介護士の離職多数で、気づくと派遣ヘルパーが8割を占めていた有料老人ホーム

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「社員は次々と辞め、いつの間にか周囲は派遣スタッフばかり……」。そうした状況を目の当たりにした、もしくは聞いたことがあるという介護士は、意外と多いのではないでしょうか。
有料老人ホームに勤める橋本万梨子さん(仮称:26歳)は、入社してから1年で全職員の約8割が派遣スタッフに変わっていたという体験をしています。橋本さんの入社直後は派遣のスタッフ数は2割に満たなかった施設に、いったい何が起こったのでしょうか。

    派遣ヘルパーに頼る現状

    なぜ、直接雇用の介護職が激減したのか。橋本さんの職場の問題の前に、まずは、介護業界全体の現状をおさらいしておきましょう。

    介護職全体の離職率はそれほど高くない

    介護労働安定センターが発表した「平成29年度 介護労働実態調査」によると、介護職の離職率は16.2%。ただ、厚生労働省「平成29年 雇用動向調査」によると、主要産業の全体の離職率は14.9%。この結果から、介護職だけが突出して離職率が高いわけではないことがわかります。ではなぜ派遣社員が多くなりがちなのでしょうか?

    受け皿は広いが介護職正規職員採用率は約15%

    離職率は約16%と低下傾向にあるものの、1年間に100名採用しても16人が離職しています。言い換えれば、5~6名の採用に成功しても、1人は離職しているのが現状です。そうなると、採用に力を入れたいところですが、適正な人材を確保しにくいという現状も介護業界には存在します。2018年に内閣府が公表した「有効求人倍率(介護分野)の推移」によると、2010年の1.31倍から2017年には3.5倍まで上昇しています。ところが、2017年の1年間における正規雇用者の採用率は15.1%と低く、パート職員の25%を大きく下回りました(公益財団法人 介護労働安定センター 平成29年度 「介護労働実態調査」の結果より )。

    つまり、介護職員の離職率は年々、低下傾向にあるものの、募集をかけても多くの採用が見込めません。採用率の間口が狭いなか、どうにか5名を採用したところで、1人が辞めていくため、人材を育てにくい環境にあります。そうした状況が、派遣の力に頼らざるを得ないことと関係しているのかもしれません。

    派遣と直接雇用の違い

    正社員の採用が見込めない場合、介護施設は派遣会社を活用して、人員を補います。手軽に依頼できる派遣会社にはさまざまなメリットがありますが、介護施設で派遣を利用する際には、注意するべき部分も。

    派遣を利用するメリット

    派遣会社は登録スタッフが多くいるため、直接雇用で一定数の応募者を待って選考するより早く労働者を雇うことができます。また、雇った派遣社員が社風に合わなかった場合なども雇用期間が決まっていたり、代理となれるスタッフがいることが多いため、本人が辞めたくなったときに欠員を出すことなく交代してもらうことが容易です。

    また、派遣スタッフは直接雇用ではないため、採用にかかる費用や教育費を軽減できます。派遣会社は派遣スタッフの社会保険や雇用保険も負担しますし、通常即戦力となりやすい経験者や類似した職業だった人を派遣するため、新人より教育費はかかりません。また、直接雇用の正社員とは異なり、派遣スタッフに賞与が支給されるケースも少ないといわれています。しかし派遣元に支払う金額が発生するため、結果として、直接雇用より高コストになることはあります。

    介護事業所で派遣会社を利用する際注意したい点

    派遣社員を活用すれば、仕事の生産性の向上も期待できます。

    例えば事務仕事では、データ入力などの定型業務を派遣スタッフに任せ正社員がほかの業務に集中するパターンがあります。データ量が膨大になればなるほど、入力時間も増えていくため、定型業務に派遣スタッフを活用するケースは一般的です。

    とはいえ、介護の現場でそれが通用するかといえば、ケースバイケースといえます。介護の仕事は、高齢者や体の不自由な人を支援する「人的サービス」なので、一般企業における派遣導入のメリットを鵜呑みにはできません。本来の介護サービスに定型業務はないからです。派遣の場合業務開始前に業務範囲を双方合意の上で契約するので、途中から職場の状況が変わった場合にも新しい業務を担当してもらいにくい場合があります。

    また、正社員ほどの長期雇用を前提としていないため、長い目で見る必要がある大きな仕事は頼みにくいという制約もあります。

    介護事業所が8割派遣社員になった原因は、費用対効果の格差?

    橋本さんの話をさらに聞くと、有料老人ホームで派遣スタッフが8割を超えるほど正社員が辞めてしまった主な原因が見えてきました。それは、直接雇用者をサポートする業務が多い派遣スタッフのほうが、正社員より高時給だったことでした。

    介護現場で派遣にキツイ仕事をさせない風潮

    橋本さんの職場では、派遣スタッフは、正社員をはじめとする直接雇用者のサポート業務を任せられます。具体的には、入浴や食事の誘導介助、施設内でのレクリエーション時の見守り、入居者の話相手になる、居室清掃などが主な業務です。

    一方、正社員は入浴や食事の介助、外出レクリエーションに同行する、排泄介助など、コアな介助を担当します。また、派遣スタッフは会議に参加しないため、外出レクやイベントの企画ほか、ケアカンファレンスなどにも携わることはなかったようです。

    正社員は派遣以上の業務をこなすも時給が安かった

    橋本さんの給与は、手取りで月額25万円です。1カ月あたりの出勤日数が20日のため、単純に日給換算すると12,500円になります。この日給を8時間労働で換算すれば、時給は約1,560円ですが、派遣スタッフに聞いた時給は1,700円と正社員を上回っていました。ただし、派遣スタッフの場合は、保険や所得税を引かれていない状態での時給設定のため、月手取り額では正社員を下回るでしょう(20日出勤/月を想定)。

    とはいえ、直接時給を比較できてしまったことや、橋本さんと派遣スタッフの手取り額が大きく開くことはないわりに、残業や急な対応が必要になった仕事などを多く割り当てられた直接雇用者たちの不満が離職につながっていったそうです。

    橋本さんは、「派遣スタッフ同士による情報共有が盛んで『あのホームは派遣が多いから馴染みやすいよ』というような口コミが広がったことも8割派遣という現状につながったのでは」とも語っていました。

    介護施設で派遣を導入する際は、直接雇用者との兼ね合いが大切です。派遣社員の時給設定と業務の内容は併せて慎重に取り決める必要があります。

    文:鹿賀大資 介護ライター。施設介護で10年のキャリアを持つ現役介護福祉士。

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