介護業界の給料は今後上がる?処遇改善加算について解説

介護業界は、高齢化の進展に伴って需要が急増している分野であり、今後も多くの人材が求められています。しかし一方で、「介護職は給料が低い」というイメージを持たれることも少なくありません。
実際には、介護業界の賃金は年々着実に上昇しています。また、資格取得や勤続年数に応じた昇給制度、夜勤手当などを活用することで、個人の努力によって収入を高める方法も多々あります。
当記事では、介護業界における最新の給与実態と、今後の展望、処遇改善制度の詳細、給料を上げるための具体的な方法などを幅広く解説します。これから介護職を目指す方、あるいは現場で働きながらキャリアアップを検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
- 5. 介護業界の給料が低いと言われる理由は?
- 5-1. 介護職の専門性が知られていないため
- 5-2. 介護報酬に上限があるため
- 5-3. 施設自体が赤字のため
- 5-4. 内部留保が多いため
- 5-5. 非常勤で働く方が多いため
- 6. 介護業界で働く方が給料を上げるには?
- 6-1. 夜勤の回数を増やす
- 6-2. 勤続年数を重ねる
- 6-3. 資格を取得する
- 6-4. 管理職を目指す
- 6-5. 相談業務に携わる職種を目指す
- 6-6. 転職する
1. 介護業界の給料水準は?
介護業界における給料水準は、職種によって異なりますが、全体としては年々上昇傾向にあります。厚生労働省が公表しているデータによると、たとえば介護職員の平均月給は、2021年には約30万円(300,990円)でしたが、2024年には33万円超(338,200円)にまで上昇しています。これは3年間で約3万7,000円の増加であり、処遇改善政策の影響が反映された結果と言えます。
| 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | |
|---|---|---|---|---|
| 介護職員 | 300,990円 | 317,540円 | 324,240円 | 338,200円 |
| 看護職員 | 355,400円 | 373,750円 | 375,260円 | 384,620円 |
| 生活相談員・支援相談員 | 327,650円 | 342,330円 | 340,150円 | 353,950円 |
| 理学療法士、作業療法士、 言語聴覚士又は 機能訓練指導員 |
342,960円 | 354,770円 | 350,190円 | 362,800円 |
| 介護支援専門員 | 348,030円 | 361,770円 | 363,760円 | 375,410円 |
| 事務職員 | 295,800円 | 307,960円 | 305,960円 | 317,620円 |
| 調理員 | 249,090円 | 260,090円 | 260,140円 | 272,240円 |
| 管理栄養士・栄養士 | 301,930円 | 316,320円 | 311,810円 | 323,810円 |
(出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/22/dl/r04gaiyou.pdf)
(出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果(案)」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001457113.pdf)
介護業界全体の給与は着実に改善されていますが、まだ他業種と比較すると高い水準とは言えません。それでも、国による処遇改善加算の取り組みや賃上げ政策により、今後も継続的な改善が期待されています。
また、給与水準は、勤続年数や取得資格、勤務形態によっても大きく左右されるため、個人の努力によってさらに待遇を高めることも可能です。
2. 介護業界の処遇改善加算とは?
介護業界では、人材不足の解消や職員の定着を図るために、処遇改善を目的とした加算制度が導入されています。処遇改善加算とは、事業所が一定の条件を満たすことで、介護報酬に上乗せして加算を受け取れ、その分を職員の給与などに充てる仕組みです。
ここでは、処遇改善加算の詳細について解説します。
2-1. これまでの処遇改善加算
介護業界では、職員の賃金改善や人材確保を目的として、これまでに3つの処遇改善加算制度が導入されてきました。1つ目は「介護職員処遇改善加算」で、賃金水準の底上げを目的とした基本的な加算です。2つ目は「介護職員等特定処遇改善加算」で、勤続年数の長い介護福祉士など専門性の高い人材への重点的な処遇改善を図るものです。3つ目の「介護職員等ベースアップ等支援加算」は、近年の物価上昇に対応するため、給与全体の底上げを支援する加算です。
これら3つの加算制度は、2025年度(令和7年度)から「介護職員等処遇改善加算」として一本化されました。制度の一本化により、要件の再編と加算率の引き上げが行われ、現場の処遇改善がより一層強化されていく見込みです。
(出典:厚生労働省「「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」
/
https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/A1_leaflet.pdf)
2-2. 処遇改善加算の一本化
2025年度(令和7年度)から、介護業界における処遇改善加算は一本化され、「介護職員等処遇改善加算(新加算)」として再構成されます。また、新加算では2024年度に2.5%、2025年度には2.0%のベースアップを目的として、賃上げ加算が引き上げられています。
・加算Ⅰ
加算Ⅰは最も高い加算率(24.5%)が適用される区分です。キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴすべてを満たす必要があります。特に「介護福祉士の配置」や「年収440万円以上の職員配置」「昇給制度の整備」など、職員の処遇を多角的に改善する体制が求められます。
・加算Ⅱ
加算Ⅱでの加算率は22.4%で、加算Ⅰに比べて一部の要件が緩和されますが、キャリアパス要件Ⅰ~Ⅳ、および月額賃金改善要件、職場環境等要件を満たす必要があります。
・加算Ⅲ
加算Ⅲの加算率は18.2%です。キャリアパス要件のうちⅠ~Ⅲを満たし、昇給の仕組みや研修制度を導入しているかなどが判断されます。年収要件(440万円以上)の適用は求められませんが、職員の育成や待遇改善の体制整備は必須です。
・加算Ⅳ
加算Ⅳは最も要件が緩やかで、加算率は14.5%です。キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ、月額賃金改善要件Ⅰ、職場環境等要件の最低限を満たすことで算定できます。制度導入初期や人員確保が難しい小規模事業所でも取得しやすい構成です。
(出典:厚生労働省「介護職員の処遇改善:TOP・制度概要」
/
https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/)
(出典:厚生労働省「処遇改善加算がさらに取得しやすくなります!」
/
https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/r7_index_2_1.pdf)
3. 処遇改善加算の要件
介護職員等処遇改善加算を取得するためには、事業所が一定の基準を満たしていることが必要です。具体的には「キャリアパス要件」「月額賃金改善要件」「職場環境等要件」の3つが設定されており、それぞれの達成状況に応じて取得できる加算区分が異なります。
職員の待遇改善と事業運営の質を高めるためにも、これらの要件を的確に理解し、基準を満たせるよう調整しましょう。
3-1. キャリアパス要件
キャリアパス要件は、介護職員の能力向上やキャリア形成を支援するために必要な仕組みを整備しているかどうかを問う要件です。要件はIからⅤまで存在しますが、基本的な柱となるのはⅠ~Ⅲの3要件です。
| キャリアパス要件Ⅰ | 職位や職責、職務内容に応じた任用要件と、それに基づいた賃金体系の整備を求めるものです。職員が自らの成長目標を持って働ける環境を整えるために必要です。 |
|---|---|
| キャリアパス要件Ⅱ | 職員の資質向上のために研修計画を策定し、その実施や研修機会の提供を求める要件です。継続的な学習機会があることで、職員の専門性やモチベーションが高まります。 |
| キャリアパス要件Ⅲ | 経験や資格に応じて昇給する仕組み、または一定の基準で定期的に昇給を判定する制度を求める要件です。職員は長く働くほど適正に評価される環境が整い、離職防止にもつながります。 |
加えて、要件Ⅳ(年収440万円以上の介護職員を1名以上配置)や要件Ⅴ(一定割合以上の介護福祉士の配置)など、より高い加算区分では厳しい条件も課されますが、小規模事業所などには一部免除措置が適用される場合もあります。
キャリアパス要件は、単なる書類上の整備だけでなく、職員への周知徹底が求められています。制度の意図をしっかり理解し、日々の運営に生かすことが重要です。
(出典:厚生労働省「「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」
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https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/A1_leaflet.pdf)
3-2. 月額賃金改善要件
月額賃金改善要件とは、処遇改善加算で得た資金のうち、一定割合を職員の「毎月の給与(基本給や固定手当)」に充てることを求める要件です。これにより、一時的なボーナスではなく、継続的かつ安定的な処遇改善を図ることが狙いとされています。
月額賃金改善要件には下記の2種類があります。
| 要件Ⅰ |
新加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を、月給ベースで支給するという要件です。 処遇改善で支給された金額は、賞与や一時金に偏らせず、毎月の給与に反映する必要があります。 |
|---|---|
| 要件Ⅱ |
前年度と比較して、処遇改善加算相当のうち3分の2以上を新たな月給引き上げに充てるという要件です。 現行のベースアップ等支援加算に近い考え方で、物価上昇や人材確保の観点から、給与の恒常的な増額を目指します。 |
加算Ⅰ~Ⅳのいずれを取得する場合でも原則として適用される要件なので、多くの事業所が対応を求められる項目です。一時金支給に依存していた事業所では、月給への切り替えや賃金規程の見直しが必要となります。
(出典:厚生労働省「「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」
/
https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/A1_leaflet.pdf)
3-3. 職場環境等要件
職場環境等要件は、給与以外の面で職員の働きやすさや定着率向上につながる取り組みを実施しているかを問う要件です。処遇改善は賃金面だけでなく、労働環境や制度面からのアプローチも重要であるという考えに基づいています。
具体的には、以下の6つの区分において、それぞれの取り組みを行うことが求められます。
| 入職促進に向けた取り組み | 法人や事業所の理念や人材育成方針を明確にし、それを実現するための制度を整えることが求められます。 |
|---|---|
| 資質向上やキャリアアップに向けた支援 | 介護福祉士の資格取得を目指す職員への研修受講支援や、喀痰吸引、認知症ケア、マネジメント研修などの専門研修の機会提供が必要です。 |
| 両立支援と多様な働き方の推進 | 育児や介護と両立できるよう、短時間正職員制度や非正規職員から正規職員への転換制度、有給休暇の取得しやすい環境づくりが必要とされます。あわせて、福利厚生やメンタルヘルスに関する相談体制の充実も大切な要素です。 |
| 腰痛を含む心身の健康管理 | 介護機器の導入による身体的負担の軽減、短時間勤務者を含めた健康診断の実施、管理者への雇用管理研修、事故・トラブル対応のマニュアル整備などが該当します。 |
| 生産性向上のための業務改善の取り組み | ICT機器や見守りセンサーの導入、役割分担の明確化、5S活動の推進、業務手順書の整備などにより、業務の効率化と情報共有を進めることが求められます。 |
| やりがい・働きがいの醸成 | 職員間の円滑なコミュニケーションを通じた職場環境の改善、地域との交流、ケア方針や法人理念の学習機会の提供、好事例や利用者さんからの感謝の言葉の共有など、職員のモチベーション向上につながる取り組みが重視されます。 |
新加算Ⅰ~Ⅳを取得するためには、各区分で1つ以上の取り組みを行う必要があり、加算Ⅰを取得する場合はさらに充実した内容が求められます。
職場環境等要件は、職員のモチベーションや離職防止に直結する部分です。継続的に内容を見直し、現場の声を反映した取り組みを積極的に展開することが、長期的な人材確保にもつながります。
(出典:厚生労働省「「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」
/
https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/A1_leaflet.pdf)
(出典:厚生労働省「処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)」
/
https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/A3_1.pdf)
4. 今後の介護業界の給料は上がる?
人手不足が深刻化する介護業界では、職員の確保と定着が大きな課題となっています。そのため、国を中心に処遇改善の取り組みが継続的に進められており、今後も給料水準の引き上げや働きやすい職場環境の整備が期待されています。
4-1. 介護業界の賃上げが行われている理由
介護業界で賃上げが進められている最大の理由は、深刻な人手不足と急速な高齢化に対応するためです。特に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」の影響で、介護ニーズが急増すると予測されています。一方で、生産年齢人口は減少を続けており、現役世代による介護の担い手は不足します。
こうした状況を受け、国は介護人材の確保と定着を図るため、介護職員処遇改善加算の拡充や、制度の一本化による加算率の引き上げを実施しています。処遇改善は、介護職の魅力を高め、多様な人材の参入を促す最重要課題とされています。
長期的視点からも、介護職の処遇改善と給与水準の引き上げは、持続可能な介護制度の基盤づくりとして必要不可欠な施策となっています。
5. 介護業界の給料が低いと言われる理由は?
介護職は社会にとって欠かせない仕事でありながら、「給料が低い」と言われることが少なくありません。実際、身体的・精神的にハードな業務内容に対して、給与水準が見合っていないと感じる人も多くいます。
ここでは、介護業界の給料が上がりにくいとされる代表的な5つの理由を解説します。
5-1. 介護職の専門性が知られていないため
介護職は無資格・未経験でも働ける職場が多く、「誰にでもできる仕事」と見なされがちです。確かに、介護職員初任者研修や実務者研修などの修了があれば、身体介助や生活支援といった実務をこなすことは可能ですが、現場では認知症ケアや医療的ケア、緊急時の判断など、幅広い知識と経験が求められます。
特に介護福祉士は、国家資格として高い専門性を有しており、利用者さんの生活の質を支える重要な役割を担っています。それにもかかわらず、世間的には医師や看護師のような高度専門職と比較され、介護職の専門性が過小評価されている傾向があります。
こうした認識のギャップが、介護職の賃金が適切に評価されない要因の1つです。専門職としての理解が広がれば、給与水準の見直しにつながる可能性もあるでしょう。
5-2. 介護報酬に上限があるため
介護業界では、給与水準を自由に設定できないという制度上の制約があります。介護施設や事業所の主な収入源である「介護報酬」は、介護保険制度に基づき、国(厚生労働大臣)が定めた基準額によって決まります。そのため、施設側が自らの判断で大幅な昇給をしたり賞与を出したりすることは難しい状況です。
介護報酬は3年ごとに見直されますが、報酬の引き上げ幅は限定的です。利用者さんが支払うのは原則1割で、残りは保険財源と税金によって賄われるため、国全体の社会保障費の制約も影響を及ぼします。
このように、収入の上限が決まっている構造的な問題が、介護職員の給料が上がりにくい原因となっています。
5-3. 施設自体が赤字のため
介護事業所の中には、経営が厳しく赤字運営に陥っている施設も少なくありません。業界全体として収益構造が不安定であり、人件費の増加に十分対応できていないのが現実です。
施設自体に利益が出ていない状態では、職員の給料を引き上げる余裕がなく、処遇改善が後回しになってしまうケースが多く見られます。経営の安定化と並行して、人材への投資が求められています。
5-4. 内部留保が多いため
介護施設の中には、経営安定を目的に利益を蓄える「内部留保」が多いことが、介護士の給与が上がらない原因の1つと指摘されています。
内部留保は、将来の設備投資や緊急時の運営維持のために必要とされる資金ですが、あまりに蓄積が大きいと、現場職員への還元が不十分になります。利益があるにもかかわらず、それを給与や労働環境の改善に活用していない施設が存在することは、介護職員にとって大きな不満の原因となっています。
介護施設による内部留保の透明化や適正な運用が求められており、今後は職員への分配のあり方が問われる時代に入っています。
5-5. 非常勤で働く方が多いため
介護業界では、非常勤(パート・アルバイト)で働く職員の割合が高いことも、全体の平均給与を押し下げる要因です。非正規雇用の人材は正規職員に比べて勤務時間が短く、昇給や手当の支給も限られる傾向があります。また、評価制度が整っていない事業所では、スキルや経験のある非正規雇用者が正当な処遇が得られないケースもあります。
このように、雇用形態の違いが賃金格差を生み出し、業界全体の給与水準を低く見せている構造的な問題があるのです。今後は、非正規職員への処遇改善や正規登用の拡大がカギとなるでしょう。
6. 介護業界で働く方が給料を上げるには?
介護業界では、制度的な制約により全体の賃金水準が急激に上昇することは難しいとされています。しかしその一方で、働く方自身の工夫や努力によって、個別に給料を上げることは十分に可能です。
ここでは、介護職として給料を上げるために有効な方法について解説します。
6-1. 夜勤の回数を増やす
介護施設で夜勤勤務を行うと、通常の賃金に加えて夜勤手当が支給されるため、月収を増やす手段として効果的です。体力に自信があり、夜間の勤務に抵抗がない方にとっては、夜勤回数を増やすことが収入アップに直結します。
また、夜勤のシフトには「8時間夜勤」と「16時間夜勤」があります。8時間夜勤は回数が多くなる傾向があり、16時間夜勤は勤務時間が長い分、シフト回数が少なくても手当の額は大きくなります。16時間夜勤では夜勤明けと翌日が休みになる場合もあり、まとまった休息を確保しやすいというメリットもあります。
ただし、夜勤は身体に大きな負担がかかるため、自分に合ったリズムで働くことが大切です。夜勤を快適に行うには、食事や睡眠のリズムを整えることが欠かせません。たとえば、夜勤中は消化に良い食事を心がけ、夜勤明けは無理に長時間寝るよりも、軽く仮眠を取って生活リズムを維持すると疲労が蓄積しにくくなります。
さらに、施設選びも夜勤を続けやすくするためのポイントです。夜勤者へのサポート体制が整っている職場や、勤務シフトの調整に柔軟な職場であれば、長く安定して夜勤を続けられるでしょう。夜勤の回数を増やすことは、介護職の方にとって確実な収入源となる手段の1つです。
6-2. 勤続年数を重ねる
介護業界では、同じ職場に長く勤めることで年単位の昇給が期待できる場合が多く、継続勤務が給料アップに直結します。実際、厚生労働省が発表した「令和6年度介護従事者処遇等調査結果」によれば、1年目の職員と20年以上働く職員には月収に約9万円の差があります。
(出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果(案)」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001457113.pdf)
昇給額は事業所によって異なりますが、勤続年数が長くなるとリーダー職や指導役などのポジションを任されることが多くなり、それに応じて給与も上昇します。また、経験や信頼が蓄積されることで、キャリアアップのチャンスも広がり、介護福祉士や管理職への昇格にもつながります。
さらに、長く同じ施設で働くことにより、職場の運営方針や利用者さんの個別ニーズを深く理解できるようになるため、仕事のやりがいも高まりやすくなります。業務への慣れも手伝ってストレスが軽減されるなど、働き続けるメリットは給与面以外にも多く存在します。
もちろん、職場環境が合わない場合は無理に続ける必要はありませんが、職場に満足している場合は勤続による昇給を目指すのも1つの有効な選択肢です。勤続年数を重ねることは、着実な収入アップの基盤を築く手段です。
6-3. 資格を取得する
介護職として収入を上げるためには、資格の取得が有効な手段の1つです。資格を保有することで「資格手当」が支給されるケースが多く、給与水準にも差が出ます。実際、有資格者と保有資格がない方の給与には、下記のような差が発生します。
| 2024年 | |
|---|---|
| 介護福祉士 | 350,050円 |
| 社会福祉士 | 397,620円 |
| 介護支援専門員 | 388,080円 |
| 実務者研修 | 327,260円 |
| 介護職員初任者研修 | 324,830円 |
| 保有資格なし | 290,620円 |
| 全体 | 338,200円 |
(出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果(案)」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001457113.pdf#page=168)
国家資格である介護福祉士の資格を持っていると、保有資格のない方に比べて5万円以上月収が高いというデータがあります。
また、資格を持っていることはスキルの証明にもなり、転職や昇格時にも有利に働きます。特に介護福祉士や認知症ケア専門士などの高度な資格は、業務の幅を広げるとともに、責任ある役職を任されるチャンスにもつながります。
キャリアアップを目指したい方は、下記の資格取得を検討してもよいでしょう。
・初任者研修
介護職の入門資格で、介護の基本知識と技術を習得できます。働きながら取得可能で、受講資格に制限はありません。取得により身体介助などの基本的な介護業務が可能になります。
・実務者研修
介護福祉士の受験に必要な資格で、介護過程や医療的ケアに関する内容も学びます。取得後はより専門的な介護が行えるようになり、昇給やキャリアアップにも有利です。
・介護福祉士
介護職唯一の国家資格で、専門的な知識・技術を生かしてケアの中核を担います。資格取得後は指導や育成業務にも携われ、給与や責任の面でも待遇が向上します。
・認知症ケア専門士
認知症ケアに特化した専門資格で、実務経験3年以上が受験要件です。認知症の人やその家族に対する高度なケア技術と知識を持つ専門職として認定されます。
・認知症介護実践者研修
認知症の症状や心理的理解、介護技術を実践的に学ぶ研修です。施設推薦が必要で、都道府県が実施主体です。修了者は認知症ケアの中心的存在として評価され、職場でも信頼されたり、転職時に有利になったりします。
6-4. 管理職を目指す
介護業界で給与を上げる方法の1つが「管理職への昇格」です。厚生労働省の調査によると、一般職と管理職の月収には約5万円の差があります。
(出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果(案)」
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https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001457113.pdf)
管理職になるには、介護福祉士などの資格に加え、マネジメント能力やリーダーシップ、職員とのコミュニケーション力が求められます。また、施設運営に関する知識やシフト管理、人材育成なども担う重要な役割です。現場経験を積みながら、研修や社内評価制度を活用してキャリアアップを目指すことが大切です。
6-5. 相談業務に携わる職種を目指す
生活相談員や介護支援専門員(ケアマネジャー)といった相談業務に携わる職種は、一般的な介護職よりも平均給与が高くなる傾向があります。収入を上げるために、相談業務へのキャリアアップを目指してもよいでしょう。
相談業務を実施できる職種に就くには、一定の介護経験と所定の資格が必要となるケースが多く、介護職員として経験を積んだ後のキャリアアップに適しています。相談業務は利用者さんとその家族を支えるやりがいのある仕事で、専門性を生かして長期的なキャリア形成を目指せます。
6-6. 転職する
給料アップを目指す上で、より待遇の良い施設への転職も有効な選択肢です。たとえば、処遇改善加算を積極的に導入し、適切に職員へ還元している事業所では、手当や基本給の面で他施設と差がつくことがあります。また、福利厚生やシフト体制、教育制度の充実した環境へ転職すると、働きやすさも向上します。
転職の際には、求人情報だけでなく、施設のホームページや口コミ、職場見学を通じて内部の雰囲気や実際の支援体制を確認することが大切です。加えて、キャリアアドバイザーを活用すれば、自分に合った条件の職場を効率的に探せます。転職は収入面だけでなく、長く安心して働くための重要な手段です。
まとめ
介護業界の給料水準は、過去と比べて確実に改善されてきており、処遇改善加算の導入や制度の一本化によって、現場で働く職員の待遇は着実に向上しています。しかし、他業種と比較すると依然として課題も多く、収入が業務内容に見合っていないと感じる方も少なくありません。
国は加算制度の再構築や加算率の引き上げを進めており、今後も継続的な改善が期待されます。また、夜勤の活用、資格取得、管理職や相談業務へのキャリアアップなど、働く方の工夫や努力によって収入を伸ばすことも十分に可能です。安定した収入と働きやすい職場環境を得るためには、自身に合った職場や働き方を選び、長期的な視野でキャリア形成を図ることが大切です。
介護業界で転職を考えている方は、ぜひマイナビ介護職にご相談ください。マイナビ介護職では非公開求人の紹介も行っているので、介護業界で働く方の理想の職場探しをサポートします。
※当記事は2025年7月時点の情報をもとに作成しています
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