社会福祉法人とは?働くメリット・デメリットと重視するべきポイント

介護業界の求人を見ると、募集元の運営団体は社会福祉法人や医療法人、株式会社などさまざまです。給料をはじめ待遇面のみならず、将来的なスキルアップやキャリアチェンジの可能性も考えると、転職先は法人格ごとの違いを理解した上で選ぶ必要があります。
この記事では、代表的な法人格の1つである「社会福祉法人」について詳しく紹介します。制度・事業の特徴や給料の違い、メリット・デメリットについて解説するため、転職を検討している介護職の皆さんはぜひ参考にしてください。
目次
1. 社会福祉法人とは?
社会福祉法人とは、社会福祉事業を目的として設立された法人です。
(出典:厚生労働省「社会福祉法人の概要」
/
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-fukushi-houjin-seido/01.html)
社会福祉法人は、高齢者支援のみならず地域住民すべてを対象とした、さまざまな社会福祉施設の運営やサービスで人々の生活を支援しています。社会福祉法人は非営利組織に分類されるため、一般的な企業のように必ずしも収益性のみで事業の撤退、または継続が決定される団体ではありません。社会福祉事業を主としており、地域貢献活動の継続性や安定性が求められるためです。
新たに社会福祉法人を設立する場合、所轄庁(主たる事務所が所在する都道府県庁)で知事または市長より認可を得る必要があります。
2. 社会福祉法人の事業
社会福祉法人は、介護や保育、障がい者支援といった「社会福祉事業」を中心に、地域社会のニーズに応じた活動を展開しています。さらに、地域貢献を目的とした「公益事業」や、安定した運営を支えるための「収益事業」も行えます。
(出典:厚生労働省「社会福祉法人の概要」
/
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12799.html)
(出典:東京都「社会福祉法人制度の概要」
/
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/050327issyocompressed)
ここでは、それぞれの事業内容や特徴について詳しく解説します。
2-1. 社会福祉事業
社会福祉事業は社会福祉法人の主たる事業で、社会福祉法第2条に定める「第一種」「第二種」に区分されます。
第一種は入所系など利用者さんへの影響が大きい事業で、原則として国・地方公共団体・社会福祉法人が担い、特別養護老人ホームや乳児院、救護施設などが該当します。第二種は保育所、老人デイサービス、障害福祉サービス等で、幅広い主体の参入が可能です。
いずれも地域福祉の推進が求められ、生活上の支援を要する人に無料または低額での提供に努めています。
2-2. 公益事業
公益事業は、社会福祉事業に支障がない範囲で行う「社会福祉と関連する公益目的の事業」です。社会福祉事業に対して従たる地位であることが条件となり、収益や効果は地域福祉の向上に資する必要があります。
具体例として、介護保険法に基づく居宅サービス事業や、有料老人ホームの経営、地域住民向けの介護予防教室・子育て支援といった取り組みが挙げられます。
2-3. 収益事業
収益事業は、貸ビル・駐車場経営など法人資産を活用して安定的な収益を得る取り組みで、収益は社会福祉事業や一定の公益事業の原資に充てることが前提です。位置付けはあくまで従たるもので、本来業務である社会福祉事業を阻害してはなりません。
適正な内部統制と利益管理、利益還元の方針を明確にし、地域からの信頼を損なわない透明な経営を行う必要があります。
3. 社会福祉法人の設立要件
社会福祉法人の設立を都道府県庁に認めてもらうためには、いくつかの要件を満たす必要があります。代表的な要件は下記の4つです。
・評議員会の設置
・理事の設置
・監事の設置
・会計監査人の設置
(出典:厚生労働省「社会福祉法人の設立について」
/
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-fukushi-houjin-seido/dl/01-02.pdf)
社会福祉法人の設立にあたり、規定の人数を満たした評議員会の設置が求められます。人数は理事が6名以上、監事が2名以上、評議員が7名以上です。評議員は厳密には理事の人数を超えることが条件とされているため、仮に理事が7名設置されている場合、少なくとも8名以上の設置が最低条件となります。いずれの役員も社会福祉事業に関する識見を有することなど、多くの条件のもと選任されます。
前年の決算内容によっては、会計監査人の設置も必要です。法人単位事業活動計算書の「サービス活動増減の部」で「サービス活動収益計」が30億円を超える場合は、会計監査人の設置が義務付けられています。あるいは、法人単位貸借対照表の「負債の部」の「負債の部合計」が60億円を超える際も、会計監査人を設置しなくてはなりません。
4. 社会福祉法人と類似した法人の違い
福祉分野には、社会福祉法人のほか株式会社・医療法人・NPO法人などが参入することがあります。これらの団体は目的や設立根拠法、利益配分の可否、許認可の要否が異なり、働き方や提供できるサービスにも影響します。
ここでは各法人の性格と実務上の要点を解説します。
4-1. 社会福祉法人と株式会社の違い
社会福祉法人は、社会福祉法に基づいて設立される非営利法人で、地域福祉の向上を目的としています。事業で得た利益は株主や個人に分配せず、すべてを事業や施設運営に再投資します。
一方、株式会社は会社法に基づく営利法人で、株主の利益を最大化することが目的です。事業内容に制限はなく、保育園や介護施設を運営する企業も増えています。利益は配当として株主に分配され、経営方針も市場競争や投資判断に左右されます。
社会福祉法人が地域貢献や低所得者への支援を重視するのに対し、株式会社は経営の自由度とスピードの高さが特徴です。
4-2. 社会福祉法人と医療法人の違い
社会福祉法人は、介護や保育、障がい者支援などの社会福祉事業を中心に、生活面の支援を幅広く行います。一方、医療法人は医療法に基づき設立される非営利法人で、病院や診療所、介護老人保健施設などを運営します。利益を分配することはできず、余剰金は医療設備や人材育成などの医療体制強化に活用されます。
両者の主な違いは、社会福祉法人が生活支援・介護を中心に地域包括ケアを担うのに対し、医療法人は診療や治療など医療サービスの提供を主軸としている点です。医療と福祉の連携が進む中で、両法人が協働して地域包括的な支援を行う事例も増えています。
(出典:厚生労働省「医療法人の基礎知識」
/
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/houkokusho_shusshi_09.pdf)
4-3. 社会福祉法人とNPO法人の違い
社会福祉法人は、法律で定められた社会福祉事業を安定的に運営するために設立される非営利法人です。設立には厳格な認可手続きが必要で、評議員や理事、監事などの設置が義務づけられています。
一方、NPO法人(特定非営利活動法人)は、特定非営利活動促進法に基づき、市民が主体となって地域の課題解決や社会貢献を目的に設立されます。教育、まちづくり、福祉など幅広い分野で活動でき、届出・認証で設立可能です。収益の分配はできませんが、活動内容の自由度が高く、地域に密着した柔軟な取り組みが可能です。
社会福祉法人が「制度に基づく福祉の担い手」なら、NPO法人は「市民が生み出す新しい福祉の担い手」と言えるでしょう。
(出典:内閣府「特定非営利活動法人(NPO法人)制度の概要」
/
https://www.npo-homepage.go.jp/about/npo-kisochishiki/nposeido-gaiyou)
5. 社会福祉法人を設立するメリット・デメリット
社会福祉法人には、公益性の高い活動を安定して行えるという大きな利点があります。一方で、設立や運営には厳しい要件があり、自由な経営が難しい側面もあります。
ここでは、社会福祉法人を設立するメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
5-1. 社会福祉法人を設立するメリット
社会福祉法人を設立する最大のメリットは、国や自治体からの支援や税制優遇を受けやすい点です。社会福祉法人が行う社会福祉事業や公益事業で得た所得は原則法人税の対象外となったり、社会福祉事業のために提供する施設には固定資産税がかからず、個人や企業からの寄付が控除の対象になったりします。
さらに社会福祉法人は設立要件が厳しく、所轄庁による監督を受けるため、社会的な信頼性が非常に高い点も特徴です。福祉や介護の現場では「安心して利用できる法人」として地域から支持を得やすく、優秀な人材の確保にもつながります。
このように、補助金・税制・社会的信用の3点が、社会福祉法人を設立する大きなメリットです。
5-2. 社会福祉法人を設立するデメリット
一方で、社会福祉法人の設立・運営にはいくつかの制約があります。
まず、社会福祉法人が行えるのは「社会福祉事業」「公益事業」「収益事業」に限定され、株式会社のように自由に事業を拡大することはできません。特に収益事業は社会福祉事業の従たる位置付けで実施する必要があり、営利目的の活動は認められないので、経営の柔軟性は低いと言えるでしょう。
資金調達の面でも制約があり、社会福祉法人は株式の発行ができず、主に補助金や助成金、寄付金などに頼ることになります。短期間で大きな資金を確保するのは難しく、施設整備や事業拡大のスピードが遅れるケースもあります。また、融資を受ける際は独立行政法人福祉医療機構などの審査を通過する必要があり、時間と手続きの負担がかかります。
このように、社会福祉法人は公益性と安定性が高い反面、自由な経営や迅速な意思決定が難しいという側面を持っています。
6. 介護職員が社会福祉法人で働くメリットとは?
介護職員が社会福祉法人で働くメリットとして、下記の3つが挙げられます。
・転勤の可能性が低い
・介護や福祉のスキルを伸ばせる
・規模の大きい法人は福利厚生が充実している
社会福祉法人は地域の公益性を充実させるために設立されているので、遠方への転勤を命じられる可能性が低い職場です。同じ施設で長く安定して働きたい方にとって、大きなメリットとなります。
施設によっては資格手当が支給されたり、試験日を特別休暇にされたりと、資格保有者や取得を目指す方へのサポートに力を入れている職場もあります。日々の業務で実践を重ねつつ、職場からのサポートで介護・福祉サービスのスキルを磨けるでしょう。
就職先の規模が大きいほど、資格取得支援以外の福利厚生が充実していることも嬉しいポイントです。
7. 介護職員が社会福祉法人で働くデメリットとは?
社会福祉法人で介護職員が働くときは、下記のデメリットも把握しておきましょう。
・提案や新しいことへの挑戦が難しい場合もある
・キャリアチェンジが難しい
社会福祉法人は歴史が長く、すでに体制や運営方法が確立されている場合があります。新人や中途採用の立場でアイデアを出したり、新しい挑戦をしたりすることが難しいことも考えられるでしょう。
長期的に勤務しているベテランが多い影響もあり、職場でのキャリアチェンジも容易ではありません。特定の道でプロフェッショナルとなる教育・指導を受けるため、キャリアチェンジを希望する場合は転職も視野に入れたキャリア形成が必要です。
8. 介護職員が社会福祉法人で働くときに重視するべき3つのポイント
自分に合った社会福祉法人で長く働くためには、いくつかのポイントを踏まえた上で求人を探すことが欠かせません。面接時に疑問点などを質問するだけでなく、求人や団体の公式ホームページから読み取れる情報も参考に、応募する社会福祉法人を絞り込みましょう。
ここでは、社会福祉法人で働くときに重視するべき3つのポイントを紹介します。
8-1. 教育体制が整っているか
まず重視したいポイントは教育体制です。医療や介護に関する知識・技術は常に進化し続けており、法改正の把握も含めると日々の勉強が求められます。組織全体が最新情報に敏感かつ積極的に取り入れようとする姿勢であれば、時代に合った支援事業を行えます。
教育体制を確認するときは臨時研修制度など、職員のスキルアップをはかる勉強会の有無を確認しましょう。教育制度が充実している職場への転職は、自分自身の成長にもつながります。
8-2. 理念に共感できるか
職場を選ぶときは、理念に共感して働けるかどうかも重要なポイントです。社会福祉法人にも株式会社のような経営理念が存在します。どのような点に注力しているのか、どのような点を解決するべき課題として掲げているかなど、待遇面のほかに経営理念も確認しましょう。
経営理念は患者さんや利用者さんへの接し方はもちろん、職員の待遇面にも反映されるものです。共感できる理念が掲げられている社会福祉法人を選べば、長く安心して働けるでしょう。
8-3. ライフスタイルの変化に適応できるか
スキルアップを実現するためには、長く働ける制度や環境が欠かせません。たとえば結婚や出産、子育てや介護などライフスタイルの変化に適応できない職場の場合、キャリア形成の道が断たれる可能性があります。
女性の場合は産休復帰率が高い職場など、将来的に起こり得るライフスタイルの変化も視野に入れた職場選びが大切です。また、ライフスタイルが変化したときに、スキルを生かしつつ別の部署で働ける体制が確立されている職場であれば、性別を問わず安心して働けます。
まとめ
地域密着型の施設が多い社会福祉法人は、地元で長く働きたい方におすすめです。一方でキャリアチェンジが難しいデメリットもあり、思い描く将来像によっては転職も視野に入れる必要があります。
現状よりもスキルアップしたい方や、自分に合った職場への転職を検討している方は「マイナビ介護職」をご利用ください。マイナビ介護職では求職者さまのご希望やキャリアプランに最適な転職ができるよう、キャリアアドバイザーによるサポートを行っております。
※当記事は2025年11月時点の情報をもとに作成しています
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