【山形県】介護職員処遇改善加算の取得状況は?介護施策の状況も解説
山形県の高齢化率は令和元年10月1日時点で33.4%となっており、介護を必要とする人が年々増加しています。令和7年には団塊の世代が75歳以上(後期高齢者)になるため、介護職の需要はさらに高まると予測されています。
(出典:山形県「山形県高齢社会関係データ集令和2年」/https://www.pref.yamagata.jp/090002/kenfuku/koreisha/medemiru.html)
山形県では介護職員処遇改善加算を活用するなどして、介護人材の確保に取り組んでいる状況です。当記事では、介護職員処遇改善加算の概要・山形県における各処遇改善加算の取得率や介護施策を紹介します。
※本文では、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)のデータにも触れておりますが、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)は令和3年3月31日で廃止されており、令和3年3月31日時点で算定している事業所については、令和4年3月31日までの算定です。
そのため、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)のデータは参考値としてご参照ください。
目次
1. 介護職員処遇改善加算とは?
介護職員処遇改善加算は介護職全般を対象とした「介護職員処遇改善加算」と、一定の経験や技能を持つ介護職員を対象とした「介護職員等特定処遇改善加算」の2種類があります。ここでは、それぞれの特徴を簡単に紹介します。
・介護職員処遇改善加算
介護職員処遇改善加算は介護職の賃金向上を目的とした制度であり、「介護職員改善交付金」を引き継ぐ形で平成24年に導入されました。「キャリアパス要件(Ⅰ)~(Ⅲ)」と「職場環境等要件」を満たすことで、事業所で算定する介護報酬が加算される仕組みです。キャリアパス要件では、賃金体系の整備や教育研修の実施などが求められます。職場環境等要件は、賃金以外の処遇改善に取り組むことが必要です。介護職員処遇改善加算は要件数に応じた加算(Ⅰ)~(Ⅲ)の3段階に分かれており、加算(Ⅰ)の加算率が最も高く設定されています。
・介護職員等特定処遇改善加算
令和元年に導入された介護職員等特定処遇改善加算は、勤続年数10年以上の介護福祉士を対象とした制度です。職場で最低1人以上、経験者の賃金を月8万円上げること、もしくは年収440万円以上にすることがルールとして定められています。介護職員等特定処遇改善加算は、加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)の2段階に分かれており、介護職員処遇改善加算に上乗せされる形で支給されます。なお、勤続年数の定義は各事業所にゆだねられているため、勤続年数が10年未満の介護福祉士でも加算が認められる場合があります。
1-1. 介護職員処遇改善加算における平均給与の推移
介護職員処遇改善加算の導入により、介護職の給与水準が上昇しています。厚生労働省の調査によると、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得している事業所では、令和2年2月における正社員として働く介護職員の平均月給は315,850円で、前年同時期と比べて15,730円アップしています。
また、非常勤・パートで働く職員の給与水準も上がっています。時給で見ると、一般介護職や事務職などは20円、介護支援専門員は10円の増加です。非常勤・パートで働く職員における平均給与の上昇は鈍く思えますが、月額で見ると職種によっては10,000円以上の増加となっています。
(出典:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)」/https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000689849.pdf)
近年では、介護職員処遇改善加算の上位区分の取得を目指す事業所が増えているため、今後も介護職の平均給与は上昇するでしょう。
2. 山形県における介護職員処遇改善加算の取得状況
山形県の介護職員処遇改善加算の取得率は、北海道・東北地方で高い部類に入ります。全国的に見ても非常に高い水準であり、山形県は介護職の給与水準アップに積極的です。
ここからは、公的データを用いながら山形県の介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算の取得率を詳しく解説します。
2-1. 【厚生労働省】介護給付費等実態統計をもとにした取得状況
下記は、東京都福祉保健局「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」の内容をもとに、北海道・東北地方の介護職員処遇改善加算の取得状況をまとめた表です。なお、各区分の数値は厚生労働省の「介護給付費等実態統計」にもとづきます。
【北海道・東北地方】介護職員処遇改善加算の取得状況(令和3年1月サービス提供分) 単位(%) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) | 加算(Ⅲ) | 加算(Ⅳ) | 加算(Ⅴ) | 合計 | |
全国平均 | 80.0 | 7.1 | 5.3 | 0.2 | 0.3 | 92.9 |
北海道 | 79.7 | 7.5 | 5.1 | 0.2 | 0.1 | 92.7 |
青森県 | 83.4 | 7.6 | 3.6 | 0.1 | 0.3 | 95.0 |
岩手県 | 78.9 | 9.4 | 5.6 | 0.2 | 0.0 | 94.1 |
宮城県 | 80.6 | 9.1 | 4.3 | 0.1 | 0.3 | 94.4 |
秋田県 | 87.5 | 6.4 | 2.6 | 0.1 | 0.2 | 96.8 |
山形県 | 88.9 | 4.2 | 2.9 | 0.1 | 0.3 | 96.4 |
福島県 | 79.6 | 8.7 | 5.5 | 0.1 | 0.1 | 94.0 |
(引用:東京都福祉保健局「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」/https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/shogu/R3_shoguu.files/jirei_torikumi.pdf/引用日2022/3/1)
※加算(Ⅳ・Ⅴ)については、令和3年3月末時点で同加算を算定している事業者について、1年の経過措置を設けた上で、令和2年度で廃止されています。
山形県の介護職員処遇改善加算の取得率は、全国平均より3.5%高く、北海道・東北地方においては秋田県に次いで高くなっています。加算(Ⅰ)の取得率が88.9%と高く、山形県ではほとんどの事業所が最上位区分を取得している状況です。
下記は、令和3年1月時点における介護職員等特定処遇改善加算の取得状況を一覧化した表です。
【北海道・東北地方】介護職員等特定処遇改善加算の取得状況(令和3年1月サービス提供分) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) | 合計 | |
全国平均 | 32.0 | 34.3 | 66.4 |
北海道 | 37.6 | 28.3 | 66.0 |
青森県 | 45.4 | 18.5 | 64.0 |
岩手県 | 44.8 | 22.3 | 67.1 |
宮城県 | 36.8 | 35.6 | 72.4 |
秋田県 | 46.5 | 25.2 | 71.7 |
山形県 | 50.5 | 20.0 | 70.5 |
福島県 | 36.4 | 27.9 | 64.2 |
(引用:東京都福祉保健局「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」/https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/shogu/R3_shoguu.files/jirei_torikumi.pdf/引用日2022/3/1)
山形県の介護職員等特定処遇改善加算の取得率は70.5%となっており、北海道・東北地方では3番目に高い数値です。取得区分で見ると加算(Ⅰ)の取得率が加算(Ⅱ)の倍以上となっており、山形県では介護職経験者に対する処遇改善が推し進められていることがうかがえます。
介護職員等特定処遇改善加算の取得率は、60%台の都道府県がほとんどであるため、山形県の取得状況は全国的に見ても進んでいると言えます。
2-2. 【公益財団法人介護労働安定センター】介護労働実態調査結果をもとにした対応状況
公益財団法人介護労働安定センターは、介護労働者の雇用管理の改善・能力開発・福祉の向上を支援する公的機関です。「介護労働実態調査結果」は、人員や給与など介護職を取り巻く環境についてまとめられた資料です。
下記の表は、北海道・東北地方における介護職員処遇改善加算の対応状況を示しています。
【北海道・東北地方】介護職員処遇改善加算の算定及び対応状況(令和2年度) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
諸手当の導入・引き上げ | 一時金支給 | 基本給引き上げ | |
全国平均 | 61.6 | 57.6 | 35.3 |
北海道 | 62.7 | 55.0 | 32.6 |
青森県 | 64.2 | 59.1 | 34.3 |
岩手県 | 59.1 | 56.8 | 30.7 |
宮城県 | 58.5 | 55.9 | 34.7 |
秋田県 | 64.9 | 46.8 | 34.0 |
山形県 | 68.0 | 48.0 | 41.3 |
福島県 | 68.2 | 48.2 | 24.5 |
(出典:公益財団法人介護労働安定センター「―令和2年度 介護労働実態調査結果について―」/http://www.kaigo-center.or.jp/report/2021r01_chousa_01.html)
山形県は福島県の68.2%に次いで諸手当の導入・引き上げ率が高く、介護職員処遇改善加算を諸手当に反映させている事業所が多数あります。今後、基本給引き上げに反映されるようになれば、賞与額なども変わってくるでしょう。
北海道・東北地方における、介護職員等特定処遇改善加算の対応状況は、下記の通りです。
【北海道・東北地方】介護職員等特定処遇改善加算の算定及び対応状況(令和2年度) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
職員全体の処遇改善 | 経験・技能のある介護職員の処遇改善 | 介護職員全体の処遇改善 | |
全国平均 | 38.5 | 31.4 | 29.2 |
北海道 | 38.1 | 32.0 | 29.4 |
青森県 | 35.7 | 31.0 | 33.3 |
岩手県 | 41.9 | 33.9 | 22.6 |
宮城県 | 29.3 | 28.0 | 42.7 |
秋田県 | 50.0 | 22.1 | 26.5 |
山形県 | 31.9 | 44.7 | 23.4 |
福島県 | 43.5 | 23.2 | 33.3 |
(出典:公益財団法人介護労働安定センター「―令和2年度 介護労働実態調査結果について―」/http://www.kaigo-center.or.jp/report/2021r01_chousa_01.html)
山形県は介護職員等特定処遇改善加算の多くを、経験・技能のある介護職の処遇改善に充てています。将来的に給与が上がると分かれば、新人職員・中堅職員も希望を持つことができ、介護職員全体の離職率の低下につながると言えます。
介護職経験者が山形県で転職する場合は、介護職員等特定処遇改善加算を取得している施設を選択すると、年収アップを見込めるでしょう。
3. 山形県が実施する介護施策の状況
山形県は介護サービスの充実や基盤強化、地域共生社会の実現を目的とした「やまがた長寿 安心プラン」を策定しています。同計画では、介護職に携わる人材の定着を図る取り組みとして、介護職員処遇改善加算の取得を促進しています。
事業者を対象とした制度説明会の開催、専門家による直接指導が主な内容です。また、介護職の資質向上に係る教育研修の実施、離職防止につながる仕事の相談窓口も設置されています。
(出典:山形県「やまがた長寿安心プラン(山形県老人保健福祉計画(第9次)・山形県介護保険事業支援計画(第8次))」/https://www.pref.yamagata.jp/090002/kenfuku/koreisha/anshinplan.html)
山形県では、介護職に携わる人材が安定して働ける環境作りが、さまざまな角度から進められています。
3-1. 【山形県】介護職員処遇改善加算を取得している傾向にある施設は?
山形県にある介護施設のうち、厚生労働省の「介護給付費等実態統計」において介護職員処遇改善加算の取得状況が80%以上となる施設・サービスを紹介します。
認知症対応型共同生活介護 |
---|
認知症対応型共同生活介護は「グループホーム」と呼ばれる、認知症のある高齢者を対象とした介護サービスです。定員数が少ないことが特徴であり、入居者は共同生活を送りながら自立した生活を目指します。認知症対応型共同生活介護で働く職員は、料理や洗濯など身の回りの世話をはじめ、入浴・食事・排泄介助なども行います。勤務形態は夜勤を含めた4交代制が一般的です。 |
特定施設入居者生活介護 |
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特定施設入居者生活介護は、厚生労働省の指定基準を満たした施設で提供される介護サービスであり、入居者の身体状態に応じて幅広い支援を行います。生活・身体介助全般、機能訓練のサポートなどを行います。看護師や作業療法士など多職種と連携しながら、24時間体制で入居者の生活を支えます。 |
希望する職場が介護職員処遇改善加算を取得しているかを確認したい場合は、施設の公式サイトなどで調べることがおすすめです。
介護職に転職する上で収入面を重視する人は、マイナビ介護職にご相談ください。マイナビ介護職では、月収30万円以上を支給する求人・賞与の支給実績が4か月以上の求人など、高収入を得られる求人を多数取り扱っています。
まとめ
介護職員処遇改善加算の導入により、介護職の給与水準は職種を問わず上昇傾向にあります。山形県における介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算の取得率は、北海道・東北地方でトップクラスとなっており、全国平均よりも高くなっています。
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※当記事は2021年11月現在の情報をもとに作成しています
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