精神保健福祉士の就職先は?給与や仕事のやりがいも解説

精神保健福祉士とは、専門性の高い知識および技術をもって精神障害者の抱える日常問題・社会生活問題をサポートする専門職です。資格取得のためには、精神保健福祉士国家試験に合格する必要があります。
精神保健福祉士の代表的な職場は医療施設ですが、そのほかにも多種多様な分野で活躍できます。また、勤務先分野によって業務内容や働き方も異なるため、精神保健福祉士を目指す方・精神保健福祉士の国家資格を活かせる職場を探している方は、まず精神保健福祉士の活躍フィールドを理解したのち、自分に合った就職先を選ぶことがおすすめです。
そこで今回は、精神保健福祉士が活躍できる6つの就職先(分野)を紹介します。また、職場ごとの平均給与もあわせて紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 精神保健福祉士が活躍できる就職先は?
精神保健福祉士とは、専門性の高い知識および技術をもって精神障害者の抱えるさまざまな問題をサポートする専門職です。「精神障害者に対する社会復帰の支援」が主な仕事となっています。
(出典:厚生労働省「精神保健福祉士について」
/
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/seisinhoken/index.html)
精神保健福祉士の職場と聞いてまず思い浮かべる代表的な職場は医療機関ですが、その他にもさまざまな職場・分野で活躍することが可能です。中でも、福祉・介護・医療の分野で働く精神保健福祉士は75%以上を占めています。
ストレス社会と言われる近年において、精神保健福祉士は福祉・介護・医療の分野のみならず、行政や司法など幅広い分野でニーズが高まりつつある職業と言えるでしょう。
(出典:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「精神保健福祉士就労状況調査実施結果報告書(令和2年度)」
/
https://www.sssc.or.jp/touroku/results/pdf/r2/results_04.pdf)
そこでまずは、精神保健福祉士が活躍できる具体的な就職先を、6つの分野に分けて詳しく紹介します。
1-1. 医療関係
医療関係は、精神保健福祉士が活躍できる最も代表的な分野と言えるでしょう。具体的な職場としては、精神科・心療内科のある病院や、精神保健福祉センターなどが挙げられます。
医療関係で働く精神保健福祉士は、福祉的支援の立場からチーム医療に関わることが基本です。精神科医や看護師などと連携しながら、入院患者や患者さんの家族に対する個別相談業務、さらに退院支援などあらゆるサポートを提供します。
また、訪問型医療を提供する医療機関で働く精神保健福祉士の場合は、時に患者さんの自宅を訪問し、円滑な日常生活を送るための助言・指導を行うこともあります。
(出典:公益社団法人 日本精神保健福祉士協会「精神保健福祉士に求められる役割について」/
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000488346.pdf)
1-2. 福祉・介護関係
福祉・介護関係は、医療関係に次いで多くの精神保健福祉士が活躍する分野です。具体的な職場としては、障害者福祉施設や関連施設(就労支援事業所・地域活動支援センター等)などが挙げられます。また、近年では高齢者の精神福祉ニーズが高まっており、老人保健施設で働くケースも増加傾向にあります。
いずれの施設においても、精神保健福祉士は精神障害者に対して社会復帰や生活支援を行い、相談や日常生活全般に関わるサービスを提供することが基本です。しかし、日常生活訓練を行ったり、あらゆる方面から精神障害者の就労を支援したりなど、職場の種別やケースによっても行う業務は多岐にわたることを覚えておきましょう。
1-3. 児童福祉関係
児童福祉関係は、障害児施設や児童養護施設、母子生活支援施設、更生施設などといった"児童の集まる施設"を主とした分野です。児童福祉関連施設で働く精神保健福祉士は、「相談員」という立場で子どもたちの相談援助や自立支援を担当します。
児童福祉関連施設では、精神的な障害のある子どもだけでなく、親による虐待や育児放棄などが理由で入所する子どもとも関わることとなります。そのため、精神障害への適切な支援・サポートはもちろん、精神のサポートが必要な子どもたちに対する自立支援や健康管理といったスキルも求められます。従って、「精神保健福祉士もしくは社会福祉士」を応募資格とする求人も少なくありません。
1-4. 行政関係
精神保健福祉士が活躍できるのは、医療系・福祉系だけではありません。行政関係にあたる施設としては、精神保健福祉センターや保健所のほか、各地域の精神保健福祉に関する施策を推進する機関も挙げられます。これらの施設では、精神保健福祉士の存在が欠かせません。
行政関係においては、働く施設や部署によって仕事内容が大きく異なることも特徴です。基本的には、支援事業の手続きや計画作成を担当することが多いものの、心に何らかの問題を抱えた相談者が安心して日常を過ごせるようさまざまな支援を行ったり、公的支援制度を紹介したりするなど、その時々に応じた対応が求められます。
(出典:厚生労働省「求められる精神保健福祉士の役割について」
/
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/09/dl/s0929-10b.pdf)
1-5. 司法関係
精神保健福祉士は、司法関係の施設でも活躍することが可能です。具体的な職場としては、保護観察所・刑務所・更生保護施設などが挙げられます。司法関連施設で働く精神保健福祉士は、「心神喪失者等医療観察法」に基づき、社会復帰調整官や精神保健参与員として働くことが基本となっています。
社会復帰調整官とは、心神喪失などにより重大な他害行為を行った精神障害者の社会復帰を目的に、生活環境を調査・調整したり、精神保健観察などの業務を行う職業です。そして精神保健参与員とは、心神喪失などにより重大な他害行為を行い、無罪または不起訴処分が確定した精神障害者に対し、医療・観察の要否などの処遇を決定する職業です。
(出典:法務省「社会復帰調整官について」
/
https://www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo_hogo17.html)
(出典:厚生労働省「精神保健判定医、精神保健参与員、鑑定医関係」
/
https://www.mhlw.go.jp/topics/2004/07/dl/tp0727-1f.pdf)
また、矯正施設においては、出所者に対する「地域生活の定着に向けた支援」を行うこともあります。
(出典:厚生労働省「求められる精神保健福祉士の役割について」
/
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/09/dl/s0929-10b.pdf)
1-6. 教育関係
近年では、教育関係でも精神保健福祉士の需要が高まりつつあります。具体的な職場としては、小学校・中学校・高校などが挙げられます。このような教育関係の施設で働く精神保健福祉士は、児童が抱える問題の解決を図る「スクールソーシャルワーカー」として働く道もあります。
教育関係で働く精神保健福祉士やスクールソーシャルワーカーの主な仕事は、教育環境の調整・いじめや不登校などの問題解決 です。また、児童たちに対する直接的な支援だけでなく、学校の教育体制の見直しや構築、教職員に対する研修活動の推進といった間接的な支援も基本業務となっています。
(出典:厚生労働省「求められる精神保健福祉士の役割について」
/
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/09/dl/s0929-10b.pdf)
精神保健福祉士の仕事内容|向いている人や1日のスケジュールも紹介
2. 【職場別】精神保健福祉士の平均給与
精神保健福祉士の雇用形態は、全体のおよそ80%が正規雇用となっていることが特徴です。公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが発表したデータによると、正規雇用で働く精神保健福祉士の全体平均年収は「404万円」であることが分かりました。 性別の全体平均年収・性/年齢別の平均年収は、下記の通りです。
【性別】精神保健福祉士の平均年収
全体平均年収 | |
---|---|
男性 | 463万円 |
女性 | 377万円 |
(出典:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「精神保健福祉士就労状況調査実施結果報告書(令和2年度)」/
https://www.sssc.or.jp/touroku/results/pdf/r2/results_04.pdf)
【性/年齢別】精神保健福祉士の平均年収
20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代以上 | |
---|---|---|---|---|---|
男性 | 325万円 | 420万円 | 492万円 | 541万円 | 407万円 |
女性 | 311万円 | 351万円 | 399万円 | 451万円 | 321万円 |
(出典:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「精神保健福祉士就労状況調査実施結果報告書(令和2年度)」/
https://www.sssc.or.jp/touroku/results/pdf/r2/results_04.pdf)
性/年齢別の平均年収データを見ると、精神保健福祉士の年収は男女ともに実務経験が豊富な50代がピークで、それ以降は大幅に減少することが分かりました。働き方の変化や、定年制度が理由と言えるでしょう。
また、分野別における精神保健福祉士の平均年収は下記の通りとなっています。
医療関係 | 396万円 |
---|---|
高齢者福祉関係 | 394万円 |
障害者福祉関係 | 386万円 |
児童福祉関係 | 416万円 |
行政関係 | 485万円 |
司法関係 | 521万円 |
教育関係 | 315万円 |
(出典:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「精神保健福祉士就労状況調査実施結果報告書(令和2年度)」/
https://www.sssc.or.jp/touroku/results/pdf/r2/results_04.pdf)
精神保健福祉士の平均年収を分野ごとに分けて見てみると、司法・行政関係に携わる精神保健福祉士は特に高収入であることが分かりました。司法・行政関係は、さまざまな法律をはじめとしたより幅広い専門知識が必要となるうえ、比較的需要が高いことが理由と言えます。さらなるスキルアップを目指すなら、司法・行政関係の分野をキャリアプランに組み込むのもよいでしょう。
まとめ
精神保健福祉士とは、精神障害者の抱えるさまざまな問題をサポートする専門職であり、主な仕事は福祉サービス・支援サービス利用者に対する社会復帰支援・相談支援業務となっています。
代表的な就職先は病院をはじめとした医療機関ですが、実は精神保健福祉士はほかにも福祉分野・行政分野・司法分野・教育分野などさまざまなフィールドで活躍することが可能です。特に行政・司法分野は精神保健福祉士の平均年収も高いため、キャリアプランに設定するのもよいのではないでしょうか。
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※当記事は2022年8月時点の情報をもとに作成しています
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