【熊本県】介護職員処遇改善加算の取得状況は?介護施策の状況も解説
熊本県では高齢者人口が年々増加しており、令和元年時点で高齢化率は31.1%となっています。団塊のジュニア世代が65歳以上となる令和22年(2040年)には、高齢化率が36.2%になると予測されており、介護職に携わる人材の確保が急務となっています。
(出典:熊本県「第2章 高齢化の現状と将来推計」 /https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/life/92011_132104_misc.pdf)
熊本県では、労働環境の改善・給与水準のアップを図る一環として、各事業所で介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算の取得が行われている状況です。
この記事では、熊本県における介護職を対象とした処遇改善加算の取得状況・対応状況を紹介します。熊本県が実施する介護施策なども紹介するため、転職を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
※本文では、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)のデータにも触れておりますが、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)は令和3年3月31日で廃止されており、令和3年3月31日時点で算定している事業所については、令和4年3月31日までの算定です。
そのため、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)のデータは参考値としてご参照ください。
目次
1. 介護職員処遇改善加算とは?
介護職を対象とした処遇改善には、すべての職員を対象とした「介護職員処遇改善加算」と、経験・技能を有した職員を対象とした「介護職員等特定処遇改善加算」があります。ここでは、各処遇改善加算の概要を紹介します。
・介護職員処遇改善加算
介護職員処遇改善加算は、「キャリアパス要件」「職場環境等要件」を満たす数によって、加算(Ⅰ)~(Ⅲ)に分類されます。加算率はサービス区分によって異なり、「訪問介護」「夜間対応型訪問介護」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」が高くなっています。加算額は、月額で介護職員1人あたり約15,000~37,000円となっています。
・介護職員等特定処遇改善加算
介護職員等特定処遇改善加算を取得できる事業所は、介護職員処遇改善加算の加算(Ⅰ)~(Ⅲ)を取得している、かつ厚生労働省が定める項目を満たしている事業所です。政府では、「勤続年数10年以上の介護福祉士の処遇改善を約80,000円行うこと」などを方針として掲げています。なお、介護職員等特定処遇改善加算の配分は各事業所にゆだねられているため、勤続年数が10年未満の職員であっても、加算を得られる可能性があります。
1-1. 介護職員処遇改善加算における平均給与の推移
全国的に介護職員処遇改善加算を取得する事業所が増加したことにより、介護職員の平均給与は上昇しています。
平成31年2月と令和2年2月の正社員で働く介護職員の平均給与を比較すると、令和2年2月のほうが15,730円高くなっています。内訳を見ると、基本給が3,160円・手当が8,090円・一時金が4,490円の増額です。全国的には、手当の種類や金額を増やすことで、処遇改善を行う事業所が多くなっています。
また、パートで働く介護職員の平均給与もアップしています。時給で見ると平成31年2月は1,090円であったことに対して令和2年2月は1,110円と20円の増額でした。時給を見ると大きく給与水準が改善されたようには見えませんが、平均給与の増加額は月額で5,750円、年間では50,000円以上のアップとなっています。
(出典:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)」 /https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000689849.pdf)
以上のことから、介護職員処遇改善加算を取得している事業所では、雇用形態に関係なく給与水準がアップしています。
2. 熊本県における介護職員処遇改善加算の取得状況
介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算は、施行された時期が異なるため、取得率にも違いが見られます。全国平均の取得率を見ると、施行された時期が早かった介護職員処遇改善加算は92.9%、令和元年10月に運用が開始した介護職員等特定処遇改善加算は66.4%です。
ここからは、熊本県における各処遇改善加算の取得状況・対応状況を紹介します。
2-1. 【厚生労働省】介護給付費等実態統計をもとにした取得状況
下記は、令和3年1月時点における九州・沖縄地方の介護職員処遇改善加算の取得状況をまとめた表です。なお、各加算の割合は厚生労働省の「介護給付費等実態統計」を参考にしています。
【九州・沖縄地方】介護職員処遇改善加算の取得状況 (令和3年1月サービス提供分) 単位(%) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) | 加算(Ⅲ) | 加算(Ⅳ) | 加算(Ⅴ) | 合計 | |
全国平均 | 80.0 | 7.1 | 5.3 | 0.2 | 0.3 | 92.9 |
福岡県 | 77.4 | 7.9 | 5.5 | 0.4 | 0.6 | 91.7 |
佐賀県 | 78.2 | 5.7 | 6.9 | 0.6 | 1.0 | 92.5 |
長崎県 | 73.1 | 9.6 | 9.0 | 0.3 | 0.2 | 92.2 |
熊本県 | 74.3 | 7.6 | 10.4 | 0.0 | 0.1 | 92.3 |
大分県 | 73.7 | 12.4 | 6.2 | 0.1 | 0.0 | 92.4 |
宮崎県 | 74.4 | 7.8 | 10.3 | 0.3 | 0.1 | 92.9 |
鹿児島県 | 73.3 | 11.5 | 6.4 | 0.2 | 0.3 | 91.8 |
沖縄県 | 77.6 | 7.1 | 7.4 | 0.1 | 0.2 | 92.4 |
(引用:東京都福祉保健局「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」/https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/shogu/R3_shoguu.files/jirei_torikumi.pdf/引用日2022/3/2)
※加算(Ⅳ・Ⅴ)については、令和3年3月末時点で同加算を算定している事業者について、1年の経過措置を設けた上で、令和2年度で廃止されています。
熊本県における介護職員処遇改善加算の取得率は、全国平均より若干低くなっています。 熊本県では、加算(Ⅲ)を取得する事業所が10%以上となっており、上位区分を取得する事業所が増えれば、給与水準の改善がさらに進むでしょう。
下記は、令和3年1月時点における九州・沖縄地方の介護職員等特定処遇改善加算の取得状況をまとめた表です。
【九州・沖縄地方】介護職員等特定処遇改善加算の取得状況(令和3年1月サービス提供分) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) | 合計 | |
全国平均 | 32.0 | 34.3 | 66.4 |
福岡県 | 26.2 | 30.7 | 56.9 |
佐賀県 | 27.8 | 27.9 | 55.7 |
長崎県 | 34.1 | 23.3 | 57.4 |
熊本県 | 33.5 | 26.2 | 59.7 |
大分県 | 31.6 | 24.7 | 56.3 |
宮崎県 | 27.2 | 31.2 | 58.4 |
鹿児島県 | 30.4 | 27.3 | 57.8 |
沖縄県 | 24.9 | 26.6 | 51.5 |
(引用:東京都福祉保健局「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」/https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/shogu/R3_shoguu.files/jirei_torikumi.pdf/引用日2022/3/2)
熊本県における介護職員等特定処遇改善加算の取得率は、九州・沖縄地方で最も高くなっています。区分別に見ると、加算(Ⅱ)より加算(Ⅰ)を取得する事業所の割合のほうが高く、熊本県には経験・技能を有した介護職員の処遇改善に取り組む事業所が決して少なくありません。
2-2. 【公益財団法人介護労働安定センター】介護労働実態調査結果をもとにした対応状況
公益財団法人介護労働安定センターは、介護職の雇用管理の改善・職員の能力開発や向上などを総合的に支援する機関です。同センターでは、介護職の実態をまとめた「介護労働実態調査結果」を毎年公表しています。
下記は、令和2年度の「介護労働実態調査結果」をもとに、九州・沖縄地方における介護職員処遇改善加算の対応状況をまとめた表です。
【九州・沖縄地方】介護職員処遇改善加算の算定及び対応状況(令和2年度) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
諸手当の導入・引き上げ | 一時金支給 | 基本給引き上げ | |
全国平均 | 61.6 | 57.6 | 35.3 |
福岡県 | 59.7 | 56.5 | 29.6 |
佐賀県 | 68.6 | 60.0 | 40.0 |
長崎県 | 64.0 | 59.6 | 36.0 |
熊本県 | 67.1 | 64.2 | 42.8 |
大分県 | 64.2 | 55.6 | 42.0 |
宮崎県 | 67.3 | 62.7 | 33.6 |
鹿児島県 | 61.7 | 57.1 | 33.8 |
沖縄県 | 69.9 | 47.3 | 25.8 |
(出典:公益財団法人介護労働安定センター「―令和2年度 介護労働実態調査結果について―」/http://www.kaigo-center.or.jp/report/2021r01_chousa_01.html)
熊本県では、「諸手当の導入・引き上げ」「一時金支給」「基本給引き上げ」すべての項目で、全国平均を上回っています。基本給の引き上げを行う都道府県は30%台がほとんどを占めている中で、熊本県では42.8%となっていることから、 介護職員の給与水準アップに力を入れる事業所が多いことがうかがえます。
下記は、九州・沖縄地方における介護職員等特定処遇改善加算の対応状況をまとめた表です。
【九州・沖縄地方】介護職員等特定処遇改善加算の算定及び対応状況(令和2年度) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
職員全体の処遇改善 | 経験・技能のある介護職員の処遇改善 | 介護職員全体の処遇改善 | |
全国平均 | 38.5 | 31.4 | 29.2 |
福岡県 | 36.8 | 31.1 | 31.1 |
佐賀県 | 36.8 | 31.6 | 31.6 |
長崎県 | 44.9 | 31.9 | 21.7 |
熊本県 | 49.0 | 27.9 | 22.1 |
大分県 | 44.4 | 27.8 | 25.0 |
宮崎県 | 47.2 | 26.4 | 26.4 |
鹿児島県 | 48.9 | 30.4 | 18.5 |
沖縄県 | 53.1 | 20.4 | 24.5 |
(出典:公益財団法人介護労働安定センター「―令和2年度 介護労働実態調査結果について―」/http://www.kaigo-center.or.jp/report/2021r01_chousa_01.html)
熊本県では、職員全体の処遇改善を行う事業所の割合が約50%となっており、経験・職種に関係なく処遇改善を行う事業所が多いと言えます。
熊本県には、「良質な人材の確保が難しい」「人材確保のために十分な給与を支払えない」と悩む事業所が少なくありません。職員全体の処遇改善を進めて、総合的に人材の確保を進めていると考えられます。
(出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和2年度介護労働実態調査事業所における介護労働実態調査(熊本県抜粋データグラフ集)」
/http://www.kaigo-center.or.jp/shibu/kumamoto/927f6c5ed1eec61684ca80771540db236377119b.pdf)
3. 熊本県が実施する介護施策の状況
熊本県では、介護職の離職率が高いことを受けて、さまざまな施策を打ち出しながら人材確保を進めています。具体的には「介護職員のキャリアアップ支援」「処遇改善の推進」などを行い、人材確保に取り組んでいる状況です。
介護職員のキャリアアップ支援では専門性を高める研修の実施、処遇改善の推進では各処遇改善加算の新規取得・上位区分の取得などを支援しています。また、介護ロボット・ICTの導入を進め、業務負担の軽減なども推し進められています。
(出典:熊本県「第8期熊本県高齢者福祉計画・介護保険事業支援計画(長寿・安心・くまもとプラン)を策定しました」/
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/32/92011.html)
熊本県では、介護職の状況を把握しながら労働環境の改善を進めているため、今後も働きやすい職場が増えるでしょう。
3-1. 【熊本県】介護職員処遇改善加算を取得している傾向にある施設は?
厚生労働省の「介護給付費等実態統計」では、介護職員処遇改善加算の取得状況を施設・サービス別に公表しています。ここでは、加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を合わせた取得率が80%以上で、熊本県にある施設・サービスを紹介します。
認知症対応型通所介護 |
---|
認知症対応型通所介護は、認知症を患った利用者を専門的にケアするサービスです。日中にサービスを提供するため、夜勤はほとんどありません。利用者の送迎業務もあることから、普通自動車運転免許の保有が応募条件に挙げられていることもあります。 |
介護予防短期入所生活介護 |
---|
介護予防短期入所生活介護は、利用者ができる限り自宅で日常生活を送り続けられるように、食事や入浴介助・機能訓練などを行うサービスです。利用者は30日間と短い期間しか入所できないため、職員には利用者の情報を素早く理解することが求められます。 |
転職先を探す際は、気になる職場で介護職員処遇改善加算や介護職員等特定処遇改善加算の取得が行われているのかを、各職場の公式ホームページでチェックしましょう。 また、転職先を選択する上で給与を重視したい人は、「マイナビ介護職」をご利用ください。マイナビ介護職では、給与水準が高い求人・各種手当が豊富な求人などを数多く掲載しています。また、求職者様に代わって条件面の交渉を行うサービスも提供しています。
まとめ
介護職には、すべての職員を対象とした「介護職員処遇改善加算」と、経験・技能を有した職員を対象とした「介護職員等特定処遇改善加算」があります。熊本県における各処遇改善加算の取得状況は、全国平均より遅れを取っている状況です。しかし、処遇改善加算の新規取得・上位区分の取得を支援する取り組みを行っているため、熊本県における各処遇改善加算の取得率は将来的に上昇することが期待できます。
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※当記事は2021年11月現在の情報をもとに作成しています
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