介護福祉士が行う生活リハビリとは?ステップアップに役立つ資格も
リハビリと聞いて、リハビリ専門職が行う訓練や施術をイメージする方もいるのではないでしょうか。一方で、生活リハビリは、食事・入浴・排泄などの介助を通じて利用者さんの自立を支援するリハビリの一種で、国家資格の有無に関わらず実践できます。
当記事では、介護職が介護現場で実践できる生活リハビリの種類や、介護職が生活リハビリを実践する目的を解説します。介護福祉士のステップアップにおすすめのリハビリ資格も紹介するため、リハビリに関する知識や、介護のスキルアップに興味のある方は参考にしてください。
目次
1.介護福祉士など介護職が実践できる「生活リハビリ」とは?
生活リハビリとは、生活上の動作を利用者さんができる限り自分で行うようにサポートし、利用者さんの自立を支援する取り組みを指します。リハビリ(リハビリテーション)の語源は、ラテン語の「re」と「habilis」が組み合わさったもので、意味は「再び適切な状態にすること」です。リハビリには、対象者が自分らしい生活を取り戻すために行われる訓練・支援全般が含まれます。その中で、介護福祉士などの介護職員が利用者さんに対して実践できるリハビリが生活リハビリです。
ここでは、介護職が担う生活リハビリを3種類紹介します。
食事介助
食事介助では、利用者さんがなるべく自分で食事ができるよう介助者がサポートします。具体例は下記の通りです。
・片手が不自由な利用者さんがお椀を持たずに食事ができるよう、食器の下に滑り止めマットを敷く
・利用者さんの身体の状態を見ながら、使いやすい形状の箸・スプーンを取り入れる
・座位が不安定な方が、姿勢を保てるようクッションやタオルを使う
・利用者さんの嚥下状態に合わせて、飲み込みにくい料理はとろみをつけたり細かく刻んだりして食べやすいように調整する
介助者は利用者さんの状態を観察し、利用者さんが自分で食べることを長く楽しめるような工夫をこらすのがポイントです。
入浴介助
入浴介助では、利用者さんの身体機能の維持につながるよう、身体を動かす機会を多く設けるとよいでしょう。具体例としては下記が挙げられます。
・脱衣所から洗い場まで伝い歩きができるよう手すりを設置する
・浴室の床に滑り止めマットを敷き、転倒リスクを下げる
・浴槽の縁に取り外し可能な手すりを設置し、利用者さんに浴槽をまたいでもらう
・適宜援助者が声かけ・見守りをしながら、手が届く範囲の洗髪・洗身を利用者さん自身で行ってもらう
利用者さんの転倒や体調不良に注意しつつ、なるべく利用者さん自身で行動できるような環境整備が重要です。
排泄介助
排泄介助では、利用者さんがトイレでの排泄を継続できるようサポートし、利用者さんの尊厳を守ることが大切です。具体例としては下記が挙げられます。
・居室からトイレまでの導線に手すりを設置し、利用者さんの移動を容易にする
・利用者さんがトイレで着脱しやすい衣類の着用を提案する
・居室からトイレまでの移動が間に合わない利用者さんには、ポータブルトイレの設置を提案する
利用者さんが夜間一人でポータブルトイレを使用する場合、ベッドからの移動時に転倒する恐れがあります。利用者さんの身体状況を踏まえ、ポータブルトイレの位置を慎重に検討しましょう。利用者さんの動きを感知し足元を照らすライトの設置もおすすめです。
2.介護福祉士などの介護職が生活リハビリを実践する目的
生活リハビリは、利用者さんの日常生活をリハビリの機会であると捉えて実践することです。介助者が、日々の生活にリハビリの考え方を取り入れて利用者さんをサポートすることで、利用者さんの自立支援につながります。
ここでは、生活リハビリの具体的な目的を2つ解説します。
寝たきりの予防
1つ目の目的は、寝たきりの予防です。ケガや病気で過度の安静状態を続けた利用者さんは、活動量・筋力が著しく低下します。そのため、ケガや病気が完治した後、利用者さんの活動量・筋力を以前の状態に回復させるサポートが必要です。周囲のサポートが不十分である場合、身体を思うように動かせない利用者さんは活動に消極的となり、寝たきりとなる可能性が高まります。
活動量が低下した利用者さんは、気分が落ち込み抑うつ状態となる傾向があります。援助者は、利用者さんの趣味・興味を把握し、行動する意欲が湧きやすい活動を企画・提案できるように努めましょう。
残存機能の活用・向上
2つ目の目的は、残存機能の活用・向上です。残存機能とは、何らかの理由で心身に障害を負った方に残された能力を指します。利用者さんの残存機能を生かすため、援助者は以下の点を意識しましょう。
・利用者さんの心身状態を観察する
・各生活動作について、利用者さんが自身で動作を行うために必要なサポートを洗い出す
・福祉用具の活用も視野に入れ、利用者さんの残存機能を最大限活用できる環境を整える
利用者さんの心身状態は日々変化するため、現状のサポートが最適な方法か、援助者は常に見直しが必要です。利用者さんの現状に合ったサポートを続けることで、残存機能の維持・向上が期待できます。
3.【介護福祉士向け】ステップアップにおすすめのリハビリ資格
生活リハビリは、リハビリの専門職以外でも実践できる一方、機能回復訓練などの訓練を実施するには、専門資格取得が必要になります。介護福祉士などの介護資格とともにリハビリの専門資格を保有するメリットは、生活リハビリに加えて、より専門性の高い サービス・ケアを提供できる点です。
ここでは、介護福祉士にとってステップアップに役立つリハビリ職の資格を3つ紹介します。
理学療法士
理学療法士(Physical Therapist=PT)は、運動機能に問題がある方に対し、基本的動作能力の維持・回復・悪化予防を支援する専門家です。基本的動作とは、歩く・座る・立ち上がる・寝返りを打つといった身体の動きを言います。理学療法士の主な仕事内容は、物理療法(温熱療法・電気療法など)を用いて、対象者に合ったリハビリテーションプログラムを作成・実行することです。
理学療法士の勤務先は病院・診療所が最も多く、続いて介護老人保健施設、訪問介護ステーションと多岐にわたります。スポーツ関係施設・フィットネス施設で働き、アスリートへの指導・サポート役として活躍することも可能です。
作業療法士
作業療法士(Occupational Therapist=OT)は、身体的・精神的機能に問題がある方に対し、作業療法を用いて3つの能力の維持・改善を支援する専門家です。3つの能力とは、対象者の心身機能のことである基本的動作能力、日常生活を送る上で必要な応用的動作能力、地域活動や就労・就学に必要な社会的適応能力を指します。作業療法士は、対象者が自分らしく生活できることを目標に、一人ひとりに最適なプログラムを作成し支援する点が特徴です。
作業療法士の勤務先は病院・診療所が最も多く、続いて介護老人保健施設、老人福祉施設と続きます。作業療法士は精神面のサポートも担うため、精神科のある病院への就業実績が多い点が理学療法士・言語聴覚士との違いです。
(出典:一般社団法人日本作業療法士協会「『日本作業療法士協会誌』第102号」)
言語聴覚士
言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist=ST)は、言語・音声・嚥下に問題がある方を支援する専門家です。対象者が抱える問題の原因を明らかにし、対処法を探り、必要な訓練を実施します。支援の具体例は下記の通りです。
・脳の障害で嚥下に問題がある方に対し、飲み込みの反射を高める訓練を行う
・失語症や高次脳機能障害の方に対し、発話の機能訓練を行う
・言葉の遅れがある子どもに対し、言葉を引き出したり文字の習得を促したりする訓練を行う
・聴覚障害を持つ方に対し、言語訓練や補聴器・人工内耳の調整を行う
言語聴覚士の勤務先は医療機関が最も多く、続いて老健・特養、福祉施設と続きます。小児から高齢者まで、支援をする年代が幅広い点が特徴です。
(出典:一般社団法人日本言語聴覚士協会「日本言語聴覚士協会会員の所属機関」)
まとめ
生活リハビリの実践は、利用者さんの寝たきり予防や、残存機能の維持・向上につながります。また、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリ資格を取得することで、より利用者さんの生活を支える人材としてのステップアップが可能です。
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※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています
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