【北海道】介護職員処遇改善加算の取得状況は?介護施策の状況も解説
北海道は全国的にも高齢化率が高い地域です。令和3年1月時点における北海道の総人口は約519万人で、そのうち65歳以上の人口は約166万人となっています。また、高齢者の中でも75歳以上の人口が約半数を占めており、介護サービスを求める人は少なくありません。
(出典:北海道「北海道の高齢者人口の状況」/https://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/khf/koureishajinkou.html)
北海道では、介護職員の給与水準を上げて人材確保を図るために、処遇改善加算を取得する施設が多数見られます。
この記事では、介護職員処遇改善加算の意味を簡単に紹介します。介護職員処遇改善加算における平均給与の推移・北海道における介護職員処遇改善加算の取得状況なども解説するため、介護職に就くことを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
※本文では、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)のデータにも触れておりますが、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)は令和3年3月31日で廃止されており、令和3年3月31日時点で算定している事業所については、令和4年3月31日までの算定です。
そのため、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)のデータは参考値としてご参照ください。
目次
1. 介護職員処遇改善加算とは?
介護職における処遇改善加算は、「介護職員処遇改善加算」と「介護職員処遇改善加算」に分類できます。ここでは、介護職員処遇改善加算と介護職員処遇改善加算の特徴を紹介します。
・介護職員処遇改善加算
介護職員処遇改善加算は、厚生労働省が制定している介護職員の賃金改善を目的とした加算制度です。加算率は、「キャリアパス要件」と「職場環境等要件」によって、加算(Ⅰ)~(Ⅲ)に分けられます。加算率は加算(Ⅰ)が最も高く、サービス区分によって若干異なります。最も多くの要件を満たしている事業所であれば、介護職員1人あたり月額37,000円相当の加算となる仕組みです。
・介護職員等特定処遇改善加算
介護職員等特定処遇改善加算は、技能や経験のある介護職員の給与改善を行う制度で、勤続年数が10年以上の介護福祉士が対象です。月額8万円相当の処遇改善をする、もしくは年収440万円以上の人材を配置することを目的としています。
介護職員処遇改善加算を取得している事業所かどうかは、事業所の公式サイトでチェックしましょう。
1-1. 介護職員処遇改善加算における平均給与の推移
介護職員処遇改善加算が運用されて以来、介護職員の賃金水準は上昇傾向にあります。下記は、厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)」をもとに、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得(届出)している事業所における介護職員の平均給与額の推移をまとめた表です。
令和2年2月 | 平成31年2月 | 差額 | |
---|---|---|---|
平均給与額 | 315,850円 | 300,120円 | 15,730円 |
基本給 | 182,260円 | 179,100円 | 3,160円 |
手当 | 78,440円 | 70,350円 | 8,090円 |
一時金(賞与等) | 55,150円 | 50,660円 | 4,490円 |
(引用:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000689849.pdf/引用日2022/3/1)
平均給与額は基本給・手当・一時金の合算となり、平成31年から令和2年の1年間で15,730円上昇しました。なお、手当には「職務手当」「処遇改善手当」「通勤手当」や、残業代などが含まれています。
下記は、勤続年数別における介護職員の平均給与をまとめた表です(介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得(届出)している事業所)。
勤続年数 | 令和2年2月 | 平成31年2月 | 差額 |
---|---|---|---|
全体(8.1年) | 315,850円 | 300,120円 | 15,730円 |
1年 | 283,480円 | 258,260円 | 25,220円 |
2年 | 287,940円 | 271,770円 | 16,170円 |
3年 | 291,010円 | 277,120円 | 13,890円 |
4年 | 296,700円 | 282,210円 | 14,490円 |
5〜9年 | 307,980円 | 294,020円 | 13,960円 |
10年以上 | 350,820円 | 333,980円 | 16,840円 |
(引用:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000689849.pdf/引用日2022/3/1)
1年目の差額が大きい理由は、中途採用者の入職時期によって賞与を満額得られないことがあるためです。また、勤続年数が5年以上になると、1か月あたりの平均給与額が30万円以上になる施設も見られます。
2. 北海道における介護職員処遇改善加算の取得状況
介護職員処遇改善加算の取得率は全国的に90%を超えている一方で、介護職員等特定処遇改善加算は運用開始が遅かったことが関係し、約66%にとどまっています。
北海道の介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算の取得率は、どちらも全国平均をわずかに下回っている状況です。
以下では、全国平均および北海道の処遇改善加算の取得状況を紹介します。
2-1. 【厚生労働省】介護給付費等実態統計をもとにした取得状況
下記は、厚生労働省の「介護給付費等実態調査」をもとに、令和3年1月時点の北海道・東北地方の介護職員処遇改善加算の取得状況をまとめた表です。
【北海道・東北地方】介護職員処遇改善加算の取得状況(令和3年1月サービス提供分) 単位(%) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) | 加算(Ⅲ) | 加算(Ⅳ) | 加算(Ⅴ) | 合計 | |
全国平均 | 80.0 | 7.1 | 5.3 | 0.2 | 0.3 | 92.9 |
北海道 | 79.7 | 7.5 | 5.1 | 0.2 | 0.1 | 92.7 |
青森県 | 83.4 | 7.6 | 3.6 | 0.1 | 0.3 | 95.0 |
岩手県 | 78.9 | 9.4 | 5.6 | 0.2 | 0.0 | 94.1 |
宮城県 | 80.6 | 9.1 | 4.3 | 0.1 | 0.3 | 94.4 |
秋田県 | 87.5 | 6.4 | 2.6 | 0.1 | 0.2 | 96.8 |
山形県 | 88.9 | 4.2 | 2.9 | 0.1 | 0.3 | 96.4 |
福島県 | 79.6 | 8.7 | 5.5 | 0.1 | 0.1 | 94.0 |
(引用:東京都福祉保健局「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」/https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/shogu/R3_shoguu.files/jirei_torikumi.pdfc/引用日2022/3/1)
※加算(Ⅳ・Ⅴ)については、令和3年3月末時点で同加算を算定している事業者について、1年の経過措置を設けた上で、令和2年度で廃止されています。
北海道の介護職員処遇改善加算の取得状況は全国平均を0.2ポイント下回っており、東北6県と比較しても低くなっています。ただし、将来的に介護職員処遇改善加算の取得率が上昇すると考えられるため、北海道の給与水準はより高くなる可能性があります。
下記は、令和3年1月の北海道・東北地方の介護職員等特定処遇改善加算の取得状況を示した表です。
【北海道・東北地方】介護職員等特定処遇改善加算の取得状況(令和3年1月サービス提供分) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) | 合計 | |
全国平均 | 32.0 | 34.3 | 66.4 |
北海道 | 37.6 | 28.3 | 66.0 |
青森県 | 45.4 | 18.6 | 64.0 |
岩手県 | 44.8 | 22.3 | 67.1 |
宮城県 | 36.8 | 35.6 | 72.4 |
秋田県 | 46.5 | 25.2 | 71.7 |
山形県 | 50.5 | 20.0 | 70.5 |
福島県 | 36.4 | 27.9 | 64.2 |
(引用:東京都福祉保健局「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」/https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/shogu/R3_shoguu.files/jirei_torikumi.pdf/引用日2022/3/1)
介護職員等特定処遇改善加算でも全国平均をわずかに下回っています。ただし、介護職員等特定処遇改善加算の取得率が65%を下回る都道府県は多く、北海道の取得状況は決して悪くありません。
北海道の介護職員処遇改善の取得状況は全国平均を下回っていますが、介護支援政策に力を入れていることから、今後の取得率の向上が予測されます。
2-2. 【公益財団法人介護労働安定センター】介護労働実態調査結果をもとにした対応状況
「公益財団法人介護労働安定センター」は、介護労働者の総合的な支援機関として設立された「介護労働者法」の指定法人です。同センターでは、職場の環境改善とより質の高い介護サービスの提供を目的に、事業所と労働者を対象にした「介護労働実態調査」を実施しています。
下記は、公益財団法人介護労働安定センターの「介護労働実態調査」をもとに、令和2年度の介護職員処遇改善加算の算定と対応状況をまとめた表です。
【北海道・東北地方】介護職員処遇改善加算の算定及び対応状況(令和2年度) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
諸手当の導入・引き上げ | 一時金支給 | 基本給引き上げ | |
全国平均 | 61.6 | 57.6 | 35.3 |
北海道 | 62.7 | 55.0 | 32.6 |
青森県 | 64.2 | 59.1 | 34.3 |
岩手県 | 59.1 | 56.8 | 30.7 |
宮城県 | 58.5 | 55.9 | 34.7 |
秋田県 | 64.9 | 46.8 | 34.0 |
山形県 | 68.0 | 48.0 | 41.3 |
福島県 | 68.2 | 48.2 | 24.5 |
(出典:公益財団法人介護労働安定センター「―令和2年度 介護労働実態調査結果について―」/http://www.kaigo-center.or.jp/report/2021r01_chousa_01.html)
北海道では、諸手当の導入・引き上げに力を入れている施設が多い傾向です。一方で、一時金支給と基本給引き上げ状況は、全国平均を下回っています。しかし、介護職員処遇改善加算の取得が進めば、一時金支給・基本給引き上げを進める事業所も増えるでしょう。
下記は、令和2年度の介護職員等特定処遇改善加算の算定と対応状況についてまとめた表です。
【北海道・東北地方】介護職員等特定処遇改善加算の算定及び対応状況(令和2年度) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
職員全体の処遇改善 | 経験・技能のある介護職員の処遇改善 | 介護職員全体の処遇改善 | |
全国平均 | 38.5 | 31.4 | 29.2 |
北海道 | 38.1 | 32.0 | 29.4 |
青森県 | 35.7 | 31.0 | 33.3 |
岩手県 | 41.9 | 33.9 | 22.6 |
宮城県 | 29.3 | 28.0 | 42.7 |
秋田県 | 50.0 | 22.1 | 26.5 |
山形県 | 31.9 | 44.7 | 23.4 |
福島県 | 43.5 | 23.2 | 33.3 |
(出典:公益財団法人介護労働安定センター「―令和2年度 介護労働実態調査結果について―」/http://www.kaigo-center.or.jp/report/2021r01_chousa_01.html)
北海道における介護職員等特定処遇改善加算の対応状況を見ると、職員全体の処遇改善以外の項目は全国平均を上回っています。そのため、北海道は全国に比べてベテランの職員だけでなく、経験の浅い職員への処遇改善も進んでいると言えます。
3. 北海道が実施する介護施策の状況
北海道では、平成12年に「北海道高齢者保健福祉計画・介護保険事業支援計画」を策定しました。平成12年以降は3年おきに制度の改定を重ねながら、介護サービスにおける提供体制の改善に取り組んできました。
北海道高齢者保健福祉計画・介護保険事業支援計画では、介護現場の業務改善の取り組みとして、介護職員処遇改善加算の取得促進も行っています。北海道では、介護職員処遇改善加算の取得によって、介護職員のモチベーション向上、職場定着や離職防止の促進を目指しています。
(出典:北海道「第8期北海道高齢者保健福祉計画・介護保険事業支援計画」/https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/2/5/0/8/1/0/6/_/8kikeikaku1-1.pdf)
3-1. 【北海道】介護職員処遇改善加算を取得している傾向にある施設は?
介護職員処遇改善加算の取得対象になる介護サービスには、さまざまな種類があります。以下では、北海道で介護職員処遇改善加算の取得率が高いサービスを2つ紹介します。
訪問入浴介護 |
---|
訪問入浴介護は、利用者の自宅に浴槽などの器具を持ち込み、入浴の介助を行うサービスです。浴槽の運搬や組み立てなどの入浴準備から、入浴・洗髪、着替えまでの介助を行います。1日に複数の場所へ訪問して作業を行うことや力仕事が多いことから、体力に自信がある人に向いています。 |
介護老人福祉施設 |
---|
介護老人福祉施設は、要介護認定者を対象とした生活施設です。食事、排泄入浴などの日常生活の補助から機能訓練やリハビリなども行います。長期入所が前提ではなく、可能な限り自宅生活への復帰を目指す施設です。入所者の入れ替わりも多く、たくさんの人とコミュニケーションをとることが好きな人に向いています。 |
北海道の介護保険事業所や老人福祉施設一覧は、北海道のホームページで確認できます。また、給与面や福利厚生面が知りたい場合は、「マイナビ介護職」にご相談ください。マイナビ介護職では、専任のアドバイザーが希望条件などをヒアリングし、無料で最適な転職先をご提案いたします。
まとめ
北海道は65歳以上の人口が多く、介護サービスの需要が高い地域です。各自治体が支援対策を積極的に行っており、介護従事者にとっては今後さらに働きやすい環境となるでしょう。
介護職に転職する際は、就職先が介護職員処遇改善加算を取得しているかどうかを確認しましょう。介護職加算制度を取得しているかどうかは、各事業所の公式サイトなどから確認できます。
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※当記事は2021年11月現在の情報をもとに作成しています
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