【福井県】介護職員処遇改善加算の取得状況は?介護施策の状況も解説
令和2年10月時点における福井県の高齢化率は31.0%で、時期は異なるものの令和3年9月時点における全国の高齢化率29.1%よりやや高くなっています。福井県の高齢化率は年々上昇しており、人口は減少の一途をたどっていることから、少子高齢化に直面していることがうかがえます。
(出典:総務省統計局「1.高齢者の人口」/https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1291.html)
(出典:福井県「福井県の推計人口」/https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/toukei-jouhou/zinnkou/zinkou02_d/fil/nenpouzentai.pdf)
この記事では、福井県の介護職員処遇改善加算について、また介護職における平均給与の推移を紹介します。介護職員処遇改善加算の取得状況・対応状況、実施している介護施策の状況も解説するため、転職を検討している人はぜひ参考にしてください。
※本文では、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)のデータにも触れておりますが、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)は令和3年3月31日で廃止されており、令和3年3月31日時点で算定している事業所については、令和4年3月31日までの算定です。
そのため、介護職員処遇改善加算(Ⅳ・Ⅴ)のデータは参考値としてご参照ください。
目次
1. 介護職員処遇改善加算とは?
介護職処遇改善加算は「介護職員処遇改善加算」と「介護職員等特定処遇改善加算」に分類されます。ここでは、それぞれの特徴を簡単に解説します。
・介護職員処遇改善加算
介護職員処遇改善加算は、区分ごとに設定された要件を満たした介護事務所で働く介護職員の賃金改善を行うための制度です。要件には「キャリアパス」と「職場環境等」が定められており、要件を満たす数によって加算(Ⅰ)~(Ⅲ)に分類されます。加算率はサービス区分によって異なるものの、加算(Ⅰ)が最も高くなっています。
・介護職員等特定処遇改善加算
令和元年10月から新たに運用が開始された「介護職員等特定処遇改善加算」は、技能や経験のある介護職員の処遇改善を目的として介護報酬に加算して支給する制度です。職場で最低1人以上、月8万円相当の処遇改善を行う、もしくは年収440万円以上にする、というルールが設けられています。
介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算を取得している施設と、取得していない施設では、給与額に差が見られるため、転職をする際は取得状況を確認しましょう。
1-1. 介護職員処遇改善加算における平均給与の推移
ここでは、介護職処遇改善加算における平均給与の推移を全体平均と勤続年数別に分けて紹介します。
下記は、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得している介護事業所における平成31年2月と令和2年2月の介護職員の平均給与を比較した表です。
平成31年2月 | 令和2年2月 | 差額 | |
平均給与 | 300,120円 | 315,850円 | 15,730円 |
基本給 | 179,100円 | 182,260円 | 3,160円 |
手当 | 70,350円 | 78,440円 | 8,090円 |
一時金(賞与など) | 50,660円 | 55,150円 | 4,490円 |
(出典:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)」/https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000689849.pdf)
介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得している介護事業所の平均給与を見ると、すべての項目で、平成31年2月より令和2年2月のほうが高くなっています。手当だけでなく基本給も着実にアップしていることから、賞与などを含む一時金も上昇していると言えます。
下記は、勤続年数別に見た介護職員の平均給与の推移をまとめた表です(※介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得している事業所のデータ)。
平成31年2月 | 令和2年2月 | 差額 | |
全体 平均勤続年数8.1年 |
300,120円 | 315,850円 | 15,730円 |
1年 勤続1年〜1年11か月 |
258,260円 | 283,480円 | 25,220円 |
2年 勤続2年〜2年11か月 |
271,770円 | 287,940円 | 16,170円 |
10年以上 | 333,980円 | 350,820円 | 16,840円 |
(引用:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000689849.pdf/引用日2022/3/2)
勤続年数別の違いを見ると、勤続年数1年目の差額が最も高くなっています。ただし、勤続年数1年目は入社時期によって賞与の支給額が異なることから、差額が大きくなっているだけで、特別優遇されているわけではありません。
また、勤続年数別に平均給与を見ると、10年以上のベテラン職員が新人職員に次いで増加額が多い結果となっています。介護の現場におけるスキルの高さを重視し、事業を牽引する人材の確保に力を入れている施設が多いことがうかがえます。
2. 福井県における介護職員処遇改善加算の取得状況
介護職員処遇改善加算の取得率を全国的に見ると、90%を超えている都道府県がほとんどです。一方で、介護職員等特定処遇改善加算は、運用開始から約2年しか経過していないことから、取得率は全国的に60%台にとどまっています。
ここからは、福井県における「介護職員処遇改善加算」と「介護職員等特定処遇改善加算」の取得状況と対応状況を紹介します。
2-1. 【厚生労働省】介護給付費等実態統計をもとにした取得状況
下記は、東京都福祉保健局の「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」をもとに、介護職員処遇改善加算の取得状況をまとめた表です。
【北陸・甲信越地方】介護職員処遇改善加算の取得状況(令和3年1月サービス提供分) 単位(%) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) | 加算(Ⅲ) | 加算(Ⅳ) | 加算(Ⅴ) | 合計 | |
全国平均 | 80.0 | 7.1 | 5.3 | 0.2 | 0.3 | 92.9 |
新潟県 | 82.0 | 7.2 | 7.1 | 0.2 | 0.1 | 96.5 |
富山県 | 86.7 | 3.5 | 4.7 | 0.0 | 0.1 | 95.0 |
石川県 | 88.9 | 3.5 | 2.0 | 0.2 | 0.1 | 94.6 |
福井県 | 81.0 | 6.6 | 4.4 | 0.1 | 0.9 | 92.9 |
山梨県 | 78.8 | 6.8 | 4.7 | 0.6 | 0.0 | 91.0 |
長野県 | 81.4 | 6.5 | 4.3 | 0.1 | 0.3 | 92.6 |
(引用:東京都福祉保健局「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」/https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/shogu/R3_shoguu.files/jirei_torikumi.pdf/引用日2022/3/2)
※加算(Ⅳ・Ⅴ)については、令和3年3月末時点で同加算を算定している事業者について、1年の経過措置を設けた上で、令和2年度で廃止されています。
福井県における介護職員処遇改善加算の取得率は全国平均と同水準で、甲信越地方の山梨県、長野県と比較しても決して低くありません。しかし、加算(Ⅰ)の取得率は近隣県より若干低いため、福井県は今後も介護職員処遇改善を進められる余地があると言えます。
下記は、令和3年1月時点における全国平均および北陸・甲信越地方の「介護職員等特定処遇改善加算」の取得状況をまとめた表です。
【北陸・甲信越地方】介護職員等特定処遇改善加算の取得状況(令和3年1月サービス提供分) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) | 合計 | |
全国平均 | 32.0 | 34.3 | 66.4 |
新潟県 | 49.5 | 23.7 | 73.1 |
富山県 | 46.5 | 29.8 | 76.3 |
石川県 | 50.4 | 30.3 | 80.7 |
福井県 | 46.2 | 25.9 | 72.1 |
山梨県 | 28.2 | 37.8 | 66.0 |
長野県 | 41.0 | 28.5 | 69.5 |
(引用:東京都福祉保健局「介護職員処遇改善加算等取得促進支援事業に係る取組事例集」/https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/shogu/R3_shoguu.files/jirei_torikumi.pdf/引用日2022/3/2)
福井県の介護職員等特定処遇改善加算の取得率は、全国平均の66.4%を大きく上回っています。しかし、石川県・富山県など介護職需要が高い都道府県と比較すると、低い傾向です。
将来的には近隣県の影響を受けて、福井県の介護職員等特定処遇改善加算の取得率は、上昇する可能性があります。
2-2. 【公益財団法人介護労働安定センター】介護労働実態調査結果をもとにした対応状況
公益財団法人介護労働安定センターは、介護に携わる人の雇用管理や能力開発、福祉の向上を支援する機関です。
下記は、公益財団法人介護労働安定センターの「介護労働実態調査結果」をもとに、北陸・甲信越地方における介護職員処遇改善加算の対応状況をまとめた表です。
【北陸・甲信越地方】介護職員処遇改善加算の算定及び対応状況(令和2年度) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
諸手当の導入・引き上げ | 一時金支給 | 基本給引き上げ | |
全国平均 | 61.6 | 57.6 | 35.3 |
新潟県 | 61.1 | 51.1 | 38.2 |
富山県 | 61.6 | 54.7 | 41.9 |
石川県 | 60.9 | 51.7 | 31.0 |
福井県 | 62.7 | 52.2 | 34.3 |
山梨県 | 48.4 | 54.8 | 25.8 |
長野県 | 61.4 | 56.7 | 44.1 |
(出典:公益財団法人介護労働安定センター「―令和2年度 介護労働実態調査結果について―」/http://www.kaigo-center.or.jp/report/2021r01_chousa_01.html)
福井県の基本給引き上げは、全国平均を1%下回っており、甲信越の長野県と比較すると9.8%も低い状況です。基本給は、残業代や賞与などのベースとなる金額であるため、福井県における介護職員の平均給与のさらなる上昇には、基本給引き上げが不可欠と言えるでしょう。
下記は、北陸・甲信越地方の介護職員等特定処遇改善加算の算定、および対応状況をまとめた表です。
【北陸・甲信越地方】介護職員等特定処遇改善加算の算定及び対応状況(令和2年度) 単位(%) | |||
---|---|---|---|
職員全体の処遇改善 | 経験・技能のある介護職員の処遇改善 | 介護職員全体の処遇改善 | |
全国平均 | 38.5 | 31.4 | 29.2 |
新潟県 | 46.3 | 17.5 | 36.3 |
富山県 | 40.3 | 30.6 | 29.0 |
石川県 | 45.9 | 24.3 | 27.0 |
福井県 | 47.9 | 29.2 | 22.9 |
山梨県 | 40.9 | 40.9 | 18.2 |
長野県 | 41.9 | 38.7 | 18.3 |
(出典:公益財団法人介護労働安定センター「―令和2年度 介護労働実態調査結果について―」/http://www.kaigo-center.or.jp/report/2021r01_chousa_01.html)
福井県では「職員全体の処遇改善」に力を入れる事業所が多く、全国平均の38.5%を9.4ポイント上回っています。しかし、「経験・技能のある介護職員の処遇改善」「介護職員全体の処遇改善」は、どちらも全国平均より低い傾向です。
以上のことから、福井県では職員全体の処遇改善を図り、介護職に携わる人材の確保を進めていると言えます。
3. 福井県が実施する介護施策の状況
福井県は、地域包括ケアを含む介護施策として5つの重点目標からなる高齢者福祉計画を掲げ、重点目標Ⅳにおいて「社会を支える介護人材の確保・育成」を定めています。
福井県では介護職に携わる人材を確保・育成するために、介護業界の魅力を発信したり、労働環境の改善に努めたりしている最中です。他には、介護ロボット・ICTを導入する事業所の割合を引き上げる目標も掲げており、介護職員の作業負担を軽減させる取り組みが進められています。
(出典:福井県「福井県高齢者福祉計画 福井県介護保険事業支援計画」/https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kourei/dai8ki-kaigokeikaku_d/fil/dai8ki-kaigokeikaku.pdf)
3-1. 【福井県】介護職員処遇改善加算を取得している傾向にある施設は?
ここでは、厚生労働省の「介護給付費等実態統計」をもとに、加算の合計が80%以上となっている福井県の施設やサービスを紹介します。
訪問介護 |
---|
訪問介護は利用者の自宅に直接訪問し、食事・入浴・排せつなどの介助や、掃除・洗濯・買い物などの日常生活を支援するサービスです。利用者の容態によっては、通院の送迎などをサポートすることもあります。 |
介護老人福祉施設 |
---|
介護老人福祉施設は、地方自治体が運営する公的施設で「特別養護老人ホーム」と呼ばれることもあります。入居者の在宅復帰を支援する施設で、日常生活の介助・支援だけでなく、機能訓練なども実施します。 |
気になった施設やサービスで、介護職員処遇改善加算の取得が行われているのかについては、各施設の公式サイトでチェックするとよいでしょう。また、介護職の職場選びで給与を重視したい、働く環境を重視したいなど、さまざまな要望がある場合には、ぜひ「マイナビ介護職」にご相談ください。求職者様の希望条件に沿って、最適な求人をご提案させていただきます。
まとめ
介護職員処遇改善加算は、介護職員の待遇改善をするために国を挙げて取り組んでいる施策です。「介護職員処遇改善加算」と「介護職員等特定処遇改善加算」に分類され、新人からベテランまで、すべての介護職員を対象としていることが特徴です。
「マイナビ介護職」は、介護職に特化した転職エージェントです。福利厚生などの働く環境が整った施設だけでなく、高収入を得られる施設の求人も取り扱っております。求職者様の転職状況のヒアリングも行っておりますので、相談しながら転職を進めたい人は、ぜひマイナビ介護職にお問い合わせください。
※当記事は2021年11月現在の情報をもとに作成しています
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