、初任者研修だけでなくその他介護系資格の有無によっても異なります。下記は、訪問介護員1~3級・介護職員基礎研修を受講している場合の免除科目数と、科目免除後の受講時間、主な修了期間です。
資格 | 免除科目数 | 科目免除後の受講時間 | 修了期間 |
---|---|---|---|
訪問介護員1級 | 18科目 | 95時間 | 約2か月 |
訪問介護員2級 | 8科目 | 320時間 | 約4か月 |
訪問介護員3級 | 3科目 | 420時間 | 約5か月 |
介護職員基礎研修 | 19科目 | 50時間 | 約1か月 |
訪問介護員1級や介護職員基礎研修は、ほとんどの科目が免除されるため、最短1~2か月で実務者研修を修了できます。
2. 実務者研修を受講するメリット
実務者研修を受講・修了することで、介護職員としてさまざまなメリットを受けられます。主なメリットは、下記の4つです。
●介護福祉士の受験資格が得られる
●サービス提供責任者になれる
●たん吸引・経管栄養の知識を学べるようになる
●介護職員としてより活躍できる
ここからは、それぞれのメリットについてより詳しく説明します。
2-1. 介護福祉士の受験資格が得られる
介護福祉士資格を取得するためには介護福祉士国家試験に合格する必要があり、介護福祉士国家試験を受験するためには定められた受験要項を満たす必要があります。
介護福祉士国家試験の受験ルートは複数あり、そのうち「実務経験ルート」においては、3年以上の実務経験に加えて実務者研修または喀痰吸引研修+介護職員基礎研修を受講しなければなりません。
すでに介護における実務経験が3年以上ある方は、実務者研修を修了するだけで介護福祉士国家試験の受験資格を得られます。また、介護職員として働き、実務経験を積みながら実務者研修を受講することも可能です。
(出典:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「実務経験+実務者研修」
/
https://www.sssc.or.jp/kaigo/shikaku/k_08.html)
(出典:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「実務者研修(EPA介護福祉士候補者以外の方)」
/
https://www.sssc.or.jp/kaigo/shikaku/k_08_4.html)
2-2. サービス提供責任者になれる
実務者研修を修了した方は、訪問介護サービスにおけるサービス提供責任者として活躍することが可能となります。サービス提供責任者とは、訪問介護サービスにおいて質の高い介護サービスを提供することを目的に、訪問介護計画書の作成やコーディネート業務に携わる存在です。
サービス提供責任者は訪問介護事業所で働きます。基本的に常勤で、管理者と兼務することができます。
おおむね次のような業務を行っています。
(1)介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成した居宅サービス計画(ケアプラン)に基づき、訪問介護の目標やその目標を達成するための具体的なサービス内容等を記載した訪問介護計画を作成します。
(2)作成した訪問介護計画書の内容を利用者やその家族に説明、利用者の同意を得ます。
(3)訪問介護サービス開始以降も、利用者の状態の変化や希望を定期的に確認(モニタリング)し、必要により訪問介護計画の変更を行います。
(4)訪問介護計画書に基づき、ヘルパーに具体的な介護サービスの指示を行います。そのためには、ヘルパーの能力や希望に応じた業務管理、スケジュール調整、利用者とヘルパーとの相性をふまえたマッチングを行います。ヘルパーの育成・指導も重要な業務となっています。
(5)ヘルパーから利用者の情報を収集し、利用者の状況を把握します。
(6)訪問介護サービスの申し込み受付、利用者からの相談受付などの庶務的な業務を行います。
(7)新任ヘルパーへの同行や急にシフトに入れなくなったヘルパーの代役を務めます。
(8)ほとんどの事業所がサービス提供責任者自身もヘルパー業務を並行して行っているのが現状です。
(引用:東京都福祉保健局「サービス提供責任者」
/
https://www.fukushijinzai.metro.tokyo.lg.jp/www/contents/1519008680999/ 引用日2023/5/10)
サービス提供責任者は誰もがなれる職種ではなく、介護福祉士資格保有者もしくは実務者研修修了者であることが条件となります。
在宅介護が注目されている近年、サービス提供責任者としても活躍できる実務者経験の修了者は、需要の高まる人材と言えるでしょう。
(出典:厚生労働省「サービス提供責任者について」
/
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1030-2d_0003.pdf)
(出典:東京都福祉保健局「訪問介護・介護予防訪問介護 人員配置基準に係る改正」
/
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/kaigo_lib/shitei/2_houmonkaigo.files/R040401_saseki_kijun.pdf)
2-3. たん吸引・経管栄養の知識を学べるようになる
実務者研修の受講によって、たん吸引・経管栄養の知識を学べる点も大きなメリットです。
基本的に、たん吸引・経管栄養に関する医療的ケアは実務者研修の修了者はもちろん、介護福祉士であっても患者さんや利用者さんに対して実施することはできません。しかし、実地研修を修了すれば、下記のようなたん吸引・経管栄養を実施できるようになります。
2 届出の対象となる「実地研修を修了した喀痰吸引等行為」
(1)口腔内の喀痰吸引
(2)鼻腔内の喀痰吸引
(3)気管カニューレ内部の喀痰吸引
(4)胃ろう又は腸ろうによる経管栄養
(5)経鼻経管栄養
(引用:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「資格登録(社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士)」
/
https://www.sssc.or.jp/touroku/kakutan/kktn_03.html 引用日2023/5/10)
実地研修は、誰もが受けられるわけではありません。しかし、実務者研修修了者であれば、介護福祉士資格を保有していなくても実地研修を受けられ、修了後は患者さんや利用者さんに対してたん吸引・経管栄養に関する医療的ケアを実施することが可能です。これらの医療的ケアを実施できる介護職員は、幅広い職場において非常に重宝されるでしょう。
(出典:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「「実地研修を修了した喀痰吸引等行為」の届出について」
/
https://www.sssc.or.jp/touroku/kakutan/kktn_03.html)
2-4. 介護職員としてより活躍できる
実務者研修を修了するだけでも、行える業務が増えたり、活躍の場が広がったりして、幅広い職場において重宝される人材となります。職場によっては資格手当を設けているところもあり、年収アップも目指せるでしょう。
厚生労働省が公表している「介護従事者処遇状況等調査結果」では、保有資格ごとの平均給与額データが記載されています。
平均給与額(単位:円) | |
全体 | 316,610 |
保有資格あり | 319,460 |
介護福祉士 | 328,720 |
社会福祉士 | 363,480 |
介護支援専門員 | 362,290 |
実務者研修 | 307,330 |
介護職員初任者研修 | 300,510 |
保有資格なし | 271,260 |
(引用:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」
/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/21/dl/r03kekka.pdf#page=190 引用日2023/5/10)
実務者研修の修了者の平均月給は307,330円であることに対し、無資格者の平均月給は271,260円と、約36,000円の差が生じていることが分かります。無資格者と比較して実務者研修の修了者は430,000円ほど年収が上がると考えると、その額の大きさがより分かるでしょう。
3. 実務者研修は働きながら受けられる?
実務者研修は、働きながらの資格取得も当然可能です。しかし、忙しい合間をぬって450時間のカリキュラムを1日1時間受講しても、修了までには1年以上かかることとなります。そのため、働きながら実務者研修の修了を目指すなら、なるべく研修受講を優先することが大切です。
実務者研修は、スクール選びも重要と言えるでしょう。スクールには主に通学コース・通信コースの2つの受講スタイルがありますが、通学の時間をとりにくいという方は通信コースでの受講がおすすめです。しかし、通信コースは自分のペースで学習できる一方で、常に自己管理・モチベーションが必要となることも覚えておきましょう。
また、実務者研修をスムーズに修了させるためにも、事前に職場の理解と支援を得るとよいでしょう。通信コースであっても通学の必要があるスクーリングのカリキュラム期間は職場のシフトを調整する必要があります。少なからず周りのスタッフに負担を強いることとなるため、あらかじめ伝えておくようにしましょう。
まとめ
実務者研修(介護福祉士実務者研修)とは、より質の高いサービスを提供するための実践的な介護知識・介護技術の習得を目的とした研修であり、初任者研修(介護職員初任者研修)の上位資格としても知られています。
実務者研修のカリキュラムは450時間、受講時間は最短で6か月です。しかし、その他の介護系資格の保有状況によっては科目が一部免除され、それに伴い受講時間も短縮されることを覚えておきましょう。
実務者研修は、働きながら受けることも可能です。介護における実務経験を積みたいなら、全国の介護職求人サイト「マイナビ介護職」から理想の求人情報をぜひチェックしてください。無料転職サポートサービスをご利用いただいた会員様には、非公開求人を含む求人のご紹介から応募先への条件交渉、面接対策まで幅広いサポートを提供いたします。
※当記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しています
介護・福祉業界の転職事情|仕事の種類・平均給与・おすすめの資格
関連記事
資格
| 公開日:2024.07.01 更新日:2024.07.01 |
介護美容師になるために必要な資格は?仕事内容ややりがいも解説
介護業界で需要が増えている仕事として、「介護美容師」があります。介護が...(続きを読む)
資格
| 公開日:2024.03.10 更新日:2024.03.29 |
介護支援専門員(ケアマネジャー)の受験資格とは?要件や流れを解説
介護支援専門員(ケアマネジャー)は介護を必要とする方からの相談に応じて...(続きを読む)
資格
| 公開日:2024.03.10 更新日:2024.03.26 |
介護福祉士から取れる資格とは?スキルアップに役立つ資格を紹介
介護福祉士は、介護分野における唯一の国家資格です。そのため、介護福祉士...(続きを読む)
資格
| 公開日:2024.02.20 更新日:2024.02.28 |
介護施設で働く生活相談員の資格要件とは|生活相談員のメリットも
介護の世界には、さまざまな仕事の種類があります。ケアプランの作成を担当...(続きを読む)