【栃木県】介護職員処遇改善加算の取得状況は?介護施策の状況も解説
日本では将来的にも少子高齢化が続くという見解が強く、介護職は慢性的な人手不足に陥ると予測されています。
栃木県では、少子高齢化による介護需要拡大に対応するため、栃木県高齢者支援計画「はつらつプラン21(八期計画)」のもとで、介護分野の取り組みを活発化させています。はつらつプラン21(八期計画)の中では、介護人材の確保・定着も課題に挙げられており、栃木県は介護職の処遇改善に取り組んでいる最中です。
(出典:栃木県「栃木県高齢者支援計画「はつらつプラン21(八期計画)」/https://www.pref.tochigi.lg.jp/e03/pref/keikaku/bumon/hatsuratsu21-8.html)
当記事では、処遇改善に向けた制度の1つである「介護職員処遇改善加算」と「介護職員等特定処遇改善加算」について、基本情報や栃木県の取得状況などを解説します。
※本文では、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)のデータにも触れておりますが、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)は令和3年3月31日で廃止されており、令和3年3月31日時点で算定している事業所については、令和4年3月31日までの算定です。
そのため、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)のデータは参考値としてご参照ください。
目次
1. 介護職員処遇改善加算とは?
介護職員処遇改善加算とは、介護職の処遇改善と安定した雇用を目的として導入された制度です。
介護職員処遇改善加算は、「介護職員処遇改善加算」と「介護職員等特定処遇改善加算」の2つに分けられます。どちらの制度も、申請にあたっては所定の届出書に必要事項を記載した上で、都道府県ごとに指定されている提出先へ送付します。
それぞれの制度内容は、以下の通りです。
・介護職員処遇改善加算
介護職員処遇改善加算は、平成23年まで運用されていた「介護職員処遇改善交付金」が名称を変えて、平成24年から運用開始された制度です。介護職員処遇改善加算の算定要件には、キャリアパス要件と職場環境要件があり、要件を満たした数によって加算(I)〜加算(Ⅲ)のいずれかが適応されます。
加算率はサービス内容によって違いがあり、取得申請の際は介護職員処遇改善計画書を届け出る必要があります。
・介護職員等特定処遇改善加算
介護職員等特定処遇改善加算は、介護職員処遇改善加算より後の令和元年に運用が開始された制度であり、勤続10年以上の介護福祉士が対象となります。「勤続年数10年以上」の判断は事業所の裁量となっており、自社の評価基準にもとづいて加算対象とすることも可能です。
なお、「職場において最低1人の賃金に月額8万円相当の処遇改善を行う」または「職員の年収を440万円以上にする」ことが加算のルールとなります。
介護職員処遇改善加算を取得している施設は、介護職員処遇改善加算を取得していない施設よりも賃金が高くなりやすい傾向です。転職先を決める際には、介護職員処遇改善加算や介護職員等特定処遇改善加算の取得状況も確認すれば、より好待遇の職場に転職できるでしょう。
1-1. 介護職員処遇改善加算における平均給与の推移
介護職員処遇改善加算の運用開始から数年が経過し、介護職の賃金は上昇しています。厚生労働省が公表している調査結果によると、介護職員の平均給与額は平成31年2月から令和2年2月までで15,730円に増えています。内訳を見ると、基本給3,160円・手当8,090円・一時金4,490円といずれも上昇傾向です。
また、時給制で勤務している非常勤職員の平均給与額は、平成31年2月から令和2年2月にかけて5,750円上昇しています。雇用形態にかかわらず、介護職全体で処遇改善が行われていることがうかがえます。
(出典:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)」/https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000689849.pdf)
※上記データは介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得している事業所のデータです
2. 栃木県における介護職員処遇改善加算の取得状況
介護職員処遇改善加算は全国的に見ても取得が進んでおり、ほとんどの都道府県で取得率が90%を超えています。しかし、介護職員等特定処遇改善加算が運用開始されたのは近年であるため、全国の取得率は60%台と取得が進んでいません。
では、栃木県においては、全国平均や関東地方の他県と比べてどのような取得状況にあるのでしょうか。ここでは、介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算のそれぞれについて、栃木県の取得率・対応状況を解説します。
2-1. 【厚生労働省】介護給付費等実態統計をもとにした取得状況
東京都福祉保健局の「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」を参考に、全国平均と関東地方における介護職員処遇改善加算の取得状況を紹介します。なお、表中の取得率は、厚生労働省の「介護給付費等実態統計」に記載されている数値です。
【関東地方】介護職員処遇改善加算の取得状況(令和3年1月サービス提供分) 単位(%) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) | 加算(Ⅲ) | 加算(Ⅳ) | 加算(Ⅴ) | 合計 | |
全国平均 | 80.0 | 7.1 | 5.3 | 0.2 | 0.3 | 92.9 |
茨城県 | 77.1 | 6.8 | 6.8 | 0.3 | 0.3 | 91.4 |
栃木県 | 76.7 | 10.1 | 6.4 | 0.3 | 0.0 | 93.7 |
群馬県 | 73.2 | 9.2 | 9.5 | 0.3 | 0.6 | 92.7 |
埼玉県 | 82.0 | 7.0 | 4.6 | 0.2 | 0.1 | 93.9 |
千葉県 | 83.2 | 5.3 | 4.0 | 0.2 | 0.1 | 92.9 |
東京都 | 82.6 | 5.6 | 4.6 | 0.1 | 0.2 | 93.0 |
神奈川県 | 86.8 | 5.2 | 2.8 | 0.1 | 0.1 | 95.0 |
(引用:東京都福祉保健局「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」/https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/shogu/R3_shoguu.files/jirei_torikumi.pdf/引用日2022/3/2)
※加算(Ⅳ・Ⅴ)については、令和3年3月末時点で同加算を算定している事業者について、1年の経過措置を設けた上で、令和2年度で廃止されています。
栃木県の取得率は全国平均を上回っており、関東地方で見ると3番目に高い数値となっています。栃木県は、関東地方の都県の中で加算(Ⅱ)の取得率がもっとも高く、2番目に高い群馬県を0.9ポイント上回っている状況です。
下表では、同様に東京都福祉保健局の「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」を参考に、介護職員等特定処遇改善加算の取得状況をまとめています。
【関東地方】介護職員等特定処遇改善加算の取得状況(令和3年1月サービス提供分) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) | 合計 | |
全国平均 | 32.0 | 34.3 | 66.4 |
茨城県 | 26.5 | 38.9 | 65.5 |
栃木県 | 27.4 | 41.3 | 68.7 |
群馬県 | 31.8 | 29.2 | 61.0 |
埼玉県 | 24.0 | 46.7 | 70.8 |
千葉県 | 28.8 | 40.8 | 69.6 |
東京都 | 27.4 | 44.6 | 72.0 |
神奈川県 | 26.7 | 48.5 | 75.2 |
(引用:東京都福祉保健局「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」/https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/shogu/R3_shoguu.files/jirei_torikumi.pdf/引用日2022/3/2)
栃木県における介護職員等特定処遇改善加算の取得状況は、全国平均を上回っている状況です。関東地方でもっとも高い神奈川県より6.5%下回っているものの、栃木県と同じ北関東の茨城県や群馬県より高くなっています。
2-2. 【公益財団法人介護労働安定センター】介護労働実態調査結果をもとにした対応状況
公益財団法人介護労働安定センターは、介護労働者の安定した雇用や能力向上などを目的に、支援事業を実施している機関です。公益財団法人介護労働安定センターが実施した「介護労働実態調査」では、都道府県ごとに介護職員処遇改善加算の対応状況がまとめられています。
下記は、全国平均と関東地方の介護職員処遇改善加算の対応状況を比較した表です。
【関東地方】介護職員処遇改善加算の算定及び対応状況(令和2年度) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
諸手当の導入・引き上げ | 一時金支給 | 基本給引き上げ | |
全国平均 | 61.6 | 57.6 | 35.3 |
茨城県 | 62.5 | 45.0 | 30.0 |
栃木県 | 51.9 | 49.4 | 33.3 |
群馬県 | 55.3 | 57.7 | 34.1 |
埼玉県 | 64.4 | 53.5 | 38.2 |
千葉県 | 61.3 | 58.2 | 40.9 |
東京都 | 63.3 | 59.6 | 35.4 |
神奈川県 | 61.8 | 59.1 | 41.2 |
(出典:公益財団法人介護労働安定センター「―令和2年度 介護労働実態調査結果について―」/http://www.kaigo-center.or.jp/report/2021r01_chousa_01.html)
栃木県では、諸手当の導入・一時金支給・基本給引き上げのいずれにおいても、対応状況が全国平均を下回っています。関東地方の中で見ても、全体的に低い傾向です。ただし、介護職員処遇改善加算の取得に積極的な栃木県では、今後対応状況が向上する可能性は十分にあるでしょう。
下表は、介護職員等特定処遇改善加算の対応状況をまとめた表です。
【関東地方】介護職員等特定処遇改善加算の算定及び対応状況(令和2年度) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
職員全体の処遇改善 | 経験・技能のある介護職員の処遇改善 | 介護職員全体の処遇改善 | |
全国平均 | 38.5 | 31.4 | 29.2 |
茨城県 | 33.3 | 34.7 | 31.9 |
栃木県 | 31.3 | 35.4 | 29.2 |
群馬県 | 59.4 | 18.8 | 21.9 |
埼玉県 | 41.3 | 27.9 | 30.8 |
千葉県 | 34.3 | 38.1 | 26.1 |
東京都 | 33.0 | 31.8 | 33.9 |
神奈川県 | 37.9 | 34.5 | 26.4 |
(出典:公益財団法人介護労働安定センター「―令和2年度 介護労働実態調査結果について―」/http://www.kaigo-center.or.jp/report/2021r01_chousa_01.html)
栃木県では、経験・技能のある介護職員の処遇改善が全国平均より高く、関東地方の中でも千葉県に次いで2番目の高さです。栃木県では介護職員等特定処遇改善加算の取得率も高く、経験豊富な人材や高い技能を持った人材が働きやすい環境だと言えます。
3. 栃木県が実施する介護施策の状況
栃木県は「はつらつプラン21(八期計画)」のもとで、介護分野の取り組みを活発化させています。栃木県高齢者支援計画では、多様な介護人材の確保・定着のために、「参入促進」「資質の向上」「労働環境・処遇の改善」を3本の柱としています。
県全体で介護職の処遇改善に努めている栃木県であれば、介護職員処遇改善加算の取得率は今後さらに向上するでしょう。
(出典:栃木県「栃木県高齢者支援計画「はつらつプラン21(八期計画)」/https://www.pref.tochigi.lg.jp/e03/pref/keikaku/bumon/hatsuratsu21-8.html)
3-1. 【栃木県】介護職員処遇改善加算を取得している傾向にある施設は?
厚生労働省が公表している「介護給付費等実態統計」において、介護職員処遇改善加算の取得率が高く、栃木県内にもある施設を2つ紹介します。
通所介護 |
---|
通所介護とは、利用者が可能な限り自立した生活を送れるよう、生活支援や生活機能の訓練を行う施設・サービスです。利用者の孤独感の解消や、家族の負担軽減などの目的もあります。通所介護の主な仕事内容は、日常生活の介助や機能訓練、送迎です。 |
訪問入浴介護 |
---|
訪問入浴介護は、自力での入浴が困難な要介護者に対して、入浴の介護を行うサービスです。看護職員1人と介護職員2人の3名体制が一般的で、浴槽を利用者の自宅に持ち込み、入浴の介助を行います。 |
応募先として検討している職場における介護職員処遇改善加算の取得状況は、各職場の公式サイトをまずはチェックしてみるとよいでしょう。
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まとめ
慢性的な少子高齢化に悩む日本では、介護職の安定的な雇用などを目的に「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」を実施しています。栃木県では、介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算のいずれにおいても取得率が全国平均を上回っており、介護職の処遇改善に積極的です。
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※当記事は2021年11月現在の情報をもとに作成しています
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