【長野県】介護職員処遇改善加算の取得状況は?介護施策の状況も解説
長野県は全国でもトップクラスの長寿県です。総人口に対して65歳以上の人口の割合を示す高齢化率は令和3年10月時点で32.7%に上り、今後、約20年間は高齢化率が上昇し続ける見込みです。
(出典:長野県「長野県の年齢別人口をお知らせします(令和3年10月1日現在)」
/https://www.pref.nagano.lg.jp/tokei/tyousa/documents/nenrei0310.pdf)
(出典:長野県「第8期長野県高齢者プラン」
/https://www.pref.nagano.lg.jp/kaigo-shien/kenko/koureisha/shisaku/plan8/documents/gaiyou.pdf)
高齢化率の上昇に伴い、介護職における人材の確保や定着率の向上がますます重要となります。介護職に携わる人材の確保を行うために、長野県をはじめ各都道府県では処遇改善加算の取得を進め、給与水準の改善を進めています。
当記事では、長野県における介護職員処遇改善加算の取得状況・介護施策の状況を解説するため、介護職に転職することを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
※本文では、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)のデータにも触れておりますが、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)は令和3年3月31日で廃止されており、令和3年3月31日時点で算定している事業所については、令和4年3月31日までの算定です。
そのため、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)のデータは参考値としてご参照ください。
目次
1. 介護職員処遇改善加算とは?
介護職を対象とした処遇改善加算には、「介護職員処遇改善加算」と「介護職員等特定処遇改善加算」の2種類があり、対象となる介護職員や加算のしくみに違いが見られます。それぞれの特徴は下記の通りです。
・介護職員処遇改善加算
介護職員処遇改善加算は、キャリアパス要件と職場環境等要件の算定要件を満たした数に応じて、加算(Ⅰ)~(Ⅲ)の3つに区分されています。加算率は介護サービスの種類によって異なり、「訪問介護」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」などが高く設定されています。転職をする際は、介護職員処遇改善加算の取得状況だけでなく、サービス区分ごとの加算率も比較しましょう。
・介護職員等特定処遇改善加算
介護職員等特定処遇改善加算は、令和元年10月に開始された制度です。介護職員全般を対象にした介護職員処遇改善加算とは違い、介護職員等特定処遇改善加算は基本的に勤続年数10年以上の介護福祉士を対象としています。各職場に最低1人は、月額8万円相当の処遇改善を行った職員、もしくは年収440万円以上の職員を配置することが定められています。
1-1. 介護職員処遇改善加算における平均給与の推移
厚生労働省の調査によると、令和2年2月時点で介護職員処遇改善加算を取得している事業所で正社員として働く介護職員の平均給与は315,850円です。前年同月にあたる平成31年2月は300,120円となっており、介護職員処遇改善加算を取得している事業所における、令和2年2月の平均給与は15,730円の増加となりました。
また、非常勤で働く介護職員の平均給与も増えています。令和2年2月の平均給与は112,500円、平成31年2月は106,750円であり、1年間で5,750円アップしています。つまり、介護職員の平均給与は雇用形態に関係なく増加している状況です。
上位区分の介護職員処遇改善加算を取得する事業所が増えれば、さらに介護職の給与水準は上昇するでしょう。
(出典:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)」 /https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000689849.pdf)
2. 長野県における介護職員処遇改善加算の取得状況
厚生労働省によると、令和2年度までに介護職員処遇改善加算を取得した事業所は全国平均で90%以上に上ります。一方で、介護職員等特定処遇改善加算の取得率は66.4%と、全国的に介護職員処遇改善加算より取得状況が遅れています。ただし、介護職員等特定処遇改善加算は令和元年に施行されたばかりの制度であることから、将来的には介護職員処遇改善加算と引けを取らない取得率になるでしょう。
ここからは、全国平均及び近隣県と比較しながら、長野県における介護職員処遇改善加算の取得状況を説明します。
2-1. 【厚生労働省】介護給付費等実態統計をもとにした取得状況
下記は、長野県を含む北陸・甲信越地方における介護職員処遇改善加算の取得状況を、全国平均と併せて表にまとめた表です。なお、表中の数値は、厚生労働省の「介護給付費等実態統計」をもとにしています。
【北陸・甲信越地方】介護職員処遇改善加算の取得状況(令和3年1月サービス提供分) 単位(%) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) | 加算(Ⅲ) | 加算(Ⅳ) | 加算(Ⅴ) | 合計 | |
全国平均 | 80.0 | 7.1 | 5.3 | 0.2 | 0.3 | 92.9 |
新潟県 | 82.0 | 7.2 | 7.1 | 0.2 | 0.1 | 96.5 |
富山県 | 86.7 | 3.5 | 4.7 | 0.0 | 0.1 | 95.0 |
石川県 | 88.9 | 3.5 | 2.0 | 0.2 | 0.1 | 94.6 |
福井県 | 81.0 | 6.6 | 4.4 | 0.1 | 0.9 | 92.9 |
山梨県 | 78.8 | 6.8 | 4.7 | 0.6 | 0.0 | 91.0 |
長野県 | 81.4 | 6.5 | 4.3 | 0.1 | 0.3 | 92.6 |
(引用:東京都福祉保健局「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」/https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/shogu/R3_shoguu.files/jirei_torikumi.pdf/引用日2022/3/2)
※加算(Ⅳ・Ⅴ)については、令和3年3月末時点で同加算を算定している事業者について、1年の経過措置を設けた上で、令和2年度で廃止されています。
長野県における取得状況の合計値は、北陸・甲信越地方の各県と比較するとやや低くなっていますが、全国平均とほぼ同水準です。合計値にまだ伸び幅があるため、長野県では今後も介護職の給与水準がアップするでしょう。
下記は、北陸・甲信越地方における介護職員等特定処遇改善加算の取得状況をまとめた表です。
【北陸・甲信越地方】介護職員等特定処遇改善加算の取得状況(令和3年1月サービス提供分) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) | 合計 | |
全国平均 | 32.0 | 34.3 | 66.4 |
新潟県 | 49.5 | 23.7 | 73.1 |
富山県 | 46.5 | 29.8 | 76.3 |
石川県 | 50.4 | 30.3 | 80.7 |
福井県 | 46.2 | 25.9 | 72.1 |
山梨県 | 28.2 | 37.8 | 66.0 |
長野県 | 41.0 | 28.5 | 69.5 |
(引用:東京都福祉保健局「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」/https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/shogu/R3_shoguu.files/jirei_torikumi.pdf/引用日2022/3/2)
介護職員処遇改善加算とは違い、長野県における介護職員等特定処遇改善加算の合計値は全国平均を上回っています。中でも、加算(Ⅰ)の取得率は全国平均を10%近く上回る高さです。
北陸・甲信越地方では、介護職員等特定処遇改善加算の取得を進める県が多く、地方内で見ると、長野県の取得率は低くなっています。しかし、全国的には介護職員等特定処遇改善加算の取得率が60%を下回る都道府県も複数あるため、長野県は取得状況がよい自治体と言えます。
2-2. 【公益財団法人介護労働安定センター】介護労働実態調査結果をもとにした対応状況
公益財団法人介護労働安定センターとは、介護に関わる事業者や分野全般を支援する団体です。ここでは、同センターが介護保険サービスを実施する18,000事業所に対して実施した「介護労働実態調査」の結果をもとにした対応状況を説明します。
下記は、全国平均と北陸・甲信越地方における介護職員処遇改善加算の対応状況をまとめた表です。
【北陸・甲信越地方】介護職員処遇改善加算の算定及び対応状況(令和2年度) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
諸手当の導入・引き上げ | 一時金支給 | 基本給引き上げ | |
全国平均 | 61.6 | 57.6 | 35.3 |
新潟県 | 61.1 | 51.1 | 38.2 |
富山県 | 61.6 | 54.7 | 41.9 |
石川県 | 60.9 | 51.7 | 31.0 |
福井県 | 62.7 | 52.2 | 34.3 |
山梨県 | 48.4 | 54.8 | 25.8 |
長野県 | 61.4 | 56.7 | 44.1 |
(出典:公益財団法人介護労働安定センター「―令和2年度 介護労働実態調査結果について―」/http://www.kaigo-center.or.jp/report/2021r01_chousa_01.html)
長野県における介護職員処遇改善加算の対応状況は、「諸手当の導入・引き上げ」と「一時金支給」が全国平均や北陸・甲信越地方と同水準となっています。一方で、「基本給引き上げ」は長野県が際立って高い数値です。基本的に、賞与や退職金は基本給の金額に応じて決まるため、基本給引き上げの対応状況が高い点は、長崎県で働く介護職員のメリットと言えます。
下記は、全国平均と北陸・甲信越地方における介護職員等特定処遇改善加算の対応状況をまとめた表です。
【北陸・甲信越地方】介護職員等特定処遇改善加算の算定及び対応状況(令和2年度) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
職員全体の処遇改善 | 経験・技能のある介護職員の処遇改善 | 介護職員全体の処遇改善 | |
全国平均 | 38.5 | 31.4 | 29.2 |
新潟県 | 46.3 | 17.5 | 36.3 |
富山県 | 40.3 | 30.6 | 29.0 |
石川県 | 45.9 | 24.3 | 27.0 |
福井県 | 47.9 | 29.2 | 22.9 |
山梨県 | 40.9 | 40.9 | 18.2 |
長野県 | 41.9 | 38.7 | 18.3 |
(出典:公益財団法人介護労働安定センター「―令和2年度 介護労働実態調査結果について―」/http://www.kaigo-center.or.jp/report/2021r01_chousa_01.html)
長野県における「職員全体の処遇改善」や「経験・技能のある介護職員の処遇改善」の数値は、全国平均を約3~7%上回っています。特に、「経験・技能のある介護職員の処遇改善」は北陸・甲信越地方でトップクラスの高さで、対象の介護職員は介護職員等特定処遇改善加算の恩恵を受けやすいでしょう。
ただし、長野県の「介護職員全体の処遇改善」は、全国平均を10%以上下回る結果となっており、改善の余地を残しています。
3. 長野県が実施する介護施策の状況
長野県では、「長野県高齢者プラン」を数年ごとに作成し、県民の高齢化に対応する各種事業を計画・実施しています。市町村が地域包括ケア体制を構築する中で、継続的な介護予防の推進や介護職員の確保、雇用労務管理の整備は重要な課題です。
また、長野県には介護分野における人材の確保や育成に主体的に取り組む事業所を認証する、「信州福祉事業所認証・評価制度」があります。長野県は同制度を積極的に推進しており、職場環境の向上や介護職員の処遇改善に努めています。
(出典:長野県「第8期長野県高齢者プラン(2021年度(令和3年度)~2023年度(令和5年度))」/https://www.pref.nagano.lg.jp/kaigo-shien/kenko/koureisha/shisaku/plan8/plan.html)
(出典:信州福祉・介護のひろば「信州福祉事業所認証・評価制度の概要」/https://fukushi-nagano.jp/officesearch/)
3-1. 【長野県】介護職員処遇改善加算を取得している傾向にある施設は?
厚生労働省による「介護給付費等実態統計」で、介護職員処遇改善加算における加算(Ⅰ)~(Ⅴ)の合計値が80%以上かつ、長野県にある施設・サービスを紹介します。
夜間対応型訪問介護 |
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夜間対応型訪問介護は、訪問介護員が夜間帯に利用者の自宅を訪問するサービスです。サービスの種類は「定期巡回」と「随時対応」の2つがあります。定期巡回では、利用者の安否確認や排せつの介助などを行い、随時対応では利用者の体調が急変した際に介助したり、救急車を呼んだりします。 |
地域密着型通所介護 |
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地域密着型通所介護は、自宅で自立した生活を送り続けられるように利用者の心身機能を維持したり、利用者の家族にかかる介護負担を軽減したりするサービスです。職員は利用者の送迎や、食事・入浴といった日常生活の支援、身体の機能訓練などの業務を行います。 |
転職する際は、介護職員処遇改善加算を取得しているか否かを各職場の公式サイトなどで確認しましょう。
また、年収アップを目的に転職する人は「マイナビ介護職」にご相談ください。マイナビ介護職では、月収30万円以上の求人・高収入を得られる管理職の求人などを多数掲載しています。
まとめ
長野県における介護職員処遇改善加算の取得状況は、全国平均とほぼ同水準です。一方で、介護職員等特定処遇改善加算は全国平均を上回っており、特に、加算(Ⅰ)は9ポイント高い数値です。
また、長野県は地域包括ケアを構築するとともに、介護分野における人材の確保や育成に取り組む事業所の認証制度を設けるなど、さまざまな取り組みを行っています。今後も、給与を含めた介護職員の労働環境の改善に期待が持てます。
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※当記事は2021年11月現在の情報をもとに作成しています
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