ホームヘルパーとは?必要な資格や介護福祉士との違いを解説

ホームヘルパーは、高齢者や障害者が自宅で安心して生活できるよう、居宅を訪問して介護や生活支援を行う仕事です。介護職員初任者研修を修了すればホームヘルパーを目指せるほか、生活援助のみを行う場合は生活援助従事者研修の修了をすれば、生活支援業務に限れば仕事ができます。
この記事ではホームヘルパーに必要な資格や、介護福祉士との仕事内容・収入・資格の違いを解説します。ホームヘルパーを目指している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1. ホームヘルパー(訪問介護員)とは
ホームヘルパーとは、在宅で生活する高齢者や障害者の居宅を訪問し、介護や生活支援を行う専門職です。介護保険法や障害者総合支援法に基づいて提供されるサービスに介護士として従事し、介護利用者さんが住み慣れた自宅で安心して生活できるようサポートします。
訪問介護サービスの内容は、利用者さんの身体介護や生活援助が中心です。食事介助や排泄介助、入浴介助といった身体介護だけでなく、調理や掃除などの日常生活を支援する家事援助も行います。利用者さんの家族への技術指導や精神的なケアも大切な仕事です。ホームヘルパーは、介護を必要とする方々の自立を支援し、心身の負担軽減に努める存在です。
(出典:厚生労働省jobtag「訪問介護員/ホームヘルパー」
/
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/133)
(出典:中央福祉人材センター「介護・保育」
/
https://www.fukushi-work.jp/work/detail.html?id=3)
1-1. ホームヘルパーの役割
ホームヘルパーの主な役割は、利用者さんの身体介護と生活援助です。身体介護には、食事や排泄、入浴など日常生活に必要な動作の補助が含まれます。生活援助では、掃除や調理、買い物などの支援や代行により、利用者さんが自宅で安全に生活を続けられるようサポートします。
また、利用者さんの家族に対して介護技術を指導し、家族全体の介護負担を軽減するのもホームヘルパーの重要な役割です。医療スタッフやケアマネジャーと連携しながら、利用者さんおよびそのご家族の生活の質向上を目指します。
2. ホームヘルパーになるのに必要な資格
ホームヘルパーとして働くためには、基本的な介護技術を習得するための「介護職員初任者研修」(旧:ホームヘルパー2級)の修了が必須となります。この研修は、ホームヘルパーとして介護業務に従事する際の基礎的な介護資格です。さらに、将来的に介護福祉士を目指す場合は「介護福祉士実務者研修」(旧:ホームヘルパー1級)の受講が必要です。
生活援助のみを行う場合には「生活援助従事者研修」という短期間で修了できる資格もあります。以下では、これら介護関連資格の詳細を見ていきましょう。
2-1. 生活援助従事者研修
生活援助従事者研修は、訪問介護において生活援助を行うための資格です。生活援助従事者研修では、掃除や洗濯、調理などの日常生活をサポートするために必要な、介護現場の基礎知識を学びます。研修内容は各自治体が決定しますが、標準となるカリキュラムの場合は59時間と、ほかの資格に比べれば短期間で修了できます。
下記は、生活援助従事者研修の標準的なカリキュラムです。
・生活援助従事者研修のカリキュラム
項目 | 時間 |
---|---|
職務の理解 | 2時間 |
介護における尊厳の保持・自立支援 | 6時間 |
介護の基本 | 4時間 |
介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 3時間 |
介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 |
老化と認知症の理解 | 9時間 |
障害の理解 | 3時間 |
こころとからだのしくみと生活支援技術 | 24時間 |
振り返り | 2時間 |
合計 | 59時間 |
(出典:厚生労働省「介護員養成研修の取扱細則について(介護職員初任者研修・生活援助従事者研修関係)」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000331389.pdf)
生活援助従事者研修を修了すると、訪問介護事業所などですぐに活躍できます。ただし、提供できるのは生活援助サービスのみで、身体介護は行えません。 介護職員初任者研修へのステップアップを目指す場合、自治体によっては生活援助従事者研修で学んだものと重複するカリキュラムが一部免除されます。
(出典:公益財団法人 介護労働安定センター「介護に関する資格等について」
/
https://jsite.mhlw.go.jp/ishikawa-roudoukyoku/content/contents/001790771.pdf)
2-2. 介護職員初任者研修(旧:ホームヘルパー2級)
介護職員初任者研修は、ホームヘルパーとして働くために必要な基礎的な資格です。旧ホームヘルパー2級に相当し、各都道府県にある養成機関で受講できます。
介護サービスの業務で生活援助と身体介護の両方に対応できるよう、合計130時間の介護知識と技術を学ぶ研修を受講し、筆記試験に合格すれば資格認定されます。
下記は、国が定めた標準的な介護職員初任者研修のカリキュラムです。初任者研修のカリキュラムは以下に加えて、各自治体が独自に定めた内容が追加される場合があります。
・介護職員初任者研修のカリキュラム
教育内容 | 時間 |
---|---|
職務の理解 | 6時間 |
介護における尊厳の保持・自立支援 | 9時間 |
介護の基本 | 6時間 |
介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 9時間 |
介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 |
老化の理解 | 6時間 |
認知症の理解 | 6時間 |
障害の理解 | 3時間 |
こころとからだのしくみと生活支援技術 | 75時間 |
振り返り | 4時間 |
合計 | 130時間 |
(出典:厚生労働省「介護員養成研修の取扱細則について(介護職員初任者研修・生活援助従事者研修関係)」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000331389.pdf)
初任者研修修了後は幅広い介護業務に対応できるため、訪問介護事業所や施設介護での活躍が期待されます。さらにスキルアップを目指す場合、実務経験を積めば介護福祉士資格取得を目指せます。
(出典:公益財団法人 介護労働安定センター「介護に関する資格等について」
/
https://jsite.mhlw.go.jp/ishikawa-roudoukyoku/content/contents/001790771.pdf)
2-3. 介護福祉士実務者研修(旧:ホームヘルパー1級)
介護福祉士実務者研修は、初任者研修の上位資格でホームヘルパーがキャリアアップを目指すために必要な研修です。介護福祉士実務者研修を修了することで、介護福祉士国家試験の受験資格が得られます。
実務者研修は最低450時間で、初任者研修で学ぶ内容をさらに深め、医療的ケアを含むより高度な介護技術を身につける内容です。介護経験をはじめ受講要件の定めはないものの、保有資格によっては一部科目が免除されます。
下記は、介護福祉士実務者研修の標準的なカリキュラムです。初任者研修同様に、実務者研修も各自治体の判断でカリキュラムが追加される場合があります。
・介護福祉士実務者のカリキュラム
教育内容 | 時間 |
---|---|
人間の尊厳と自立 | 5時間 |
社会の理解I | 5時間 |
社会の理解II | 30時間 |
介護の基本I | 10時間 |
介護の基本II | 20時間 |
コミュニケーション技術 | 20時間 |
生活支援技術I | 20時間 |
生活支援技術II | 30時間 |
介護過程I | 20時間 |
介護過程II | 25時間 |
介護過程Ⅲ(スクーリング) | 45時間 |
発達と老化の理解I | 10時間 |
発達と老化の理解II | 20時間 |
認知症の理解I | 10時間 |
認知症の理解II | 20時間 |
障害の理解I | 10時間 |
障害の理解II | 20時間 |
こころとからだのしくみI | 20時間 |
こころとからだのしくみII | 60時間 |
医療的ケア | 50時間(※) |
合計 | 450時間 |
※「医療的ケア」は講義50時間とは別に演習を修了する必要があります。
(出典:厚生労働省「実務者研修認定ガイドライン」
/
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/care/dl/care_11.pdf)
実務者研修を修了すると、訪問介護における「サービス提供責任者」としての役割を担えます。医療的ケアの演習により専門性の高い介護技術も身につき、即戦力として活躍が期待できるでしょう。
(出典:公益財団法人 介護労働安定センター「介護に関する資格等について」
/
https://jsite.mhlw.go.jp/ishikawa-roudoukyoku/content/contents/001790771.pdf)
介護福祉士実務者研修とは?働くメリットや資格の取得方法を解説!
3. ホームヘルパーと介護福祉士の違いとは?
ホームヘルパーと介護福祉士は、どちらも介護業界における重要な職種です。しかし、資格や仕事内容、収入などに違いがあります。介護福祉士は国家資格であり、介護のスペシャリストとして幅広い業務に従事できる一方、認定資格であるホームヘルパーが従事できる仕事は限定されます。以下では、ホームヘルパーと介護福祉士の仕事内容・収入・資格の違いについて解説します。
3-1. 仕事内容の違い
介護福祉士は、介護施設や在宅での介護全般を担当し、身体介護や生活支援を行うのが基本的な仕事です。加えて、介護計画の作成やほかの介護スタッフの指導、利用者さんや家族への介護方法の指導にも携わります。ケアワーカーとも呼ばれ、現場のリーダー的な役割を担うことが多い介護のスペシャリストです。
一方、ホームヘルパーも、訪問介護現場で身体介護や生活支援を行う専門職ですが、介護福祉士と比べると業務の範囲は限られます。主に、利用者さんの日常生活の補助を行い、介護福祉士が指示する範囲で活動する立場です。特に、身体介護には従事できない生活援助従事者研修修了者の仕事は、家事や買い物などの生活支援に限定されます。
3-2. 収入の違い
収入面でも、介護福祉士とホームヘルパーの間には差があります。介護福祉士は国家資格であり、役職やリーダー業務を任されることが多いため、資格手当や役職手当が支給されることが一般的です。2022年のデータによると、介護福祉士の月収は平均33万円程度で、実務者研修修了者や初任者研修修了者よりも高い傾向にあります。
一方、ホームヘルパーの収入は資格や勤務形態によって異なり、特にパートタイムや登録ヘルパーの場合は正社員と比較して低めです。無資格者の場合、月収は平均27万円程度にとどまり、資格保有者との間には月5万円以上の差がつく場合もあります。
(出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/22/dl/r04gaiyou.pdf#page=18)
3-3. 資格の違い
介護福祉士は国家資格であり、実務経験や養成施設での学習を経て、国家試験に合格することで取得できる専門資格です。取得までに数年以上かかりますが、介護の現場での信頼性が高い介護福祉士の資格があれば、介護職として就職する際に選択肢が増え、給与面や待遇面でも有利になります。
一方、ホームヘルパーは「介護職員初任者研修」や「実務者研修」といった認定資格を持つことで従事できる職種です。いずれの研修も比較的短期間で修了可能ですが、国家資格ではありません。介護福祉士と比べると専門性が低いため、携われる業務に制限があります。ホームヘルパーとして各資格を取得した方が今後施設で責任ある立場に就くには、介護福祉士へのステップアップが必要となるでしょう。
(出典:中央福祉人材センター「介護・保育」
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https://www.fukushi-work.jp/work/detail.html?id=3)
4. ホームヘルパー資格の取得に意味はある?
ホームヘルパー資格の取得は、介護業界での就職や転職を目指す上で大きなメリットがあります。現在、高齢化が進む日本では、現場に従事する介護人材の不足が深刻化しています。このため、ホームヘルパーの資格を取得すれば、介護事業所や施設への就職で有利になるでしょう。また、訪問介護員として働く場合、身体介護や生活援助を行える介護職員初任者研修を修了していると、就職先の選択肢が広がります。
さらに、医療・介護の分野では「地域包括ケアシステム」が推進されています。これは、在宅で医療・介護サービスを受けながら、住み慣れた地域で生活を続ける仕組みです。ホームヘルパー資格があれば在宅介護の分野でも活躍できるようになり、将来的なキャリアアップにもつながるでしょう。
(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定等に向けた要望」
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https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001150393.pdf#page=2)
(出典:厚生労働省 近畿厚生局「地域包括ケアをご存じですか?」
/
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/tiikihoukatsu/documents/minipamph.pdf)
まとめ
ホームヘルパーとして働くために必要な資格は、生活援助従事者研修・介護職員初任者研修・介護福祉士実務者研修の3つです。介護福祉士と比べると、各資格で可能な仕事の範囲や給与の差があるので、今後介護職としてキャリアアップを目指すなら介護福祉士資格の取得を目指すとよいでしょう。
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※当記事は2024年9月時点の情報をもとに作成しています
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