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老人福祉法と介護保険法の違い|背景・目的の違いから解説

公開日:2022.08.19 更新日:2024.04.09
老人福祉法と介護保険法の違い|背景・目的の違いから解説

介護業界で働いていると、法律に触れる機会も多いでしょう。介護に関する法律は複数あり、それぞれがどのような意味を持っているのか理解しにくいかもしれません。しかし介護関係の法律を知ることは、日本の介護制度の仕組みの理解につながるため重要です。

今回は老人福祉法と介護保険法の違いを、制定された背景や目的から解説します。老人福祉法と介護保険法の概要についても説明するため、介護に関する法律の知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。

1.老人福祉法と介護保険法の違い

老人福祉法と介護保険法は、日本の高齢者福祉の根幹を支える法律です。
ここではそれぞれの違いを知るため、概略を解説します。

老人福祉法 介護保険法
施行年 1963年7月 2000年4月
法制定の背景 高度経済成長期に都市に人口が集中し、核家族化したことにより家庭内での介護が難しくなりました。
特に地方での高齢者福祉が課題として表面化しました。
高齢者介護や認知症に対しての社会的関心が高まると同時に、日本では高齢化が類を見ないスピードで進み、社会保障費が財政を圧迫しました。
あわせてバブル崩壊により日本経済が停滞したことも背景に挙げられます。
目的 高齢者福祉の原理を明らかにして、高齢者の心身の健康を保ち、生活を安定させること。
(出典:e-Gov法令検索「老人福祉法」
加齢による病気等が原因で要介護状態となった人が、その人の持つ能力に合わせて自立した日常生活を営むことができるよう介護保険制度を設け、保健医療サービス・福祉サービスを向上させること。
(出典:e-Gov法令検索「介護保険法」
ポイント 老人福祉法の特徴は「措置制度」です。措置制度とは行政処分の1つで、対象の高齢者は行政が指定した老人ホーム等に入ることになります。
また老人福祉法における高齢者福祉サービスの財源は税金で、低所得者・生活困窮者を支えるという「公助」の面が強いものでした。
介護保険法が定める介護保険制度では「契約制度」が主流です。利用者さんが自由にサービスを選択でき、事業所と直接契約します。
介護保険制度の財源は40歳以上の方が払う介護保険料で、高齢者は1~3割負担でサービスを利用できるという「共助」の仕組みに変わってきています。

老人福祉法で主流だった措置制度では、行政が指定した介護施設に入ることになり、利用者さんの意向が尊重されにくい構造でした。そのため、利用者さんが自由に施設を選べる契約制度が主流の介護保険制度に変化してきた経緯があります。

2.老人福祉法とは

老人福祉法とは、高齢者福祉を担う機関や施設、事業についてのルールを定めた法律です。都道府県と市区町村に老人福祉計画の作成を義務付け、老人福祉施設と老人居宅生活支援事業について規定しています。

高齢者福祉制度は老人福祉法だけでなく、介護保険法も含むさまざまな法制度を組み合わせて構成されているものです。現在も老人福祉法は高齢者福祉制度の一部として機能しています。

老人福祉法にもとづく措置制度は介護保険法施行後も存続しており、やむを得ない事由により、高齢者が介護サービスを受けることが難しいケースが該当します。措置制度が存続していることで、高齢者を必要なサービスに結び付けるために市区町村が職権を行使できます。

「やむを得ない事由」とは、家族からの虐待や、高齢者本人が介護保険サービスの契約を拒んでいるケースです。このような場合に、措置制度は最終的な手段として有効です。

(出典:福祉医療機構「高齢者福祉制度解説」
(出典:e-Gov法令検索「老人福祉法」

老人福祉法にもとづく高齢者福祉制度の利用の流れ

老人福祉法にもとづく高齢者福祉制度の利用の流れは下記のようになります。

(1)相談や通報、発見等から市区町村が調査を行う
(2)調査をもとに総合的に判断する
(3)入所措置が決定される

措置の場合は、相談や通報、発見等で見つけた高齢者を市区町村が調査します。具体的に調査されるのは、下記のようなポイントです。

・健康状態
・日常生活の状況
・精神の状況
・家族の状況
・住居の状況

これらを総合的に判断し、養護老人ホーム等への入所措置や、介護サービスにかかる自己負担額が決定されます。

(出典:福祉医療機構「利用までの流れ」

老人福祉法にもとづくサービス

老人福祉法にもとづくサービスは4つに大別され、居宅サービス・施設サービス等・その他のサービス・高齢者住まい法にもとづくサービスがあります。ここでは一例として、以下のものを紹介します。

●【施設サービス等】特別養護老人ホーム
65歳以上で身体または精神に著しい障害があるため常時の介護が必要であり、自宅で介護を受けることが困難な方向けの施設です。入浴、排せつ、食事等の介護、日常生活上の世話等を行います

●【居宅サービス】老人居宅介護等事業
65歳以上で身体または精神に障害があるため日常生活を営むのに支障がある方に、自宅で入浴、排せつ、食事等の介護、家事、生活に関する相談・助言をする事業です。

●【居宅サービス】老人デイサービス事業
65歳以上で身体または精神に障害があるため、日常生活を営むのに支障がある方やその家族向けの事業です。高齢者がデイサービスセンターに日帰りで通い、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練等を受けます。

●【施設サービス等】有料老人ホーム
高齢者を入居させ、入浴、排せつ、食事等の介護、食事の提供、洗濯等の家事を提供する施設です。設置主体は民間の介護サービス事業者で、サービスの内容や運営についてのガイドラインにもとづき都道府県が指導します。

(出典:福祉医療機構「サービス一覧/サービス紹介」

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3.介護保険法とは

介護保険法とは、介護が必要な高齢者やその家族を社会全体で支える仕組みである「介護保険制度」について規定した法律です。以前のように、介護を家族だけで行うことが難しくなった社会情勢にあわせて2000年に制定されました。

介護保険制度は、誰でも介護が必要になるリスクがあるという考えのもと、40歳以上の方(被保険者)が支払う介護保険料と税金で成り立っています。

サービス提供事業者へ支払われる費用は、7~9割が介護保険料と公費でまかなわれ、残りの1~3割は介護サービス利用者さんの自己負担です。

介護保険料の支払いは40歳以上の方の義務です。介護保険料を支払うことで、自身に介護が必要になったときに1~3割の自己負担で介護サービスが受けられます。

(出典:福祉医療機構「介護保険制度解説」
(出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」
(出典:e-Gov法令検索「介護保険法」

介護保険制度の利用の流れ

介護保険サービスを利用するときにまず行うのは、市区町村の介護保険担当窓口等への相談、申請です。

その後「要介護(要支援)認定」が下記のような流れで行われます。

(1)認定調査(訪問調査)
(2)一次判定/主治医意見書
(3)二次判定
(4)認定・結果通知
(5)ケアプランの作成
(6)サービスの利用

認定調査とは、市区町村の認定調査員が高齢者宅に訪問し、全国共通の認定調査票にもとづいて行われる聞き取り調査です。その後、訪問調査の結果にもとづきコンピューターで一次判定が行われ、同時に申請者のかかりつけ医に市区町村が意見書の提出を求めます。

二次判定ではこれまでの調査をもとに、どのくらいの介護が必要なのか総合的な審査が行われ、介護が必要と判断された場合に介護サービスを受けられるようになります。要介護認定は、要介護1~5、要支援1・2の7つの区分です。

要介護1~5であれば居宅介護支援事業所、要支援1・2であれば地域包括支援センターのケアマネジャーがケアプランを作成します。

(出典:福祉医療機構「利用までの流れ」

介護保険法にもとづくサービス

介護保険法にもとづくサービスは下記のように分類されます。

・自宅で利用するサービス
・自宅から通って利用するサービス
・生活環境を整えるためのサービス
・生活の場を自宅から移して利用するサービス
・介護予防のためのサービス
・計画を作るサービス

ここでは一例として、下記のものを紹介します。

●【自宅で利用するサービス】訪問介護(ホームヘルプ)
訪問介護は自宅で利用するサービスで、要介護1以上の認定を受けた方が対象です。ホームヘルパーが訪問し、入浴、排せつ、食事等の介護や、家事等を行います。

●【自宅から通って利用するサービス】通所介護(デイサービス)
通所介護は自宅から施設に通うサービスで、対象者は要介護1以上の認定を受けた方です。デイサービス施設に通い、食事、入浴等の日常生活上の支援や生活機能訓練を日帰りで受けられます。

(出典:福祉医療機構「サービス一覧/サービス紹介」

訪問介護の介護職一覧ページはこちら

介護と仕事の両立のために活用できる制度|両立を図るポイントも

まとめ

老人福祉法では措置制度が主流で、行政が指定した施設に入所することになっていたため、利用者さんの意向が尊重されにくいものでした。介護保険法では、利用者さんが自由にサービスを選べる契約制度に移行しています。

また、老人福祉法は介護サービスの財源が税金であり公助の色が濃く、時代の変化とともに老人福祉制度(高齢者の福祉を支援する制度)も変わりました。現在は介護保険法にもとづき、40歳以上の方が支払う保険料も介護サービスの財源になっており、共助の仕組みになっています。

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※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています

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